■公務員試験過去問分析(刑法5、違法性3)

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■緊急避難(地方上級試験〔2003年〕)

緊急避難の法的性質を巡って、違法性阻却事由説と責任阻却事由説が対立している。次のうち、責任阻却事由説の理由または違法性阻却事由説に対する批判として、妥当な組み合わせはどれか。

ア) 刑法は他人のための緊急避難を認めている。

イ) 緊急状態の下では他の行為の期待可能性がない。

ウ) 法は法益の権衡を要求している。

エ) 緊急避難に対する正当防衛を認めるべきである。

オ) 緊急行為には違法性が認められない。

1) ア)、イ)
2) イ)、ウ)
3) イ)、エ)
4) ウ)、エ)
5) エ)、オ)

■解説

ア) 誤り。責任阻却事由説に対する批判である。この説は、緊急避難の性質を緊急状況下における期待可能性の欠如という事で説明するが、第三者に対する緊急避難の場合、第三者自体は心理的に余裕があるのだから、緊急避難を認める合理性がないという批判が当てはまる。西田典之『刑法総論』初版(2006年、弘文堂)132頁。

イ) 正しい。責任阻却事由説の理由である。前掲西田132頁。

ウ) 誤り。違法性阻却事由説の理由である。前掲西田130頁。

エ) 正しい。違法性阻却事由説への批判である。緊急避難に対する正当防衛が認められるべき、ということは緊急避難を違法行為と考えているからである。前掲西田131頁参照。

オ) 誤り。違法性阻却事由説の理由である。

よって3)のイ)、エ)が正解となろう。

■緊急避難(地方上級試験〔1990年〕)

緊急避難にあたるのは、次のうちどれか。

1) Bから金品を詐取したまま行方をくらましていたAは、街でBに発見されたので逃げようとして、傍らのCを突き飛ばして負傷させた。

2) 恐喝事件の被害者Aは証人として出廷したが、暴力団員が傍聴席でにらんでいたので仕返しを恐れて、被告人に有利な証言をした。

3) Aは吊り橋が腐朽して通行が危険になったので、ダイナマイトでこれを爆破した。

4) 甲は自動車を運転中、徐行義務を怠り乙をひきそうになったので、あわててハンドルを切ったところ、誤って乙をひいてしまった。

5) 消防士Aは、消防活動中に煙にまかれて窒息しそうになったので、隣の塀を壊してその場を逃れた。

■解説

1) 誤り。そもそもAには、A自身の「生命、身体、自由又は財産に対する現在の危機」がないので、緊急避難は成立しない。

2) 誤り。傍聴席からにらまれた段階で、緊急避難の要件たる「現在の危難」があると言えるかどうか疑わしいだろう。

3) 誤り。最判昭和35年2月4日である。判例はこの事案につき「現在の危難」を否定し、仮に現在の危難があったとしてもダイナマイトによる橋爆破行為は補充性を欠く、とした。大塚仁『刑法概説(総論)』第3版(1997年、有斐閣)386頁。

4) 誤り。自招危難が問題となる。判例はこの点、自己の故意又は過失により招いた危難を回避する行為は、緊急避難に該当しないとしている(大判大正13年12月12日)。前掲西田138頁。

5) 正しい。消防士のような「業務上特別の義務がある者」には、緊急避難(37条1項)の条文は適用されない(37条2項)。消防士は危険に立ち向かうことが要求されているから37条1項を適用すべきでないというのが同条2項の趣旨だが、例外的に「ギリギリの場合」は緊急避難を適用すべきと解されている。前掲西田142頁。前掲大塚388頁。