■公務員試験過去問解説(憲法、表現の自由1)

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■違憲審査基準(国家公務員試験1種〔1991年〕)

表現の自由の制限に対する違憲審査基準に関する次の記述のうち、妥当なのはどれか。

1) 「二重の基準論」によれば、表現の自由は人権体系の中でも優越的地位を占めるから、表現の自由の制限立法と他の自由、ことに経済的自由の制限立法とではその合憲性審査の基準を異にすべきで、前者に対しては後者に対してよりも厳しい審査基準が適用されなければならないが、合憲性の推定までが排除されることはない。

2) 「明白かつ現在の危険の原則」によれば、表現行為を規制しうるのは当該表現行為によってもたらされる実体的害悪の内容が明白で、かつ、その害悪が現実に発生することを要するから、ある表現行為をその有する危険性のゆえに規制することは許されない。

3) 「LRAの基準」によれば、ある目的を達成するため法令の採っている表現行為に対する規制手段よりもより制限的でない手段によって同じ目的を達成できると認められる場合には、当該法令は違憲とされるが、裁判所がより制限的でない手段が何であるかを具体的に特定することができない場合は、この基準により当該法令を違憲とすることはできない。

4) 「明確性の理論」によれば、表現の自由を制限する法令の文言が漠然としており不明確である場合には、当該法令がどのように厳格に限定して解釈され適用されたとしても、恣意的な法適用を招く危険と国民の権利行使への萎縮抑制効果の存在が払拭されない限り、当該法令は文面上無効とされなければならない。

5) 「過度の広汎性の理論」によれば、法令がある種の人権について合憲的に規制しうる範囲を超えて包括的な形で規制している場合は、当該法令の規定を文面上無効とすべきであるとされる。ことに優越的地位をもつ表現の自由を規制する法令については、限定解釈によって規制対象を合憲的に規制しうる行為に限定することが可能であっても、法の無効宣言を避けることが許されることはない。

■解説

1) 誤り。「二重の基準論」によれば、経済的自由の制限立法については合憲性の推定(立法事実の存在の推定)が働くが、精神的自由の制限立法については合憲性の推定が排除されるとする。芦部信喜『憲法学U』(1994年、有斐閣)215、235頁。佐藤幸治『日本国憲法論』(成文堂、2011年)663頁。

2) 誤り。「明白かつ現在の危険の原則」によれば、ある表現行為が「近い将来、ある実質的害悪をひき起す蓋然性が明白」であること、この害悪が「きわめて重大」でその発生が「時間的に切迫」していること、規制手段がこの害悪を避けるのに「必要不可欠」であるという要件が証明された場合、当該表現を規制し得る。即ち害悪が現実的に発生することまで、この原則は要求していない。前掲芦部200頁。

3) 誤り。「LRAの原則」によれば、表現行為を規制する公権力側が、「より制限的でない他の選びうる手段を利用できないこと」を証明する責任を負うのであって、裁判所が「より制限的でない手段」を特定する必要はない。前掲芦部202頁。

4) 正しい。前掲芦部197頁、佐藤259頁。

5) 誤り。 「過度の広汎性の理論」を前提としても、「限定解釈によって規制対象合憲的に規制しうる行為に限定することが可能」があれば、問題となっている法令の違憲判断を避け得る。前掲芦部197、371頁、佐藤260−261頁。