■公務員試験過去問分析(債権総論3、詐害行為取消権)

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■詐害行為取消権(国家公務員1種試験〔2004年〕)

詐害行為取消権に関する次の記述のうち、妥当のはどれか。

1) 離婚に伴う財産分与は、たとえそれが不相当に過大であり財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りる事情があったとしても、家族法上の行為であるので、詐害行為取消権の対象とはならないとするのが判例である。

2) 詐害行為取消権は、債権者代位権と同様に、その行使は裁判所に請求しなければならない。

3) 債務者が自己の所有する不動産を相当価格で売却することは、詐害行為にはあたらないことから、債権者は詐害行為取消権を行使する余地はないというのが判例である。

4) 詐害行為取消権の効果は、逸出財産が債務者の責任財産に戻ることであるから、金銭債権を有する取消債権者が詐害行為取消権を行使した場合であっても、受益者に対して直接自己に引き渡すように請求することはできないというのが判例である。

5) 特定の不動産の引渡を目的とする請求権を有する者が債務者による当該不動産の処分行為を詐害行為として取消した場合であっても、直接自己に所有権移転登記を求めることはできないとするのが判例である。

■解説

1) 誤り。財産権を目的としない法律行為(家族法上の行為等)は、詐害行為取消権の対象にはならない(424条2項)が、離婚に伴う財産分与も同様に考えるべきか。この点判例は、財産分与が「不相当に過大であり財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りる事情がない限り」、詐害行為取消権の対象にはならないとした(最判昭和58年12月19日)。野村−栗田−池田−永田『民法V』第2版補訂(1999年、有斐閣)104頁。

2) 誤り。詐害行為取消権の行使は裁判所に請求しなければならないが(424条1項本文)、債権者代位権の行使は、裁判外での行使も可能である(423条2項)。前掲野村他111頁。

3) 誤り。不動産と異なり、金銭となると消費されやすく隠されやすいので、相当対価を得ているとしても不動産の売却は詐害行為になるとするのが判例である(大判明治44年10月3日)。前掲野村他108頁。

4) 誤り。取消債権者自身への金銭の引渡を請求することも可能である(大判大正10年6月18日)。前掲野村他114頁。

5) 正しい。最判昭和53年10月5日である。取消債権者は、債務者名義の登記の回復を請求できるにとどまる。前掲野村他114−115頁。

■詐害行為取消権(国税専門官試験〔2007年〕)

詐害行為取消権に関するア)−エ)の記述のうち、判例にてらし、妥当なものをすべてあげているのはどれか。

ア) 詐害行為取消権の対象となる行為は財産権を目的とする法律行為でなければならず、婚姻や養子縁組に係る家族法上の行為はその対象とならないが、相続人による相続の承認、放棄や遺産分割協議は相続財産の確定する財産権を目的とする法律行為であるため、詐害行為取消権の対象になる。

イ) 詐害行為取消権の被保全債権は金銭債権であることが必要であるため、被保全債権の対象が特定物の引渡請求権であり、当該債権の債務者がその特定物を処分することによって無資力となった場合であっても、債権者は債務者の当該処分行為を詐害行為として取消すことはできない。

ウ) 詐害行為取消権の目的物が動産または金銭である場合、取消権者は、その動産または金銭を直接自己に引き渡すべきことを請求することができるが、詐害行為の目的物が不動産である場合、取消債権者は、直接自己に移転登記を請求することはできない。

エ) 被保全債権の債務者から当該債権の目的物である不動産の贈与を受けた第三者(受益者)が、当該贈与が詐害行為にあたることについて善意である場合において、受益者が当該詐害行為について悪意である者(転得者)に当該不動産を売却したときは、取消債権者は受益者に対する当該不動産の価格の賠償請求、または転得者に対する当該不動産それ自体の返還請求のいずれかを任意に選択することができる。

1) ア) 
2) ウ)
3) ア)、イ)
4) イ)、エ)
5) ウ)、エ)

■解説

ア) 誤り。前半部分にいう、家族法上の行為が債権者取消権の対象にならないという点は正しいが(424条2項)、相続放棄も同様に債権者取消権の対象にならない(最判昭和49年9月20日)。前掲山田他104−105頁。

イ) 誤り。このような場合、特定物引渡請求権であっても損害賠償請求権に変わるのであり。これを債務者の一般財産により担保しなければならない点は金銭債権と変わらないとして、詐害行為取消権を認めるのが判例である(最大判昭和36年7月19日)。内田貴『民法V』初版(1996年、東大出版会)276頁。

ウ) 正しい。大判大正10年6月18日、最判昭和53年10月5日である。前掲野村他114−115頁。

エ) 誤り。善意の受益者には詐害行為取消権を行使できない(424条1項但書)が、この場合、悪意の転得者に対してのみ詐害行為取消権の行使を認めるのが判例である(最判昭和49年12月12日)。前掲内田285頁。

正解は2)である。