■公務員試験過去問分析(刑法1、罪刑法定主義他)

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■罪刑法定主義(国家公務員2種試験〔1989年〕)

罪刑法定主義に関する記述として正しいのは、次のうちどれか。

1) 罪刑法定主義はその淵源をフランス人権宣言に発し、わが国では明治憲法には規定はなかったが、現行憲法には英米法の考え方を取り入れて明記されている。

2) 罪刑法定主義の法定の中には、国民の代表である国会で犯罪や刑罰を決定することだけでなく、慣習法の尊重や類推解釈を認めることも含まれている。

3) 罪刑法定主義は、犯罪と刑罰を明記することによって国民相互において個人の活動の自由を保障するもので、国家権力から国民の生命、自由、財産を守ることをその目的としていない。

4) 罪刑法定主義の原則の1つとして、同一の行為について重ねて責任を問われないという一事不再理があるが、これは同一の行為について刑事上の責任と民事上の責任を重複には問えないことを意味している。

5) 罪刑法定主義は手続きだけでなく実体的にも適正さが求めらるので、犯罪と刑罰が単に法律で定められているだけでなく、犯罪が明確に定義されることが求められ、また期間の定めない不定期刑は許されない。

■解説

1) 誤り。明治憲法は罪刑法定主義に関する規定を設けていたが(23条)、現行憲法ではそれに関する直接の規定はない。但し解釈上憲法31条は罪刑法定主義を定めたものとされている。西田典之『刑法総論』初版(2006年、弘文堂)40頁。

2) 誤り。罪刑法定主義の派生原則として、慣習刑法排除の原則と類推解釈禁止の原則がある。前掲西田43、52−53頁。

3) 誤り。罪刑法定主義は、国家権力から国民の自由などを守ることを主眼としている原則である(罪刑専断主義の否定)。前掲西田38頁。

4) 誤り。一事不再理(憲法39条)とは、「同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない」ことを意味する。

5) 正しい。前掲西田54頁以下。

■罪刑法定主義(地方上級試験〔2004年〕)

刑罰に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

1) 目的刑論において、一般予防とは、犯人の処罰によって社会の一般人が犯罪に陥ることを防止しようとする考え方であり、特別予防とは、犯人の処罰によってある種の犯罪を行う可能性の高い特定のグループが犯罪を行うことを防止しようとする考え方である。

2) 罪刑法定主義の背後には、何か犯罪かを法定して行動の予測可能性を持たせることで国民の自由を保障するという自由主義の原理が存在するだけでなく、刑罰法規は行政府や裁判所ではなく国会によって定められなければならないとする民主主義の原理も存在する。

3) すでに無罪とされた行為については重ねて刑事上の責任を問われることはないとする二重の危険の禁止は、罪刑法定主義から導かれる派生原則である。

4) 事後的に制定された罰則を遡及して適用し処罰することを禁ずる遡及処罰禁止の原則は、法定された刑罰法規の時間的適用範囲の問題であって、罪刑法定主義と直接の関係はない。

5) 不定期刑の種類には、刑の内容や期間を全く定めない絶対的不定期刑と、これらが相対的に決定されている相対的不定期刑があるが、先進国においてはどちらの種類も採用する立法例はない。

■解説

1) 誤り。目的刑論における特別予防とは、「犯罪者自身が将来再び罪を犯すことを防止する」事を主眼とする考えである。前掲西田16頁。

2) 正しい。前掲西田43−44頁。

3) 誤り。罪刑法定主義の派生原理には、法律主義、事後法の禁止、類推解釈の禁止、明確性の原則、刑罰法規の適正、がある。二重の危険の禁止は罪刑法定主義の派生原理ではない。前掲西田43頁。

4) 誤り。遡及処罰禁止の原則(事後法の禁止〔憲法39条〕)は、罪刑法定主義の派生原理であるから、直接の関係はあると言える。前掲西田48頁。

5) 誤り。絶対的不定期刑は罪刑法定主義に反するので採用できないが、相対的不定期刑は少年法(52条)で採用されている。大塚仁『刑法概説(総論)』第3版(1997年、有斐閣)534頁。

■刑法6条(地方上級試験〔1997年〕)

刑法6条にいう「刑の変更」に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

1) 本条にいう「刑の変更」とは、刑の種類または量の変更を意味するので、刑の執行猶予の条件に関する法規の変更もこれに該当するというのが判例である。

2) 本条は、「刑罰法規不遡及の原則」の例外を定め、直接的には「軽い新法」の遡及適用を認めるものであるが、刑が廃止になった場合は、本条の「刑の変更」には該当しない。

3) 本条にいう「犯罪後」とは、構成要件に該当する行為の時を基準として、その後という意味であり、継続犯や包括一罪の場合は、その行為の終了時の法律を適用するとするのが判例である。

4) 複数の者が共謀して犯罪を犯した事例について、共謀時と犯罪実行時の間に法律の改廃があった場合には、本条の適用により犯罪実行時の法律が適用されるとするのが判例である

5) 犯罪実行後に法改正があり、新法と旧法との間に刑の軽重がない場合には、本条の直接の適用はないが、刑法は裁判規範であり、かつ、新法適用の方が合理的なので裁判時の新法が適用されるとするのが判例である。

■解説

1) 誤り。刑の執行猶予の条件に関する法規の変更は、刑の種類または量の変更を意味しないので、刑の変更とは言えないというのが判例(最判昭和23年6月22日)である。前掲大塚69頁。

2) 誤り。6条が刑法不遡及の例外を定めるという点は正しいが、 刑が廃止になった場合も、6条にいう刑の変更に該当する(広島高判昭和28年11月20日〔判決文。pdfファイル〕)。この場合訴訟法上は、免訴判決を言い渡すことになる(刑事訴訟法337条2号参照)。前掲大塚68、71頁。

3) 正しい。最決昭和27年9月25日、大判明治43年11月24日。前掲大塚68頁。例えば監禁の実行行為中に刑の変更があった場合でも、6条とは関係なしに端的に監禁行為終了時の法律を適用すれば足りる。

4) 誤り。6条にいう「犯罪後」とは「実行行為の行われた後」(前掲大塚68頁)を意味するから、共謀と犯罪実行時の間に法律の改廃があった場合は6条の適用はない。

5) 誤り。この場合は刑法不遡及原則に従い、旧法を適用するとするのが判例である(大判昭和9年1月31日)。前掲大塚70−71頁。