■公務員試験過去問分析(刑法15、公務執行妨害罪他)

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■公務執行妨害罪(労働基準監督官試験〔2003年〕)

公務執行妨害罪に関する判例として妥当なのはどれか。

1) 公務執行妨害罪が成立するためには公務員の職務行為が適法であることを要するが、職務行為の適否は事後的に純客観的な立場から判断されるべきではなく、行為当時の状況に基づいて客観的、合理的に判断されるべきである。

2) 県議会の委員会において、委員長が休憩に入る旨を宣言し、退出しようとしたところに、陳情者が委員長の退去を阻止すべく同委員長に暴行を加えた場合、公務執行中ではないため、公務執行妨害罪は成立しない。

3) 公務執行妨害罪は公務員が職務を執行するにあたりこれに対して暴行または脅迫を加えたときに直ちに成立するのではなく、その暴行または脅迫により現実に職務執行妨害の結果が発生したことを必要とするものである。

4) 刑法第95条1項にいう「暴行」とは、直接に公務員の身体に向けられた有形力の行使であることが必要であり、当該公務員の指揮に従いその手足となりその職務の執行に密接不可分の関係において関与する補助者に対してなされた場合には該当しない。

5) 収税官吏が所定の検査章を携帯せずに行った帳簿、書類、その他物件の検査は法令上の方式に違反するものであるから、当該官吏に対して暴行または脅迫を加えた場合であっても、公務執行妨害罪は成立しない。

■解説

1) 正しい。公務執行妨害罪(95条1項)における、暴行脅迫の対象となる「職務の執行」は適法なものでなければならないが、この適法性については、「裁判所が法令を解釈して客観的に決めるべきである」という客観説が通説である。そしてこの客観説は、適法性を「事後的純客観的」に判断する説と、職務行為時点の具体的状況に即し判断する説に分かれるが、判例は後者をとる(最決昭和41年4月14日)。大塚仁『刑法概説(各論)』第3版(1996年、有斐閣)567頁。

2) 誤り。この場合でも、委員長が職責に基づき委員会の秩序を保持したり、審議の結果生じた疑義に対処するため職務執行を現にしていたときは、公務執行妨害罪の成立が認められる(最決平成1年3月10日)。前掲大塚569頁。

3) 誤り。公務執行妨害罪は、暴行脅迫が加えられた段階で既遂となり、現実に職務執行妨害の結果が発生したことを要しないというのが判例である(大判大正6年12月20日)。前掲大塚571頁。

4) 誤り。公務執行妨害罪の暴行は、直接に公務員の身体に「向けられる必要はなく」、ここで言うような補助者に加えられるものでも構わないというのが判例である(最判昭和41年3月24日)。前掲大塚569頁。

5) 誤り。公務員の職務執行は、法律上の重要な条件、方式を履践しなければならないが(前掲大塚565頁)、このような検査章を忘れた場合であっても、相手方からその提示を求められない場合は、その調査を適法とするのが判例である(最判昭和27年3月28日)。よってこの調査について暴行脅迫を加えれば公務執行妨害罪が成立する。前掲大塚566頁。

■収賄罪(地方公務員試験上級試験〔2010年〕)

賄賂罪に関する次のの記述のうち、判例にてらし、妥当なものはどれか。

1) 賄賂の目的物は、有形無形を問わず、人の需要・欲望を満たすに足りる一切の利益を含む。

2) 賄賂罪における職務といいうるためには、当該公務員の一般的職務権限に属するのみならず、具体的に担当している事務であることが必要である。

3) 賄賂罪が成立するためには、賄賂は、職務行為に対するものであるだけでは足りず、個々の職務行為との間に対価関係のあることを必要とする。

4) 正当な職務行為を依頼されて賄賂を受け取った場合には、職務行為の公正は侵されてはいないから、受託収賄罪は成立しない。

5) ある公務員が一般的職務権限をを全く異にする他の職務に転じた後に、当該公務員に対して金品の供与がなされたが、その金品の供与は当該公務員の従前の職務に関してなされたものであった場合には、賄賂の提供者に賄賂罪は成立しない。

■解説

1) 正しい。大判明治43年12月19日。前掲大塚633頁。

2) 誤り。賄賂罪における職務といいうるためには、「当該公務員の一般的職務権限に属するものであればよく」、具体的に担当している事務であることを「要しない」というのが判例(大判昭和18年2月18日)である。前掲大塚629頁。

3) 誤り。職務行為と賄賂との間には対価関係が必要となるが、賄賂は一定の職務に対する反対給付であれば足り、個々の職務行為との間にまで対価関係は必要ではないというのが判例である(大判昭和4年12月4日)。前掲大塚632頁。

4) 誤り。正当な職務行為の場合であっても、受託収賄罪は成立する(最判昭和27年7月22日)。正当な職務行為であっても、それが請託と結びつくことで職務行為と賄賂との対価関係が一層明瞭になるからである。前掲大塚636頁。

5) 誤り。転職前の職務について賄賂罪が成立するかどうかが問題となる。この点否定説もあるが判例は肯定説をとる。判例は、収受当時に公務員であれば収賄罪が成立するとし、賄賂に関する職務を現に担当することは賄賂罪の要件ではないとしている(最決昭和28年4月25日)。前掲大塚631頁。