■公務員試験過去問分析(刑法3、違法性1)

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■被害者の承諾(地方上級試験〔2009年〕)

被害者の同意がある場合に傷害罪が成立するかどうかについて、以下の甲−丙の見解がある。

甲) 同意があれば傷害罪は成立しない。

乙) 同意があれば、生命にかかわるような重大な傷害の場合を除いては傷害罪は成立しない。

丙) 同意があっても、国家社会倫理規範に照らして相当でなければ傷害罪が成立する。

これらに関する記述として、次のうち妥当なものはどれか。

1) 甲説は、身体の安全は生命に次いで重要な法益であることを根拠とする。

2) 乙説に対しては、「人の身体を傷害した」場合に処罰すると規定する傷害罪について、その一部を同意だけで不処罰とし、それ以外は通常の傷害罪として扱うことは解釈上困難であるとの批判が可能である。

3) AとBが共謀して、保険金を詐取する目的で双方の自動車を追突させ、Aに軽いむちうちの傷害を発生させた場合、甲説からは傷害罪が成立する。

4) 丙説は、被害者の意思を最大限尊重する立場である。

5) やくざの指詰め行為は、甲説では傷害罪が成立しないが、乙、丙説ではいずれも傷害罪が成立する。

■解説

1) 誤り。甲説の根拠ではなく甲説への批判となる。甲説は被害者の同意を重く見る立場であるが、それに対して同意があっても「重要な法益」だから傷害罪を成立させるべき、という批判になる。

2) 正しい。乙説は、生命に係わる重大な傷害がなければ同意の効力を認め(傷害の一部を同意だけで不処罰とし)、重大な傷害の場合は同意の効力を認めず、傷害罪を成立させるからである。

3) 誤り。この場合傷害罪を成立させるのは、丙説(最決昭和55年11月13日)である。西田典之『刑法総論』初版(2006年、弘文堂)174頁。

4) 誤り。被害者の意思(同意)を最大限尊重する立場は、丙説ではなく甲説である。上記3説の中では、丙説が最も同意を尊重しない立場である。

5) 誤り。指詰め行為が生命にかかわる重大な傷害でなければ、乙説は傷害罪の成立を認めない。なお甲説では傷害罪が成立せず、丙説では成立するという点は正しい。

本問については前掲西田173頁以下参照。

■被害者の承諾(地方上級試験〔1998年〕)

同意傷害について、a)同意があっても社会的に相当な行為のみ違法性を阻却するとする説と、b)同意があればすべて違法性(構成要件該当性)を阻却するとする説が対立している場合、次の記述のうち、a)説の立場によるものとして妥当なものはどれか。

1) 保険金詐欺の目的で、承諾を得て被害者の自動車に追突し傷害する行為は、その目的の違法性から見て、承諾があっても傷害の違法性は阻却されない。

2) 現行刑法典は、個人の自己決定権を最大限尊重しようとするものである。

3) 仲間による指詰のように、たとえ被害者の承諾があっても、その承諾によってなされる行為が社会倫理的観点から許容されない場合は違法性は阻却されないと解するのは、個人の自由な自己決定権の尊重という思想とは相いれない。

4) 刑法202条の同意殺人罪の規定は、あくまで殺人罪についての例外規定であり、傷害罪については同条に相当する規定がない以上、同意傷害は不可罰と解するべきである。

5) 本人の真摯な同意がある以上、事実上処分可能な法益については、処罰に値するだけの法益侵害はない。

■解説

1) 正しい。行為無価値論の帰結たるa)説(社会的相当性説)の根拠である。前掲西田126頁。最決昭和55年11月13日、前掲西田174頁。

2) 誤り。結果無価値論の帰結たるb)説の根拠である。個人の自己決定権のあらわれである同意を尊重するということになる。

3) 誤り。b)説によるa)説への批判となる。

4) 誤り。b)説の根拠である。殺人につき同意がある場合、同意殺人罪が適用になるが、傷害につき同意がある場合、同意傷害罪というようなものを刑法が用意していない以上、同意傷害は不可罰になるということである。前掲西田173頁。

5) 誤り。b)説の根拠である(法益欠如の原則)。前掲西田126頁。

本問については前掲西田125頁以下、173頁以下参照。