■Hans Kelsen, General theory of law and stateまとめ5

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Hans Kelsen, General theory of law and stateの私的備忘的まとめです。2007年の第2刷版を用いています。

Part1 THE LAW

■NOMOSTATICS

■Y 法的権利

A.権利及び義務(pp.75−76)
法的権利:@物に対する権利(jus in rem)、A他者人に要求する権利(jus in personam)

権利が法的権利なら、それは他者が法的に義務付けられる行為への権利であり、法的権利は、他者の法的義務を想定する。一方義務は、いつも他者への自己の行為に関する義務である。
e.g.金銭貸借関係、自己物の利用、処分を他者が干渉しないように義務付けられる。

B.許可(p.77)
何かをする、しないという権利は、法がそれを許しているつまり法は命令的、許可的なものであるという主張は不正確である。法はある者にとって許可的であり(法秩序は権利を付与する)、別の者にとっては命令的である(義務を賦課される)。

C.狭義の意味における法的権利
a.義務にかかる相関関係以上の権利(pp.77−78)
すべての義務が、他者への法的権利(狭義)を必要とするのではない。権利の定義如何?

b.法と権利(pp.78−79)
英語圏:「法」と「権利」の2元主義⇔ドイツ語、フランス語圏。但し例えばドイツ語圏でも、客観的レヒト、主観的レヒトというような2元主義が見られる。
→法より権利が先にあるという考え(歴史学派)につながる(H.Dernburg等)。

c.認識された意思または保護された利益としての権利(pp.79−81)
法より権利が先になるという考えは、この考えの主張者が権利の存在を仮定する場合にのみ論理的に可能となる価値判断(政治的イデオロギー)であるが、法の存在以前に権利は存在せず、法秩序の保障なき権利は法的権利ではなく、権利は法秩序の保障により初めて法的権利になる。これは法が権利に先行することを意味する。

法的権利:法により保護された利益、法によって承認された意思として考える立場は正確ではない。∵ここで言う利益はある「意思」を伴うが、権利を行使していない時もあるし、権利を有していることを知らずしても法的権利の存在は可能である。

d.制裁を発動させる法定可能性としての法的権利(pp.81−83)
権利は力(right is might)の理由、客観的法(人間行動を規制する規範体系)を主観的法(個人の権利)と考える理由は何か。

契約締結当事者Aは、BがAに対し行動する法的義務を有するという場合にのみ、Bに対し権利を有する。これは法秩序が、Aに対しBによる契約不履行に基づく(訴訟の提起を通じた)制裁の発動を創造しているからである。
→制裁を定める法規範の適用をもたらす法的可能性が当事者に開かれている。この意味で当該規範は彼の法であり、それは彼の権利を意味する。

法的権利は、制裁が発動されるであろう意思を表明するに違いない個人に対しての関係における法的規範であり、潜在的原告に対する関係における法的規範である。

e.権利と代理(pp.83−84)
権利主体=潜在的原告:すべての場合に当てはまらない。e.g.代理や後見人制度。

後見人が本人のために「意思」を表示するとは、後見人による意思の表示が、表示が本人によってなされた場合と同じ効果を有している(本人による意思表示と考える擬制)、ということを意味する。

後見人が訴訟の提起により求めるのが本人の権利であるならば、権利の主体は潜在的原告ではなく、特殊法的に決定された潜在的原告に対する関係にある個人になる。つまり権利の主体は潜在的個人と、この個人を法的に代理する個人ということになる。

D.特殊な法技術としての権利(pp.84−85)
民事法的技術:制裁の執行をある権利主体(原告等)による訴訟にゆだねる。
→法規範の適用は、ある個人ばかりでなく法共同体の他の大多数の構成員にとっても関心事である。∵法秩序内の規範すべてが従われ、適用されるということは、法共同体の関心事である。

刑事法的技術:刑事手続を発動させる権限のある、また通常そうするよう義務付けられているのは共同体の機関。

民事、刑事は当事者間の紛争(原告と被告、公的機関と被告人の間の紛争)という共通点はある。

E.絶対的権利と相対的権利(pp.85−86)
絶対的権利(義務)、相対的権利(義務):前者は無限定な数の個人に対する義務を必要とする権利(e.g.所有権)であり、後者はある特定の個人にのみに対応する権利(e.g.債権者の債務者に対する権利)である。絶対的権利には絶対的義務、相対的権利には相対的義務が対応関係にある。

jus in personam:jus in rem=相対的権利:絶対的権利とするのはミスリーディング。∵jus in remは厳密に言えば物についての権利ではなく、人に対する権利。ある客体に関して、あるやり方で無限定な数の人に行動させるという権利。

F.法創造への参加としての権利(p.87)
司法による判決:個別規範←原告は、個別規範の創造に付き重要な役目を果たす。

権利を有するということは、義務違反者に対し制裁が向けられることを意図した個別規範の創造への参加という法的権限を有することである。そしてこの個別規範も法の正確を有する。

F.市民的権利及び政治的権利(pp.87−90)
法的権利の特質を、法創造への参加とすると、私法上の権利(praivate rights)と公法上の権利、政治的権利の間に根本的な差異はない。政治的権利は、統治機構への参加、国会意思への参加を市民に開く可能性を意味し、このことは、法秩序創造への参加、特に一般規範創造への参加を意味する。

政治的権利:民主性の特質。直接民主制では、国民議会への参加権、間接民主制では、選挙権を意味する。

*権利という同一のテクニカルタームの下に、私法上の権利と共に政治的権利を包含することは可能であるのか。

政治的権利が、私法上の権利と同じように「権利」であるならば、政治的権利に対応する義務が存在するに違いない。市民の選挙権に対応するのは、投票、選挙(の計算等)を取り扱う公的機関の義務である。この義務違反の場合は、私法上の権利を侵害された者が義務違反者に対し制裁の影響を及ぼすのと同様に、制裁の影響を公的機関に及ぼすことができる。そして公的機関の義務違反の場合それを審査する特別の裁判所もある。

政治的権利も法創造を有する。但し政治的権利は、一般規範を創造する国意思の機関の選出に加わるという点で、法創造は間接的であるのに対し、私法上の権利は、法規範(司法判決)という個別規範の創造に直接的にかかわる。この点では、政治的権利と私法上の権利の間に本質的差異はない。

法的権利は、特定の法制度(私法上の権利:資本主義制度、政治的権利:民主制)の単なる特殊要素である。