■公務員試験過去問解説(行政法、行政事件訴訟法5)

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■訴えの利益(国税専門官試験〔2002年〕)

行政訴訟に関する次の記述のうち、妥当なのはどれか

1) 建築基準法に基づく建築確認には、それを受けなければ建築工事を行うことができないという法的効果が付与されているにすぎないから、当該工事が完了した場合には、建築確認の取消しを求める訴えの利益は失われるとするのが判例である。

2) 取消訴訟の原告適格は、個々の法律の趣旨・目的に照らし、個々人の個別的利益が法律上保護されているかどうかによって判断されるのではなく、違法な行政処分により原告が受けた不利益が事実上保護に値するかどうかによって判断されるべきであるとするのが判例である。

3) 土地改良法に基づく土地改良事業施行認可処分がなされ、その後土地改良事業の工事が完了した場合においては、原状回復が、物理的には不可能であるとはいえないが、社会的・経済的損失の観点からみて社会通念上不可能であるから、当該認可処分の取消しを求める訴えの利益は失われるとするのが判例である。

4) 行政不服審査法に基づく不服申立てが棄却された場合には、原処分の取消訴訟と棄却裁決の取消訴訟がいずれも提起することができ、後者においては原処分の違法を主張して裁決の取消しを求めることもできる。

5) 国民健康保険事業に関し、保険者である市が行った保険給付等に関する処分を県国民健康保険審査会が裁決で取り消した場合、市が処分者たる行政庁としての性格のほかに国民健康保険事業を経営する権利義務の主体たる地位を有するから、市には当該裁決の取消訴訟の原告適格が認められるとするのが判例である。

■解説

1) 正しい。最判昭和59年10月26日。塩野宏『行政法U』第6版(2019年、有斐閣)150頁、櫻井敬子−橋本博之『行政法』第5版(2016年、弘文堂)292頁。

2) 誤り。「取消訴訟の原告適格は、個々の法律の趣旨・目的に照らし、個々人の個別的利益が法律上保護されているかどうかによって判断される」というのが判例の基本的立場である(法律上保護された利益説。最判昭和53年3月14日、最判昭和57年9月9日)。前掲塩野133頁以下、櫻井他282頁以下。

3) 誤り。取消判決により原状回復が困難な場合、訴えの利益をなしとする下級審の判決もあるが、この場合は、違法宣言や損害賠償の便宜を考慮すると、事情判決によるべきと解されている。前掲塩野153−154頁、櫻井他292−293頁。判例もこの場合訴えの利益を肯定する(最判平成4年1月24日)。

4) 誤り。裁決の取消訴訟で「原処分の違法を主張」ことはできず、これをする場合は原処分の取消訴訟を提起せねばならない(原処分主義。行政事件訴訟法10条2項)。前掲塩野94頁、櫻井他263頁。

5) 誤り。市と県国民健康保険審査会の関係は、前者が後者の指揮監督に服する下級行政庁と上級行政庁という関係にあり、後者の裁決に前者が拘束されるというのが制度上予定されており、前者が当該裁決を争うことを法は認めていないとして、市の原告適格を否定するのが判例である(最判昭和49年5月30日)。