■公務員試験過去問分析(刑法10、窃盗罪、強盗罪)

行政書士合格講座憲法学の窓・公務員試験対策室公務員試験対策室>公務員試験過去問分析(刑法10、窃盗罪、強盗罪)

このサイトについて・プライバシーポリシー  Site Map

■窃盗罪(国家公務員1種試験〔2000年〕)

窃盗罪に関する次の記述のうち、判例にてらし、妥当なのはどれか。

1) 所有者の事実支配を離れた物については、仮に所有者以外の第三者の占有に移転していたとしても、第三者の占有の侵害を考慮する余地はないので、客が旅館内の便所に置き忘れた物を領得する行為は、窃盗罪ではなく、遺失物横領罪となる。

2) 被害者を殺害した後に財物奪取の意思を生じ、殺害直後に殺害現場で被害者が所持していた財物を奪取した場合は、被害者からその財物の占有を離脱させた自己の行為を利用して財物を奪取したという一連の行為を全体的に考察して、他人の財物に対する所持を侵害したものというべきであるから、窃盗罪が成立する。

3) 封印した封筒を委託された者がその中身のみを領得するする行為は、自己の占有する他人の物の領得であるから、封を破らず委託物全体を領得する場合と同様、窃盗罪ではなく、横領罪となる。

4) 窃盗が既遂に達したと言えるためには、財物を自己または第三者の実質的支配下に移したのみでは足りず、被害者の支配状態を完全に脱却することが必要であるから、他人の家の浴室内で取得した指輪を後で取りに戻ろうと浴室内の他人の容易に発見し得ない隙間に隠した時点ではいまだ既遂に達したとみる余地はない。

5) 親族相盗と認められるためには、身分関係が行使者と占有者との間に存在すれば足り、行為者と所有者との間にも存することは要しない。

■解説

1) 誤り。「財物を他人の排他的実力支配下にある場所に置き忘れた」ときは、その財物の占有はこの場所の管理者、この事例では旅館主に移る(大判大正8年4月4日)。大塚仁『刑法概説(各論)』第3版(1996年、有斐閣)184頁。

2) 正しい。死者の占有が問題となる。この場合、被害者の生前の占有は、犯人に対する関係において時間的場所的に近接する範囲では刑法上の保護に値すると考えられるので、窃盗罪が成立する(大判昭和16年11月11日)。前掲大塚187頁。

3) 誤り。封印されている物の中身を領得する行為は窃盗罪を構成し、封印されている物全体を領得する行為は横領罪を構成する(大判大正5年11月10日等)。前掲大塚189頁。

4) 誤り。このような事案について判例は、窃盗の既遂としている(大判大正12年7月3日)。前掲大塚195頁。

5) 誤り。親族相盗例(244条)にいう「親族」たる身分関係は、行為者と目的物の所有者及び占有者との間に存在しなければならない(最決平成6年7月19日)。行為者と、所有者か占有者どちらか一方との間にあればよいというのではない。前掲大塚208頁。

■強盗罪(国家1種公務員試験〔1991年〕)

強盗罪に関する次の記述のうち、判例にてらし、妥当なのはどれか。

1) 行為者が強盗の故意で社会通念上被害者の犯行を抑圧するに足りる程度の暴行・脅迫を加え、財物を奪取した場合は、たまたま被害者が反抗を抑圧されなかったとしても強盗罪が成立する。

2) 行為者が強盗の故意でまず財物を奪取し次いで被害者に暴行・脅迫を加えて奪取を確保した場合は、暴行・脅迫を直接の手段としないので事後強盗罪が成立する。

3) 強盗罪は財産に対する罪である以上、行為者が強盗の故意で暴行を加えて被害者を死亡させたが、財物を奪取するに至らなかった場合強盗致死罪の未遂となる。

4) 強盗致死傷罪は強盗の結果的加重犯であるから、行為者が当初から被害者を殺害して財物を奪取する故意を有していた場合は強盗致死罪は成立せず強盗罪と殺人罪の観念的競合となる。

5) 行為者が強盗の故意で暴行・脅迫を加えたが、被害者のしらない間に財物を取得した場合は、財物の「強取」ではなく「窃取」になるから強盗罪の未遂と窃盗罪の観念的競合になる。

■解説

1) 正しい。最判昭和23年11月18日。前掲大塚213頁。

2) 誤り。奪取行為は暴行、脅迫の前に行われても差し支えなく、この事例では強盗罪の成立を認めるのが判例である(最判昭和24年2月15日)。前掲大塚216頁。

3) 誤り。強盗致死傷罪は、財物奪取の有無にかかわらず致死傷の結果が発生すれば強盗致死傷罪は既遂に達する(大連判大正11年12月22日)。前掲大塚232頁。

4) 誤り。このように解する説もあるが、通説判例は、240条後段には結果的加重犯たる強盗致死の他に、故意による強盗殺人をも含むと解する。つまりこの場合強盗致死(強盗殺人)罪が一罪成立するのみである(大連判大正11年12月22日)。前掲大塚228−229頁。

5) 誤り。このような被害者が知らない間に財物を行為者に奪取された場合であっても、「強取」とするのが判例である(最判昭和23年12月24日)。前掲大塚215頁。