■公務員試験過去問分析(民法総則)

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なお我妻・総則とは『新訂民法総則(民法講義T)』(1965年・岩波書店)を意味します。

■制限能力者制度(地方上級試験改題)

次のうち取消しうべき行為として正しいものはどれか。

1) 法定代理人から目的を定めないで処分を許された財産を、未成年者が処分する行為。

2) 被保佐人が、補佐人の同意無くして訴訟に応ずる行為。

3) 法定代理人の同意なくしてなされた未成年者の行為で、相手方が1ヶ月以上の期間をおいて法定代理人に催告するも確答をえられなかった場合の、その未成年者の行為。

4) 被保佐人の相手方が、能力者となった被保佐人に対して催告をなしたが返答をえられなかった場合の、被保佐人が相手方となした行為。

5) 成年被後見人が後見人によって営業を許可され、その営業の範囲内でなした行為。

■解説

1) 誤り。この場合は取消すことができない(民法第5条。随意処分の許可)。

2) 誤り。民法第12条4号は、被保佐人が「訴訟行為をなす」場合保佐人の同意を要する旨規定する。この訴訟行為をなすという言葉は、「民事訴訟において原告となって訴訟を遂行する一切の行為」(我妻・総則85頁)を指すのであり、相手方の提起した訴えまたは上訴について訴訟行為をすることは含まれない。

3) 誤り。この場合、法定代理人は未成年者の行為を追認したものとみなされる(民法第19条2項、同条1項)。

4) 誤り。この場合も肢3と同様に、能力者となった被保佐人は、当該行為を追認したものとみなされる。

5) 正しい。成年被後見人の行為は常に取消すことができる。後見人の同意を得た行為であっても同じである(我妻・総則79頁。民法第9条。尚同条但書に注意せよ)。

■法人(国家公務員2種〔1997年〕) New

法人の不法行為に関する次の記述のうち、妥当なのはどれか。

1) 法人における理事の行為と被用者の行為との間には代理権限や委任事務の 範囲の量的差異があるにすぎないことから、法人の被用者が不法行為を行った場合には、法人は民法44条1項の不法行為責任のみを負う。

2) 法人の不法行為責任が認められるためには、理事などの職務行為により他人に損害を加えたことが必要であるから、当該行為はその外形上理事などの職務行為とみられる行為であって、かつ、法人の有効または適法な行為であることを要する。

3) 法人の理事が自己の私利を図る目的で自己の権限を越えて代表行為を行った場合には、法人は民法110条の表見代理責任のみを負い、民法44条1項の不法行為責任を負わないとするのが判例である。

4) 法人の理事が行った不法行為につき法人が民法44条1項の不法行為責任を負う場合にも、当該理事は個人として不法行為責任を免れず、法人と連帯してその損害を賠償する責任を負う。

5) 法人の理事が法人の目的の範囲内に含まれない行為により他人に損害を与えた場合には、当該行為が理事会の議決に基づいてなされたときであっても、法人は民法44条1項の不法行為責任を負わず、当該行為を行った理事のみがその損害を賠償する責任を負う。

■解説

1) 誤り。民法44条1項にいう「理事その他の代理人」には、単なる被用者は含まれない。単なる被用者の不法行為について法人は、715条に基づく責任を負う。SシリーズT86頁。

2) 誤り。本肢にいう「法人の有効または適法な行為であること」は、法人の不法行為責任を認めるのには必要ではない。

3) 誤り。110条と44条1項の関係につき、判例は110条の適用を前提にしつつ、不法行為の相手方に過失がある(表見代理不成立の)場合、44条1項を適用し法人の不法行為責任を肯定する立場を取る。SシリーズT87−88頁。

4) 正しい。大判昭和7・5・27。SシリーズT88頁。

5) 誤り。「法人の目的の範囲を超える行為によって他人に損害を加えたときは、その行為に係る事項の決議に賛成した社員及び理事並びにその決議を履行した理事その他の代理人は、連帯してその損害を賠償する責任を負う」(44条2項)のであり、法人は責任を負わない。

