行政書士合格講座憲法学の窓・公務員試験対策室公務員試験対策室>公務員試験過去問分析(刑法4、違法性2)

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■正当防衛(地方上級試験〔2000年〕)

正当防衛に関する記述として、判例にてらし、妥当なのはどれか。

1) 防衛行為は防衛の意思をもってなされることが必要であるから、憤激し逆上して反撃行為を行った場合には正当防衛が成立することはない。

2) 「急迫」とは、法益の侵害が現に存在している場合か、または間近に押し迫っていることを意味し、その侵害があらかじめ予期されている場合には、正当防衛は成立しない。

3) いわゆる喧嘩は、双方が攻撃、防衛を繰り返す一連の連続的行為であるから、途中で相手がナイフを取り出したような場合でも、正当防衛が成立することはない。

4) 防衛行為として相当性を欠くものであっても、正当防衛として責任が阻却される。

5) 自らの不正の行為により侵害を受けるに至った場合でも、これに対する反撃行為が正当防衛となる場合がある。

■解説

1) 誤り。判例が防衛の意思必要説をとっているという点は正しい。しかし憤激または逆上して反撃を加えたからといって、直ちに防衛の意思を欠くものとすべきでないとするのが判例である(最判昭和46年11月16日)。西田典之『刑法総論』初版(2006年、弘文堂)159−160頁。

2) 正しい。「急迫」の定義は正しいが、侵害が予期されているからといって正当防衛が成立しないということはない(最判昭和46年11月16日)。但し単なる予期を超え、侵害の際に積極加害意図でこれに反撃しようとした場合は、急迫性の要件を欠き正当防衛は成立しない(最決昭和52年7月21日)。前掲西田154−156頁。

3) 誤り。喧嘩については基本的には正当防衛が成立しない(最大判昭和23年7月7日)。但し相手の反撃行為が自己の予期していた範囲を超えるような場合(素手で殴りかかったらナイフで反撃され殺されそうになった等)、なお正当防衛を認める余地があると解される。前掲西田153頁。

4) 誤り。正当防衛は違法性阻却事由であるから、責任が阻却が阻却されるとする点が誤り。なお防衛行為が相当性を欠く場合は過剰防衛が問題となるが、過剰防衛における刑の任意的減免の根拠については争いがある(違法減少説責任減少説)。前掲西田165頁以下。

5) 正しい。自招侵害の問題である。甲が乙に喧嘩を仕掛け、乙が攻撃するのを待ち構え反撃する行為については、正当防衛が認められないのが原則である。しかし肢3のように、なお正当防衛を認める余地があると解される。

本問については前掲西田173頁以下参照。

■正当防衛(地方上級試験〔1996年〕)

甲の行為に正当防衛が成立するものとして最も妥当なのは、つぎのうちどれか。

1) 甲は野球からの帰り道、他人乙からその飼い犬をしかけられ、かみつかれそうになったので持っていたバットでその犬を撲殺した。

2) 乗っていた船が沈没し、甲は溺れそうになったので乙の救命具を奪い、その結果乙を水死させた。

3) 夜道を歩いていた甲は、乙に言いがかりをつけられ殴られそうになったので、そばにあった棒で乙に反撃を加えた。驚いた乙は逃げ出したが、甲はさらに乙を追いかけその頭部を殴打し負傷させた。

4) 甲は乙と口論していたが、乙がポケットに手を入れたところ、甲は乙がナイフを取り出して自分に危害を加えようとしていると勘違いし、甲はそばにあったビンで乙を殴打し、負傷させた。

5) 甲は乙に財布を盗まれたが、翌日乙に出会った甲は、乙の持っていた甲の財布を力づくで取り返した。

■解説

1) 正しい。対物防衛についてはこれを許容する説(結果無価値論)と否定する説(行為無価値論)の対立があるが、否定説でも飼い犬の攻撃が、飼い主の故意又は過失による場合は、人間の行為の延長として正当防衛の成立を認める。前掲西田149頁以下。

2) 誤り。この場合甲と乙は正対正の関係にあるので、正当防衛ではなく緊急避難が問題となる。

3) 誤り。ここでは追いかけて殴打するという行為の評価が問題となる。この場合、乙は最初の反撃で驚き逃げているので、乙による侵害は過去のものと評価される結果(「急迫」不正の侵害ではない)、正当防衛は成立しない。前掲西田151頁。

4) 誤り。甲は急迫不正の侵害がないのにあると勘違いしているだけであり、誤想防衛が問題となる。この場合故意犯は成立せず、過失致死罪か重過失致死罪の成否が問題となる(事実の錯誤説。通説、判例)。前掲西田167頁以下。

5) 誤り。正当防衛の1要件である「急迫」とは、法益の侵害が現に存在している場合か、または間近に押し迫っていることを意味するので(最判昭和46年11月16日)、過去の侵害には防衛行為ができないということになる。前掲西田151頁。