■公務員試験過去問解説(憲法、刑事手続2)

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■適正手続の保障(特別区〔2013年〕)

日本国憲法に規定する人身の自由に関する記述として、最高裁判所の判例に照らして、妥当なのはどれか。

1) 旧関税法は、犯罪に関係ある船舶、貨物等が被告人以外の第三者の所有に属する場合にもこれを没収する旨を規定しており、この規定によって第三者に対し告知、弁解、防御の機会を与えることなく、その所有物を没収することは、適正な法律手続によるものであり、法定手続の保障を定めた憲法に違反しない。

2) 黙秘権に関する憲法の規定は、何人も自己が刑事上の責任を問われるおそれがある事項について供述を強要されないことを保障したものと解すべきであり、旧道路交通取締法施行令が、交通事故発生の場合において操縦者に事故の内容の報告義務を課しているのは、その報告が自己に不利益な供述の強要に当たるため、憲法に違反する。

3) 刑事被告人が迅速な裁判を受ける権利を保障する憲法の規定は、審理の著しい遅延の結果迅速な裁判を受ける被告人の権利が害せられたと認められる異常な事態が発生した場合には、当該被告人に対する手続の続行を許さず、その審理を打ち切るという非常救済手段がとられるべきことをも認めている趣旨の規定である。

4) 憲法の定める法定手続の保障は、直接には刑事手続に関するものであるが、行政手続についても、行政作用に対する人権保障という観点から、当然にこの保障が及ぶため、行政処分を行う場合には、その相手方に事前の告知、弁解、防御の機会を必ず与えなければならない。

5)  刑罰法規があいまい不明確のゆえに憲法の定める法定手続の保障に違反するかどうかは、通常の判断能力を有する一般人の理解において、具体的場合にその適用を受けるものかどうかの判断を可能ならしめるような基準が読みとれるかどうかによって決定すべきであり、公安条例の交通秩序を維持することという規定は、犯罪構成要件の内容をなすものとして不明確なため、違憲である。

■解説

1) 誤り。旧関税法による、告知の機会等を付与せず第三者の所有物を没収する行為を違憲としたのが判例である(第三者所有物没収事件〔最大判昭和37年11月28日〕)。芦部信喜(高橋和之補訂)『憲法』第5版(2011年、岩波書店)236頁、佐藤幸治『日本国憲法論』(成文堂、2011年)332頁。

2) 誤り。自己負罪の拒否(38条1項)と交通事故の報告義務との関係は如何。判例は、報告を要求される事故の内容には刑事責任を問われ得る事故の原因等は含まれておらず、また行政上の目的であることを理由に、当該義務を合憲と判断している(最大判昭和37年5月2日)。前掲芦部244頁、佐藤347頁。

3) 正しい。高田事件(最判昭和47年12月20日)。前掲芦部242頁、佐藤342頁。

4) 誤り。31条は直接には刑事手続についての規定であるが、同条と行政手続の関係如何。行政手続は刑事手続とは異なるという理由のみで31条の保障外とするべきではない。但し行政手続に31条の保障が及ぶ場合でも、行政手続は刑事手続と性質が異なり多種多様なので、行政処分にあたり常に事前の告知等を付与することは必要でないというのが判例である(最大判平成4年7月1日)。前掲芦部237頁、佐藤193頁。

5) 誤り。一般人の理解において読み取れるかどうか決定すべきという点は正しいが、「交通秩序を維持すること」という規定は、通常の判断能力を有する一般人であれば秩序維持についての基準を読み取ることは可能として、当該公安条例の規定を合憲とした(徳島市公安条例事件〔最大判昭和50年9月10日〕)。前掲芦部198頁、佐藤259頁。