■公務員試験過去問分析(不法行為)

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■不法行為(地方公務員試験上級〔2003年〕)

民法に定める不法行為に関する記述として、妥当なものはどれか。

1) 民法第709条に該当する不法行為についての裁判では、加害者が、自己に故意または過失のなかったことを立証しない限り、加害者は、損害賠償義務を免れることはできない。

2) 債務不履行責任には3年の短期消滅時効が定められているのに対し、不法行為責任における消滅時効は10年とされている。

3) 他人の不法行為により焼失した家屋について、火災保険金の支払いを受けた場合には、その限度で不法行為者の責任が軽減される。

4) 精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態に陥って、他人に損害を与えた者は不法行為責任を負わないが、故意または過失により一時的にその状態を招いて、他人に損害を与えたときは責任を負う。

5) 民法は名誉の侵害も不法行為となることを示しており、最高裁判所は、法人に対する名誉毀損も存在するが、法人には精神的苦痛がないことから、慰謝料は認められず、謝罪広告のみが認められると判示した。

■解説

1) 誤り。契約責任と異なり不法行為では、故意過失の主張立証責任は、権利侵害や因果関係と同様被害者が負担する。藤岡−磯村−浦河−松本『民法W』第3版補訂(2009年、有斐閣)234頁。

2) 誤り。債務不履行責任には一般債権の消滅時効10年が定められているのに対し(167条1項)、不法行為責任は3年の短期消滅時効が定められている(724条)。

3) 誤り。損益相殺が問題となる。火災保険の場合被害者が保険金を受け取ると、その限度で保険会社は被害者の損害賠償請求権を代位取得する(保険法25条、旧商法662条)にすぎず、不法行為者の責任が減るわけではない。前掲藤岡他373−374頁。

4) 正しい。713条である。

5) 誤り。法人の名誉毀損の場合、金銭評価の可能な無形の損害の発生を法人が受けたと評価できる場合、法人はこれにつき賠償を求める得るというのが判例である(最判昭和39年1月28日)。前掲藤岡他352頁。

■不法行為(国税専門官試験〔2009年〕)

不法行為に関するア)−エ)の記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみをすべて挙げているのはどれか。

ア) X社の代表者Aは、Yの過失による交通事故で負傷した。X社がいわゆる個人会社であり、AにX社の機関としての代替性がなく、AとX社が経済的に一体の関係にあるような場合、X社はYに対して、Aの負傷のため逸失した利益について損害賠償を請求することができる。

イ) Aは、Yの過失による交通事故で死亡した。Aが即死の場合でも、Aは損害賠償請求権を取得することになるから、Aの相続人であるXは、Aの逸失利益についての損害賠償請求権を相続することができる。

ウ) AはYの過失による交通事故で死亡した。慰謝料請求権は本人の主観的な感情が根拠となっている一身専属的な権利であるから、Aが生前に請求の意思を表明しない場合、Aの相続人であるXは、慰謝料請求権を相続することができない。

エ) Xは、Z社の車を運転していたZ社の従業員Yの過失による交通事故で負傷した。Yの運転が、客観的にはYの職務行為の範囲内に属するものと認められる場合でも、Yが私用のためにZ社の車を使っていたときは、XはZ社に対して損害賠償を請求することができない。

1) ア)、イ)

2) ア)、ウ)

3) ア)、エ)

4) イ)、エ)

5) ウ)、エ)

■解説

ア) 正しい。最判昭和43年11月15日。前掲藤岡他358頁。

イ) 正しい。

ウ) 誤り。かつての判例はこのような立場であったが(大判昭和2年5月30日)、現在では財産損害の場合と同様、財産以外の損害が発生した場合は、損害の発生と同時に慰謝料請求権を取得し行使でき、本人死亡の場合相続人は当然慰謝料請求権を相続する当然相続説)と解されている。前掲藤岡他354頁以下。

エ) 誤り。この場合も行為の外形からみて、あたかも被用者の職務の範囲内に属するものと見られるのであれば、使用者責任(715条)を肯定するのが判例である(外形理論。最判昭和39年2月4日)。前掲藤岡他311頁。

よって正解は1)となろう。

■賃貸借契約(国家公務員2種試験〔2007年〕)

Aの所有する土地がBに賃貸され、さらにCに転貸されて、実際にCがその土地を使用している事例に関するア)−オ)の記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみをすべて挙げているのはどれか。

ア) Aに無断で転貸借契約がなされた場合には、Cの土地の使用によりAB間の信頼関係が破壊されているか否かを問うことなく、Aは賃貸借契約を解除することができる。

イ) Aの承諾を得て転貸借契約がされ、その後、Cが土地の所有権を取得した結果賃貸人の地位を有するに至った場合であっても、転貸借関係は、BC間でこれを消滅させる合意がない限り当然には消滅しない。

ウ) Aの承諾を得て転貸借契約がされ、その後、Bが賃料の支払いを遅滞したためAが賃貸借契約を解除しようとする場合には、特段の事情がない限り、Aは解除前にCに対して当該遅延延滞料を支払う機会を与えなければならない。

エ) Aの承諾を得て転貸借契約がされ、その後、Bの債務不履行を理由にAが賃貸借契約を解除した場合には、転貸借契約は、原則としてAがCに対して土地の返還を請求した時に、BのC転貸人としての債務の履行不能により終了する。

オ) Aに無断で転貸借契約がされた場合には、Aは賃貸借契約を解除しなくても、Cに対して所有権に基づき土地の明渡を請求できる。

1) ア)、イ)、ウ)

2) ア)、ウ)、オ)

3) ア)、エ)、オ)

4) イ)、ウ)、エ)

5) イ)、エ)、オ)

■解説

ア) 誤り。賃借権の無断譲渡や無断転貸借の場合であっても、賃貸人に対する背信的行為と認めるに足らないような特別の事情がある場合、賃貸人の解除権は制限されるというのが判例である(信頼関係法理。最判昭和28年9月25日)。前掲藤岡他129頁。

イ) 正しい。最判昭和35年6月23日。転借人CのAに対する義務は混同により消滅するが、転貸借関係は、BC間で消滅させる特別の合意がない限り、当然には消滅しないというのが判例である。。

ウ) 誤り。AはCに対して義務を負わない。この場合Aは、Bとの賃貸借契約を解除すれば足りる。

エ) 正しい。最判平成9年2月25日。前掲藤岡他129頁。

オ) 正しい。最判昭和26年5月31日である。

正解は5)となろう。