■公務員試験過去問分析(刑法13、放火罪)

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■放火罪(地方公務員上級試験〔1996年〕)

現住建造物等放火罪に関する次の記述のうち、判例にてらし、妥当なのはどれか。

1) 放火した者のみが居住する住宅に放火した場合にも、現住建造物等放火罪が成立する。

2) 居住者の殺害後にその住居に放火した場合には、現住建造物等放火罪は成立しない。

3) マンションのエレベーターのかごの内部が燃焼したのみでは、現住建造物等放火罪は成立しない。

4) 住宅の天井の一部が燃焼したのみでは、現住建造物等放火罪は成立しない。

5) 学校の校舎に放火した場合、校舎内に夜間宿直員の宿泊する宿直室があったとしても、現住建造物等放火罪は成立しない。

■解説

1) 誤り。現住建造物等放火罪の客体は「現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物」(108条)であるが、ここでいう「人」とは「犯人以外の者」を指す(大判明治42年12月6日)。よってこの場合は非現住建造物等放火罪(109条1項)が成立する。大塚仁『刑法概説(各論)』第3版(1996年、有斐閣)374、377頁。

2) 正しい。この場合は殺人罪と非現住建造物放火罪が成立するというのが判例である(大判大正6年4月13日)。前掲大塚377頁。

3) 誤り。放火罪が既遂に達するための要件である「焼損」の概念が問題となるが、判例はこの事例の程度の燃焼でも現住建造物等放火罪の成立を認めている(最決平成1年7月7日。独立燃焼説)。前掲大塚374頁。

4) 誤り。独立燃焼説は、「火が媒介物である燃料を離れ目的物に移り、独立して燃焼作用を営みうる状態に達したときを焼損、つまり既遂とする」ので、このような事例の場合でも現住建造物等放火罪の成立が認められる(最判昭和23年11月2日)。前掲大塚371頁。

5) 誤り。「建造物の一部が起臥寝食の用に供されていれば、その建造物の全体」が非現住建造物等放火罪の客体となるので、この場合も現住建造物等放火罪が成立する(大判大正2年12月24日)。前掲大塚374頁。

■放火罪(国家公務員1種試験〔1999年〕)

自己所有の非現住建造物等放火罪(109条2項)、建造物等以外放火罪(110条)は具体的危険犯であり、その成立に一般人をして他の建造物等に延焼するであろうと思わせる程度の状態の発生が必要であるとされるが、更に具体的危険発生の認識までも必要とするか否かについて認識必要説と認識不要説の2説がある。次のA)−E)はそれぞれの説の論拠を述べたものであるが、認識不要説の論拠として妥当なのは、次のうちどれか。

A) 抽象的危険犯とされる現住建造物等放火罪(刑法108条)および非現住建造物等放火罪(同109条1項)では公共の危険は構成要件要素ではないが、具体的危険犯とされる自己所有の非現住建造物等放火罪および建造物等以外放火罪では具体的危険の発生は構成要件要素とされるべきであって、反対説は責任主義の原理に照らして不当である。

B) 反対説では、放火の罪のうち抽象的危険犯とされる罪の既遂時期は焼損の時期であるとする一方、具体的危険犯とされる罪の既遂時期は焼損し公共の危険を生じせしめた時点となるから、同じ放火の罪において抽象的危険犯と具体的危険犯で既遂時期が異なって不当である。

C) 自己所有の非現住建造物等放火罪は、「ただし、公共の危険を生じなかったときは、罰しない」、建造物等以外放火罪は「よって公共の危険を生じさせた者」という規定の仕方をしており、これらをそれぞれ客観的処罰事由、結果的加重犯と解すれば、責任主義の原則とは矛盾しない。

D) 自己所有の非現住建造物等放火罪における自己所有物の焼損は、それ自体では、犯罪は成立せず、公共の危険の発生があって初めて法益侵害となる。この場合、自己所有物の焼損は違法ではないのだから、反対説によると、この違法でない部分についてしか故意を認めることができなくなり、理論上故意犯が成立するかは疑問である。

E) 具体的危険発生の認識は、実質的に延焼罪(刑法111条)の客体についての放火の故意と変わらない。

1) A)B)C)

2) A)B)D)

3) A)C)E)

4) B)C)E)

5) B)D)E)

■解説

A) 認識必要説の論拠である。具体的危険発生、公共の危険発生は構成要件要素である以上、その認識が必要になるのは当然であるとする。前田雅英『刑法各論講義』第2版(1995年、東大出版会)352頁。

B) 認識不要説の論拠である。ここでいう反対説が認識必要説である。なお判例は認識不要説をとる(最判昭和60年3月28日)。前掲前田353頁。

C) 認識不要説の論拠である。

D) 認識必要説の論拠である。「よって公共の危険を生じさせた者」という規定の仕方は結果的加重犯的なものであるが、だからこそ加重結果的な「公共の危険を生じさせる」ことにつき認識は不要とする(傷害致死の致死について認識が不要という点と比較されたい)。前掲前田352頁注4。

E) 認識不要説の論拠である。これについては、具体的な危険発生の認識と、延焼そのものの認識即ち延焼の蓋然性の認識や延焼の認容とは区別できるという批判がある。前掲前田353頁。

よって正解は4)となろう。