■公務員試験過去問分析(刑法12、横領罪、背任罪)

行政書士合格講座憲法学の窓・公務員試験対策室公務員試験対策室>公務員試験過去問分析(刑法12、横領罪、背任罪)

このサイトについて・プライバシーポリシー Site Map 

■横領罪(国家1種公務員試験〔1996年〕)

横領罪に関する次の記述のうち、判例にてらし、妥当なのはどれか。

1) AはBから製茶の買付依頼を受けて、その代金を預かって保管中に無断でこれを生活費に流用したが、Bからの返還請求を受けて、他から資金を調達のうえ、預り金の全額をBに返還した。この場合、Aに横領罪は成立しない。

2) Aは、B自動車販売会社から所有権留保特約付割賦販売契約によって自動車を購入し、Bからその引き渡しを受けたが、代金を完済しないうちにB会社に無断でこの自動車を金融会社に自己の借入金の担保に供した。所有権留保特約付割賦販売契約は、その実態は担保であって自動車の所有権はAにあると解されるので、Aに横領罪は成立しない。

3) 窃盗犯人Bは、自己が盗んできた盗品の売りさばきをAに依頼し、Aはこれに応じてCに盗品を売却したが、AはCから受け取った代金をBに渡さず着服してしまった。Bはこの代金について返還請求権を有せず、代金の所有権はAにあると解されるので、Aに横領罪は成立しない。

4) B町森林組合の組合長であるAは、法令により造林資金以外に流用の禁止されている金員を、その目的に反して、しかも役員会決議も無視したまま、組合名義でB町に貸付支出した。この場合、当該貸付は個人の計算においてなしたものと認められ、Aに業務上横領罪が成立する。

5) Aは湖を群遊中の色鯉を縦網でとらえたが、この色鯉は同じ湖にある養殖業者の色鯉である以外にないと判断される場合、この養殖業者がこの色鯉を回収することが事実上困難であれば、Aに占有離脱物横領罪は成立しない。

■解説

1) 誤り。使途を限定して委託された金銭についての所有権は、受託者ではなく委託者にあると解すべきである。よって受託者にとって当該金銭は「他人の物」であり、これを受託者が消費すれば横領罪が成立する(最判昭和26年5月25日)。大塚仁『刑法概説(各論)』第3版(1996年、有斐閣)285−286頁。ただし実際問題として、このような一時流用の事案において横領罪が成立するには、行為者が補填の能力、意思もないのに当該金銭を他目的に消費したという事情が必要となろう。参照前掲大塚286頁。。

2) 誤り。所有権留保特約付割賦販売契約の目的となる物の所有権は、原則代金完済まで売主に属するので、本肢のように代金完済前に自動車を担保に供することは、横領罪を構成する(大判昭和9年7月19日)。前掲大塚285頁。

3) 誤り。不法原因給付と横領罪の関係が問題となる。この事例について判例は、横領罪の成立にはBに民法上の返還請求権があることは必要でないとして、横領罪の成立を認めている(最判昭和36年10月10日)。前掲大塚291頁。

4) 正しい。背任と横領罪の区別、他人のためにその事務を処理する者が、自己の占有する他人の物を不法に処分する場合、いずれが成立するかが問題となる。判例はこの点につき、財物についての処分が「自己の名義、計算」で行われた場合を横領、「本人の名義、計算」で行われた場合を背任とする(大判大正3年6月13日)。但し本肢のように、「本人の名義であっても自己の計算によって」処分が行われた場合は、横領罪の成立を認めている(最判昭和34年2月13日)。前掲大塚317−318頁。

5) 誤り。このように、天然の鯉と他人の飼育した鯉が区別し得る状況にある場合、湖に逃げ出した鯉であっても占有離脱物とするのが判例である。よってこれを横領すれば占有離脱物横領罪となる(最決昭和56年2月20日)。前掲大塚313頁。

■背任罪(地方公務員上級試験〔1990年〕)

背任罪に関する次の記述のうち、妥当なのはどれか。

1) 使途を限定して委託された金銭を受託者がほしいままに消費する行為は、金銭が代替物であって、委託された段階でその所有権が受託者に移転するものであることから、横領罪を構成せず、背任罪を構成する。

2) 所管する貸付事務に関して貸付金の回収が危ぶまれる状態にあることを熟知しながら無担保ないし十分な担保を徴収せず貸付手続をとった時は、それが決裁権者の指示によるものであったとしても、背任罪の成立を免れない。

3) 背任罪においては、他人の事務を処理する者が、本人または第三者の利益を図り、または本人に損害を加える目的をもって任務違背行為をなしたときに実行の着手があり、同時に既遂となるから、背任罪の未遂は理論上あり得ない。

4) 他人の事務を処理する者が任務違背行為をして、本人の抵当権の順位を一番抵当から二番抵当にしたとしても、本人に財産上の損害を加えていないから、その段階では背任罪の未遂の成立の余地があるのみである。

5) 甲が自己の不動産を乙に譲渡したが、登記が完了せずなお自己名義になっていることを利用して、丙に当該不動産を二重譲渡して登記も丙に移転した場合、横領罪は成立せず背任罪が成立する。

■解説

1) 誤り。使途を限定して委託された金銭についての所有権は、受託者ではなく委託者にあると解すべきである。よって受託者にとって当該金銭は「他人の物」であり、これを受託者が消費すれば横領罪が成立する(大判昭和9年4月23日)。前掲大塚285−286頁。

2) 正しい。大判大正15年9月23日、前掲大塚323頁参照。

3) 誤り。背任罪の既遂時期は、任務違背行為の結果「本人に財産上の損害を生じた時点」であり、任務違背行為の結果損害が発生しなかった場合、背任罪の未遂が成立する(250条)。前掲大塚329−330頁。

4) 誤り。二重抵当の事案である(最判昭和31年12月7日)。判例は一番抵当から二番抵当にした段階ですでに財産上の損害が発生したとしている。前掲大塚324頁。

5) 正しい。判例は、二重譲渡につき一貫して横領罪の成立を認めている(大判明治44年2月3日)。前掲大塚297−298頁。