■意思表示(地方上級試験)

意思の欠缺または瑕疵ある意思表示に関する記述として妥当なものは、次のうちどれか。

1) 心裡留保は、表示行為が内心的効果意思と異なって解されることを表意者が知らずにする意思表示で、原則として無効とされる。

2) 虚偽表示は、表示行為が内心的効果意思と異なって解されることを表意者が承知してする意思表示で、原則として有効とされる。

3) 錯誤は、表示から判断される意思と表意者の真に意図するところが相違することで、錯誤による意思表示は取消すことができる。

4) 詐欺は、欺罔行為によって人を錯誤に陥れる違法な行為で、詐欺による意思表示は無効とされる。

5) 強迫は、害意を示して他人を畏怖させる違法な行為で、強迫による意思表示は取消すことができる。

■解説

本問は意思表示に関する条文を読んでいれば、楽に解きうる問題であるが、以下の表を覚えておくと楽である。

類型
効果
心裡留保 有効
虚偽表示 無効
錯誤 無効
詐欺・強迫 取消可

1) 誤り。心裡留保とは、「意思と表示の不一致」「を表意者自身が知っていて、そのことを告げない意思表示」(我妻・総則287頁)のことであり、その効果は有効とされる(民法第93条本文)。

2) 誤り。虚偽表示とは、「相手方と通じてなす真意でない意思表示」(我妻・総則289頁)のことであり、その効果は無効とされる(民法第94条1項)。

3) 誤り。錯誤の意義は正しいが、錯誤の効果は無効である(民法第95条本文)。

4) 誤り。詐欺の意義は正しいが、詐欺の効果は、当該意思表示が取消得べき意思表示となる(民法第96条1項)。

5) 正しい。民法第96条1項。

■心裡留保(国税専門官試験)

心裡留保(民法93条)に関する記述として妥当なものは、次のうちどれか。

1) 心裡留保とは、表示行為が内心的効果意思と異なっていることを表意者が意識しないで行う意思表示である。

2) 心裡留保では、相手方が表示行為につき内心効果意思が伴わないということを知っていた場合にも無効とならない。

3) 心裡留保が無効とされる場合にも、これを善意の第三者に対向することはできないとするのが通説である。

4) 心裡留保は、表意者が単独で行う意思表示であるが、相手方のない単独行為には民法93条の適用はないとするのが通説である。

5) 身分関係上の行為に関する心裡留保は、相手方が表示行為に内心的効果意思が伴っていないことを知っていた場合に限り、無効であるとするのが通説である。

■解説

1) 誤り。前問肢1解説参照。

2) 誤り。心裡留保による意思表示は原則有効であるが、相手方が悪意・有過失の場合無効になる(民法第93条但書)。

3) 正しい。心裡留保が無効とされた場合の法律関係に、第三者が入ってきた場合、民法第94条2項の類推適用により、心裡留保による意思表示をした者は、善意の第三者には対抗できない(我妻・総則288頁)とされている。

4) 心裡留保は、相手方のない単独行為(非嫡出子の認知〔判例〕等)にも適用される(我妻・総則288−289頁)。

5) 身分上の行為は、「当事者の真意に基づくことを絶対に必要とする行為」(我妻・総則289頁)であるから、心裡留保の規定は身分行為にはそもそも適用されないと解されている。

■虚偽表示(地方上級試験)

虚偽表示についての記述として正しいものは、次のうちどれか。

1) 要物契約で物の授受がないときは、虚偽表示は成立しない。

2) 虚偽表示は、相手方との合意のみで撤回が認められる。

3) 単独行為については、相手方の有無にかかわらず虚偽表示は成立しない。

4) 当事者が無効を主張しないときは、悪意の第三者以外は誰でも無効を主張しうる。

5) 虚偽表示の無効を主張する場合の第三者の善意・悪意については、その者が利害関係に入った時を基準とし、過失の有無を問わない。

■解説

1) 誤り。判例(大決大正15・9・4)は、要物契約について物の授受がない場合にも虚偽表示の規定の適用を認めている。我妻・総則289−299頁。

2) 誤り。虚偽表示の撤回については、「虚偽表示の外形をとり除いて善意の第三者の生ずることを防止」(我妻・総則294頁)しなければならないとされており、合意のみで虚偽表示を撤回することはできない。

