■公務員試験過去問分析(刑法8、共犯1)

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■共犯(地方上級試験〔1996年〕)

共犯に関する次の記述のうち、判例にてらし、妥当なのはどれか。

1) 甲は乙に、丙を殺害したいので毒薬を入手してほしいと頼み、乙は毒薬を入手し甲に手渡ししたが、結局甲は殺人の実行行為には出なかった。この場合には、乙に殺人予備罪の共同正犯が成立する。

2) 甲は乙に、丙を暴行するように教唆したところ、乙は丙に重い傷害を負わせてしまい、その結果、丙は死亡した。この場合には、甲は丙の死亡結果について責任を負わないから、甲に傷害致死罪の教唆犯は成立しない。

3) 数人で犯罪の遂行を共謀し、共謀者の一部が共謀にかかる犯罪の実行に出た場合であっても、直接実行に携わらない共謀者については、犯罪の共同の実行がないから、共同正犯は成立しない。

4) 共同正犯者の一人が、自己の意思により犯罪を中止した場合には、他の者の犯行を阻止せず、犯罪が既遂に達したときであっても、中止犯が成立し、刑の減軽または免除の対象となる。

5) 甲は、日頃の言動に畏怖し意思を抑圧されている刑事未成年の乙に対し窃盗を命じ、乙はこれに従って窃盗を行った。この場合には、乙に是非善悪の判断能力が認められる限り、甲は窃盗の教唆犯となり、間接正犯は成立しない。

■解説

1) 正しい。乙には殺人予備罪の幇助が成立するとも考えられるが、判例はこの事案につき殺人予備罪の共同正犯が成立するとした(最決昭和37年11月8日。この第1審は予備の幇助とした)。大塚仁『刑法概説(総論)』第3版(1997年、有斐閣)292−293頁。

2) 誤り。過失犯の共犯の可否と関係して、結果的加重犯の共犯の可否が問題となるが、判例はこれを肯定する(最判昭和23年5月8日)。前掲大塚283−284頁。

3) 誤り。この場合共謀者にも共同正犯の責を負わせるのが判例である(共謀共同正犯論)。西田典之『刑法総論』初版(2006年、弘文堂)323頁。

4) 誤り。この場合犯罪を自己の意思で中止したと言えども、この者が他の行為者の犯罪の遂行を阻止せず放任し、他の行為者により犯罪が既遂になった場合、中止犯の成立を認めることはできないというのが判例である(最判昭和24年12月17日)。前掲西田349頁。

5) 誤り。共犯の要素従属性についての制限従属性説を前提とすると、この場合乙の行為には構成要件該当性と違法性が認められるので、甲は共犯(教唆犯)ということになるが(前掲西田361、370頁)、判例は畏怖抑圧といった強制的要素の存在を理由に、甲を窃盗の間接正犯とした(最決昭和58年9月21日)。前掲西田308頁。

■教唆犯(労働基準監督官試験〔1998年〕)

教唆犯に関する次の記述のうち、判例にてらし、妥当なのはどれか。

1) 教唆犯の成立には、漠然と特定しない犯罪を惹起させるだけの行為では足りず、一定の犯罪を実行させる決意を相手方に生じさせるものでなければならないため、その方法は指揮や支持の形式であることが必要であり、誘導のような方法では教唆犯は成立しない。

2) 教唆犯の成立には、他人の犯意を決定させることが必要であるため、すでに犯意の生じた人間に働きかけることにより単に犯意を強めたようにすぎないような場合は従犯となり教唆犯は成立しない。

3) 教唆犯は犯罪の実行行為を教唆することが必要であること、および教唆犯を教唆するする者について明文で教唆犯であると規定していることから、教唆犯を教唆する者に対する教唆については教唆犯は成立しない。

4) 数名で教唆についての共謀を行った後、その一部の者が現に教唆を行い、被教唆者に犯罪を実行させたような場合には、実際に教唆を行わなかった者については教唆の実行行為がないため教唆犯は成立しない。

5) 教唆者が被教唆者に対して特定の者の住居に侵入して窃盗を実行することを教唆したところ、被教唆者が別の者の住居に侵入して強盗を実行した場合に、当該教唆者については住居侵入、窃盗の範囲内であっても教唆犯は成立しない。

■解説

1) 誤り。教唆の方法に別段制限はなく、誘導でも構わない(最判昭和26年12月6日)。これ以外の記述は正しい。前掲大塚297頁。

2) 誤り。大判大正6年5月25日。前掲大塚309−310頁。

3) 誤り。教唆犯を教唆すること即ち間接教唆については明文の処罰規定があるが(61条2項)、間接教唆者をさらに教唆する場合(再間接教唆)はどうか。この場合にも61条2項が適用されるというのが判例である(大判大正11年3月1日)。前掲大塚300−301頁。

4) 誤り。共謀共同教唆犯の事例である。判例は、このような場合共謀共同正犯の場合と同じく、現に教唆行為を行わなかった他の共謀者も等しく教唆犯とする(大判明治41年5月18日)。前掲大塚総論298頁。

5) 誤り。教唆犯の錯誤の事例である。この場合窃盗と強盗で構成要件が異なるものの、この両者に同質性が認められるので、軽い窃盗の範囲では教唆犯が成立するというのが判例である(最判昭和25年7月11日。住居侵入については侵入した住居が異なるものの同一構成要件内の錯誤なので、故意が認められる)。前掲大塚総論322−323頁。