■公務員試験過去問分析(刑法11、詐欺罪)

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■詐欺罪(地方公務員上級試験〔1997年〕)

いわゆるクレジットカード詐欺において、不正に入手した他人名義のクレジットカードの不正使用が詐欺罪を構成することについて争いはないが、代金支払いの意思も能力もない者が自己名義のクレジットカードを使用することが詐欺罪を構成するか否かについては争いがある。
そこで、自己名義のクレジットカードの不正使用が詐欺罪を構成するとした場合における被欺罔者、処分者、被害者、適用条項の組み合わせとして妥当なのは、次のうちどれか。

被欺罔者 処分者 被害者 適用条項

1) 加盟店 加盟店 加盟店 246条2項

2) 加盟店 信販会社 加盟店 246条2項

3) 信販会社 信販会社 信販会社 246条1項

4) 信販会社 加盟店 加盟店 246条1項

5) 加盟店 加盟店 信販会社 246条2項

■解説

このような自己名義のクレジットカードの利用が詐欺罪に該当するかについては、不可罰説もあるが、大半の学説は可罰説をとる。しかし可罰説の理論構成については争いがある。

1) 誤り。適用条項を「1項」にすれば正しい学説となる。「加盟店」に対し「代金支払いの意思も能力もない者が自己名義のクレジットカードを使用すること」が挙動による欺罔であり、それにより加盟店が錯誤に陥りそれにより商品を交付、欺罔者が商品を取得すれば既遂に達するとする。この説では詐欺による損害につき、加盟店が商品を失ったことと解するので、適用条項が「246条1項」になる。前田雅英『刑法各論講義』第2版(1995年、東大出版会)269−270頁。

2) 誤り。被欺罔者と処分者は原則一致していなければならない。前掲前田267頁。

3) 誤り。適用条項を「2項」にすれば正しい学説となる。1)で述べた説では、加盟店は信販会社から代金を払ってもらうことができるので、損害についての説明が苦しい。そこでこの説では、被欺罔者、処分者、被害者を逆に「すべて信販会社」とし、信販会社の立替払いをさせ不法に領得した点をとらえ「246条2項」を適用条項とする。前掲前田270頁。

4) 誤り。2)説と同様の問題が指摘できる。

5) 正しい。有力説といえようか。被欺罔者と処分者は同一でなければならないが、被害者は別でも構わない(三角詐欺)ということが前提となっている。前掲前田268、270頁。

■詐欺罪(労働基準監督官試験〔1998年〕)

詐欺罪に関する次の記述のうち、判例にてらし、妥当なのはどれか。

1) 被害者が民法上の不法原因給付として返還請求をなし得ないような場合には、被害者に対する欺罔行為によって加害者が相手方の所有する財物を交付させて取得したとしても詐欺罪は成立しない。

2) 被害者が加害者の虚言を信じて現金を加害者が事実上自由に支配できるような状態に置いたまま席を外したところ、加害者が現金を持って逃走したような場合には、財物の騙取行為があったとはいえないため詐欺罪は成立しない。

3) 公営ギャンブルの選手が他の選手と共謀して八百長レースを行い賞金を獲得する行為も詐欺罪となるが、選手がスタートラインに着いた時点では詐欺罪の実行の着手があったとはいえない。

4) 飲食店や旅館において、最初から踏み倒す意思で飲食、宿泊し、友人を見送ると偽って逃走したような場合には、代金支払意思のないことを隠して飲食、宿泊する行為は、欺罔行為とはいえないため詐欺罪は成立しない。

5) 詐欺罪における「人を欺いて」とは、行為によることを要するから、自己の財物に担保物権が設定されていることを黙秘してこれを担保に供しても、詐欺罪は成立しない。

■解説

1) 誤り。欺罔行為の結果なされた財物の交付が不法原因給付にあたる場合であっても、詐欺罪の成立を肯定するのが判例である(大判明治42年6月21日)。大塚仁『刑法概説(各論)』第3版(1996年、有斐閣)253頁。

2) 誤り。この場合詐欺罪の成立を肯定するのが判例である(最判昭和26年12月14日)。

3) 誤り。この場合実行の着手を肯定するのが判例である(最判昭和29年10月22日)。前掲大塚254頁。

4) 誤り。この場合詐欺罪の成立を肯定するのが判例である(最決昭和30年7月7日)。前掲大塚262頁。ここでは無意識の処分行為が問題となる。

5) 誤り。人を欺く行為については手段方法に制限はなく、また作為でも、この場合のように不作為(大判昭和4年3月7日)でも構わない。前掲大塚244頁。