3) 誤り。虚偽表示は、相手方のない単独行為には適用されないが、相手方のある単独行為(e.g.債務免除)には適用がある。我妻・総則294頁。

4) 誤り。第三者(悪意であるか否かを問わず)であれば、虚偽表示による無効を主張できるとされている。但し善意の第三者に対しては、当事者ばかりでなく他の第三者も無効を主張できない(民法第94条2項)。我妻・総則292頁参照。

5) 正しい。判例である(大判昭和12・8・10)。尚近時は民法第94条2項にいう「第三者」は、善意ばかりでなく無過失でなければいけないとする説(四宮・星野・内田等)が有力になっている点は注意しておきたい。

■錯誤(地方上級試験)

錯誤(民法95条)に関する記述として、判例・通説に照らして妥当なものは、次のうちどれか。

1) 要素の錯誤による意思表示の無効は、表意者が無効を主張しない限り、第三者は原則としてその無効を主張することはできない。

2) 他人物の売買、賃貸借は、常に要素の錯誤を形成し、その法律行為は無効である。

3) 意思表示に要素の錯誤がある場合には、それが表意者の重過失に基づくである場合であっても、表意者は意思表示の無効を主張することができる。

4) 内心に秘められた動機に錯誤があるときは、それに基づく意思表示は無効となる。

5) 人の身分・資産に関する錯誤は、それが表示されていると否とにかかわらず、要素の錯誤となる。

■解説

1) 正しい。「錯誤無効の主張は、原則として、表意者のみが主張できる」(前掲内田73頁)。そのため錯誤無効は、取消的無効などとよばれる。

2) 誤り。他人物の売買・賃貸借は無効ではなく有効とされている(民法第560条、561条、559条)。

3) 誤り。表意者に重過失がある場合には、錯誤無効の主張ができない(民法第95条但書)。

4) 誤り。動機の錯誤については、動機が表示されない限り、錯誤の規定は適用にならない(大判大正6・2・24)。我妻・総則297−298頁。

5) 誤り。本肢のような錯誤は、多くの場合動機の錯誤にとどまる。我妻・総則300−301頁。

■詐欺(地方上級試験)

民法上の詐欺による意思表示に関する記述として正しいものは、次のうちどれか。

1) 欺罔行為は積極的なものであるを要し、沈黙がこれに当たることはありえない。

2) 詐欺をすることを目的とする契約、例えば甲が書類を詐取したら乙が礼金を払うといった契約は、詐欺による契約として無効である。

3) 詐欺による売買契約が取消された場合、売主の代金返還義務と買主の目的物返還義務とは同時履行の関係に立つ。

4) 詐欺による契約であることが民法上確定した場合、その契約は取消を待たずに当然に無効となる。

5) 詐欺を理由とする契約取消が第三者にも対抗できる場合、表意者は欺罔者に対し、不法行為に基づく損害賠償を求めることはできない。

■解説

1) 誤り。沈黙も欺罔行為となりうる。例えば「相手方の不知を利用し、沈黙によって錯誤に陥れる」場合も欺罔行為となる(我妻・総則309頁)。

2) 誤り。本肢のような場合は、公序良俗違反(民法第90条)によって無効となろう。

3) 正しい。最判昭和47・9・7。

4) 誤り。詐欺による意思表示は、無効ではなく取消すことができる(民法第96条1項)。

5) 誤り。欺罔行為は違法性を有する(我妻・総則310頁)ので、不法行為を理由とした損害賠償請求もなしうる。