■公務員試験過去問分析(刑法14、偽造罪)

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■文書偽造罪(地方公務員上級試験〔1995年〕)

文書偽造罪に関する記述として妥当なのは、次のうちどれか。

1) 文書偽造の罪の保護法益は、文書に対する公的信用であり、文書が公的信用を得るのは文書に特定人の意思または観念が表示されているためである。名義人の氏名が表示されていない文書については文書偽造の罪は成立しない。

2) 記載内容が真実である文書を真正文書というのに対し、文書の内容が真実ではない文書を不真正文書というが、内容虚偽の文書に対する公的信用は法的保護に値しないから、不真正文書については文書偽造の罪は成立しない。

3) 官公署発行の証明書類原本の写真複写についてもそれが原本と同一の意識内容を保有し、証明文書として原本と同様の社会的機能と信用性を有するものと認められる限り、文書偽造の罪が成立するとするのが判例である。

4) 他人の代理人として直接本人の商号を用いて文書を作成する権限を有する者が、その地位を濫用して自己の利益を図る目的で本人名義の文書を作成した場合には文書偽造の罪が成立するとするのが判例である。

5) 自動車運転免許証の写真をすり替えた場合でも、当該免許証の有効期限の経過が文面上明らかであるときは、公共の信用を害する恐れが認められないから文書偽造の罪は成立しないとするのが判例である。

■解説

1) 誤り。文書偽造の保護法益についての説明は正しい。大塚仁『刑法概説(各論)』第3版(1996年、有斐閣)434頁。但し名義人の氏名は、文書自体に表示されている必要はなく、文書の内容形式等またはこれらに密接し付随する物体から判断し得ればたりるというのが判例である(大判昭和7年5月23日)。前掲大塚439頁。

2) 誤り。名義人と作成者が一致している文書が真正文書、一致していない文書が不真正文書であり、真正文書の内容が真実に反するものを虚偽文書という。前掲大塚441頁。また文書偽造罪の文書の「内容」は真実か否かを問わず、どちらも本罪の客体となる(大判大正4年9月21日)。前掲大塚451頁。

3) 正しい。コピーと偽造、文書の原本性が問題となるが、判例はこのように解している(最判昭和51年4月30日)。前掲大塚442−443頁。

4) 誤り。ここでいう文書作成の「権限内」で地位を濫用した場合、文書偽造罪は成立しないというのが判例である(大連判大正11年10月20日)。この場合背任罪の成立を考えればたりる。一方「権限を超えて」文章を作成した場合は、文書偽造罪が成立する(大判明治42年12月2日)。前掲大塚449頁。

5) 誤り。自動車運転免許証の写真をすり替えた後、当該免許証の有効期限が切れて3か月たったのち警察官にそれを提示した行為を偽造公文書行使罪とするのが判例である。前掲大塚458頁。

■文書、通貨偽造罪(国家公務員1種試験〔2009年〕)

文書偽造の罪および通貨偽造の罪に関するア)−オ)の記述のうち、判例にてらし、妥当なもののみをすべてあげているのはどれか。

ア) 私立大学の入試選抜試験において、いわゆる替え玉受験を依頼された者が、依頼人の名義で答案を作成した場合は、私文書偽造罪は成立しない。

イ) 弁護士資格を有しない者が、自己の氏名がある弁護士会所属の弁護士Aと同姓同名であることを利用して、同弁護士に成りすまし、「弁護士A」の名義で、弁護士報酬金請求書、振込依頼書、請求書、領収書などを作成し、署名、押印した場合は私文書偽造罪が成立する。

ウ) 無免許運転中に取締を受けた際に、他人の氏名を称して交通事件原票中の供述書欄に署名し、他人名義の交通事件原票中の供述書を作成した場合であっても、あらかじめ他人の承諾を得ていれば私文書偽造罪は成立しない。

エ) 警察官から提示を求められたときに使用する目的で、自動車運転免許証を偽造した場合、自動車を運転する際にそれを携帯した時に、偽造公文書行使罪が成立する。

オ) 自ら偽造した通貨を、賭博の賭金として使用した場合であっても、通貨偽造行使罪が成立する。

1) ア)、ウ)

2) ア)、エ)

3) イ)、ウ)

4) イ)、オ)

5) エ)、オ)

■解説

ア) 誤り。大学入試の答案も、私文書偽造罪の「権利、義務若しくは事実証明に関する文書」(159条1項)にあたるとするのが判例(最決平成6年11月29日)であるから、他人名義の大学入試答案を作成する行為は私文書偽造罪に該当する。前掲大塚485頁。

イ) 正しい。最決平成5年10月5日。

ウ) 誤り。あらかじめ承諾があったとしても私文書偽造罪が成立するというのが判例である(最決昭和56年4月8日)。性質上交通事件原票は名義人自身による作成だけが予定されている文書と解されているからである。前掲大塚452頁。

エ) 誤り。このように免許証を携帯しているだけでは、他人がその内容を認識しうる状態におかれていないので、行使に当たらないというのが判例である(最大判昭和44年6月18日)。前掲大塚461頁。

オ) 正しい。この場合も「行使」に該当するというのが判例である(大判明治41年9月4日)。前掲大塚415頁。

よって正解は4)となろう。