■公務員試験過去問分析(刑法2、因果関係論)

行政書士合格講座憲法学の窓・公務員試験対策室公務員試験対策室>公務員試験過去問分析(刑法2、因果関係論)

このサイトについて・プライバシーポリシー Site Map 

■因果関係論(地方上級試験〔2006年〕)

AがBの頭部を殴打したところ、Bは脳梅毒に罹患しており、脳組織が異常に弱くなっていたためその殴打が原因で死亡した。この場合において、Aの行為とBの死の結果に相当因果関係が認められるかどうかに関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。なお、甲−丙説は、相当因果関係説中、相当性を判断する基礎事情に何を含めるかに関する見解の対立である。

甲) 行為者が行為当時認識していた事情、および行為者が予見可能な事情を基礎に相当性を判断する。

乙) 行為当時に一般人が予見可能な事情、および行為者が特に認識していた事情を基礎に相当性を判断する。

丙) 行為当時に客観的に存在したすべての事情、および行為後に生じた客観的に予見可能な事情を基礎に相当性を判断する。

1) Bが脳梅毒を罹患していることについて、Aは知らなかったものの予見は可能であったが、一般人には予見不可能であったという場合には、甲説、乙説ともに相当因果関係関係が肯定される。

2) Bが脳梅毒を罹患していることをAが知っていたという場合に、相当因果関係を肯定できるのは、甲説と乙説である。

3) Bが脳梅毒を罹患していることをAは知らなかったが、一般人には予見可能であったという場合に、相当因果関係を肯定できるのは、乙説のみである。

4) Bが脳梅毒を罹患していることについて、一般人から見ておよそ予見は不可能であったという場合でも、丙説からは相当因果関係を肯定できる。

5) Bが脳梅毒を罹患していることをAも一般人も知らず、Aには予見も不可能であったが、一般人には予見可能であったという場合には、甲説、乙説、丙説いずれの説によっても相当因果関係を肯定できる。

■解説

1) 誤り。Bの事情につきAに予見可能性が認められる以上、甲説(主観説)によれば、Aの行為とBの結果につき因果関係は肯定されるが、乙説(折衷説)によれば、AはBの事情を「認識しておらず」一般人もこれを「予見し得ない」のだから、因果関係は認められない。

2) 誤り。行為者本人が認識している以上、甲説、乙説共にAの行為とBの結果との間に因果関係を肯定できるが、丙説(客観説)も、「行為当時に客観的に存在したすべての事情」を相当性の判断の基礎にするので、因果関係を肯定できる。

3) 誤り。この場合、甲説では因果関係を肯定できないが(Aに予見可能性があれば別)、乙説と共に丙説からも因果関係を肯定できる。

4) 正しい。丙説では、行為時の問題につき予見の有無をそもそも問わないからである。なお判例につき、最判昭和25年3月31日。西田典之『刑法総論』初版(2006年、弘文堂)102頁。

5) 誤り。AはBの脳梅毒という事情を知らず、かつ予見不可能であったのだから、甲説では因果関係を肯定できない。

本問については前掲西田96頁以下参照。

■因果関係論(地方上級試験〔1998年〕)

因果関係に関する次の記述のうち、判例に照らし、妥当なものはどれか。

1) 暴行を加えたところ、被害者に心臓疾患が存したため急死したような事例では、暴行がそういった特殊事情とあいまって致死の事情を生じさせたと認められる場合であっても、暴行と被害者の死との間に因果関係は認められない。

2) 運転者が自動車で走行中、過失によって歩行中の被害者を自動車の屋根にはねあげたところ、同乗者が運転者の意に反して被害者を逆さまに引きずり降ろし道路に転落させ死に至らしめたような場合には、運転者の過失行為と被害者の死との間に因果関係は認められない。

3) 被害者の頭部を殴打し意識を失わせて放置したところ、何者かがさらに被害者を殴打し被害者が死亡した事例では、最初の加害者の暴行により死因となった障害が形成された場合であっても、事後の暴行で死期が早まったときは最初の暴行と被害者の死との間に因果関係は認められない。

4) 医師の資格のない者が、患者の治療依頼に対し誤った指示を繰り返し、これに忠実に従った患者が症状を悪化させて死亡するに至った事例では、患者の側に医師の治療を受けることなく加害者の指示に従った落ち度があった場合には、指示と患者の死との間に因果関係は認められない。

5) 殺意をもって被害者の首を絞めたところ身動きをしなくなったため死んだものと思い込み砂浜に捨てたところ、被害者は生きていて砂末を吸い込んで死亡したような事例では、加害者の首を絞めた行為と被害者の死との間に因果関係は認められない。

■解説

1) 誤り。判例は、強盗犯人が老女を布団蒸しにしたところ、心臓に疾患があり急性の心臓麻痺で死亡したという事案につき因果関係を肯定する(最判昭和46年6月17日)。前掲西田102頁。

2) 正しい。はじめて相当性説的な態度を示した最決昭和42年10月24日。前掲西田104頁。

3) 誤り。第2の暴行で死期が早まった場合でも、犯人による第1の暴行により被害者の死因となった障害が形成された場合は、第1の暴行と死亡結果との間に因果関係を認めるのが判例である(最決平成2年11月20日)。前掲西田100−101頁。

4) 誤り。ここに言う「落ち度」があったとしても、当該指示が再三にわたるものであったことから、因果関係を肯定するのが判例である(最決昭和63年5月11日)。前掲西田102頁。

5) 誤り。この場合も因果関係を認めるのが判例である(大判大正12年4月30日)。前掲西田103頁。