■公務員試験過去問分析(刑法9、共犯2)

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■共犯の錯誤(地方上級試験〔1997年〕)

共犯の錯誤に関する次の記述のうち、判例にてらし、妥当なのはどれか。

1) AがBに対しXの家に窃盗に入るように教唆したところ、Bは何もしかなかった。この場合には、Aに窃盗の教唆犯が成立する。

2) AがBに対しXの家に窃盗に入るように教唆したところ、Bは別人のY宅をX宅と勘違いして窃盗に入った。この場合には、Aに窃盗の教唆犯が成立する。

3) AがBに対しXの家に窃盗に入るように教唆したところ、BはX宅に侵入したが、XがBに気付いて騒いだため、懐にあったカッターナイフでXを脅して金品を強取した。この場合には、Aに強盗の教唆犯が成立する。

4) AがBに対しXの家に窃盗に入るように教唆したところ、BはX宅に侵入しようとしたが失敗し、一度は窃盗をあきらめたものの、新たにY宅での窃盗を決意し、Y宅で金品を窃取した。この場合、Aの教唆行為とBの実行行為との間に因果関係が認められなくても、Aに窃盗の教唆犯が成立する。

5) AがBに対しXの家に窃盗に入るように教唆したところ、BはX宅に放火した。この場合には、Aに現住建造物放火の教唆犯が成立する。

■解説

1) 誤り。実行従属性の問題につき、通説、判例は共犯従属性説を採用する。よって正犯者Bが実行に着手していない以上、Aを教唆犯として処罰できない。大塚仁『刑法概説(総論)』第3版(1997年、有斐閣)268頁以下。

2) 正しい。教唆者と被教唆者との食い違いが同一構成要件の範囲内にある限り、教唆犯の故意は否定されない(大判大正9年3月16日)。前掲大塚322頁。

3) 誤り。前肢と異なり、「食い違い」が異なる構成要件にわたる場合、教唆犯の故意は否定されるが、窃盗と強盗のように構成要件が同質的で重なり合うときは、重なり合う限度で「軽い罪」についての教唆犯が認められる。つまりAには窃盗の教唆犯が成立する(最判昭和25年7月11日)。前掲大塚323頁。

4) 誤り。このように、教唆行為と実行行為との間に因果関係がない場合、教唆犯は認められない(最判昭和25年7月11日)。前掲大塚300頁。

5) 誤り。3)に言うように、窃盗と放火というような構成要件を異にする食い違いの場合、教唆犯の故意は否定される。つまり放火について教唆犯は成立しない。

■共犯と身分(国家1種公務員試験〔2011年〕)

共犯と身分に関する次の記述のうち、妥当なのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。

1) 一定の身分を有することによって初めて犯罪が成立しうる場合の身分を構成的(真正)身分といい、構成的(真正)身分を要素とする犯罪を構成的(真正)身分犯という。偽証罪における「法律により宣誓した証人」、背任罪における「他人のためにその事務を処理するもの」は、この構成的(真正)身分に該当する。

2) 一定の身分を有することによって刑が加重または軽減される場合の身分を加減的(不真正)身分といい、加減的(不真正)身分を要素とする犯罪を加減的(不真正)身分犯という。虚偽公文書作成罪における「公務員」、業務上堕胎罪における「医師、助産師、薬剤師又は医薬品販売業者」は、この加減的(不真正)身分犯に該当する。

3) 女性が男性と共謀して、強姦の犯罪行為に加功した場合、女性は強姦罪の実行行為をなしえないから、当該女性には強姦罪の正犯が成立することはなく、強姦罪の教唆犯または従犯が成立するにとどまる。

4) 刑法第65条第2項には、「身分のない者には通常の刑を科する」と規定しているが、「身分のある者には身分犯の刑を科する」とは規定していないので、賭博常習者である甲が、被常習者の賭博行為を幇助した場合、同項が適用されることはなく、甲は単純賭博罪の従犯となる。

5) 刑法第65条第2項にいう「身分」とは、一定の継続性のあるものをいい、麻薬輸入罪における「営利の目的」は一時的・主観的事情にすぎないから、同罪に「営利の目的」の有無により異なる法定刑が定められていることは、同項にいう「身分によって特に刑の軽重があるとき」には該当しない。

■解説

1) 正しい。真正身分犯の定義については、前掲大塚135頁。

2) 誤り。業務上堕胎罪は不真正身分犯であるが(自己堕胎罪〔212条〕に注意)、虚偽公文書作成罪は真正身分犯である。

3) 誤り。身分のない者でも、身分者を通じて強姦罪の保護法益を侵害することは可能であるから、女性が男性と共謀し犯罪行為に加功すれば、65条1項により強姦罪の共同正犯が成立するというのが判例である(最決昭和40年3月30日)。前掲大塚316頁注8。

4) 誤り。この場合、65条2項の適用を認め「通常の刑」(単独犯であった場合に、その者に科せられるべき法定刑)を科すのが判例である。つまり甲は常習賭博罪の従犯となる(大連判大正3年3月10日)。前掲大塚318−320頁。

5) 誤り。このように解する説もあるが、判例は「営利の目的」を65条2項の「身分」と解している(最判昭和42年3月7日)。前掲大塚312頁注2。