■公務員試験過去問分析(憲法、司法権の意味と範囲1)

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■司法権の限界(国家公務員試験1種〔2007年〕)

司法権に関するア)−オ)の記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみをすべて挙げているのはどれか。

ア) 自律的な法規範を有する社会ないし団体にあっては、当該規範の実現を内部規律の問題として自治的措置に任せ、必ずしも裁判による解決を適当としないものがあり、地方議会議員に対する出席停止の懲罰議決はこれにあたるが、議員の除名処分については司法審査の対象となる。

イ) 政党は、結社の自由に基づき任意に形成される政治団体であり、かつ、議会制民主主義を支える極めて重要な存在であるから、高度の自主性と自律性を与えて自主的に組織運営をなし得る自由を保障しなければならず、政党が党員に対してする処分については、司法審査の対象とならない。

ウ) 司法権は、当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争につき、法の客観的な意味と解されるところに従って当該紛争を解決確定する作用であると解され、訴訟が具体的な権利義務ないし法律関係に関する紛争の形式をとっている限りは、裁判所法第3条にいう「法律上の争訟」に当たり、司法審査の対象となる。

エ) 宗教法人の機関である代表役員兼責任役員の地位を有する否かついて争いがある場合で、寺院の住職のような本来宗教団体内部における宗教活動上の地位にある者が当該宗教法人の規則上当然に代表役員兼責任役員となるとされているときは、裁判所は、特定人が当該宗教法人の代表役員兼責任役員であるかどうかを審理、判断する前提として、その者が住職選任の手続上の準則に従って選任されたかどうか、また手続上の準則が何であるかに関して、審理、判断することができる。

オ) 大学は、国公立であると私立であるとを問わず、一般市民社会とは異なる特殊な部分社会を形成しており、単位授与認定といった大学の内部的な問題については、大学の自主的、自律的な判断に委ねられるべきものであり、裁判所の司法審査の対象となることはない。

1) ア)、イ)
2) ア)、エ)
3) イ)、エ)
4) イ)、ウ)
5) ウ)、オ)

■解説

ア) 正しい。最大判昭和35年10月19日。除名については「市民法秩序につながる問題である」ので司法審査の対象となる。芦部信喜(高橋和之補訂)『憲法』第5版(2011年、岩波書店)335頁、佐藤幸治『日本国憲法論』(成文堂、2011年)594頁。

イ) 誤り。政党によるその党員に対する処分が一般的に司法審査の対象から除かれるわけではない。当該処分が一般市民法秩序と直接関係しない内部的問題である限り裁判所の審査は及ばず、一般市民としての権利侵害がある場合でも、政党が自律的に定めた規範に照らし、処分が適正な手続に則ってなされたか否かという点についてのみ当否を審査するというのが判例である(共産党袴田事件〔最判昭和63年12月20日〕)。前掲芦部336頁、前掲佐藤477頁。

ウ) 誤り。ここでいう「紛争の形式」をとっていても、当該事件の判断に「信仰の対象の価値又は宗教上の教義に関する判断」が必要不可欠であり、訴訟の争点や当事者の主張立証もこの判断に関するものが核心となっている場合は、実質的には、法令の適用による終局的な解決が不可能なのであって、裁判所法3条にいう法律上の争訟に該当しないというのが判例である(板まんだら事件〔最判昭和56年4月7日〕)。前掲芦部331頁、前掲佐藤596頁。

エ) 正しい。本門寺事件(最判昭和55年4月10日)である。前掲佐藤596頁。

オ) 誤り。大学の単位授与行為は、それが「一般市民法秩序と直接の関係を有するものであることを肯定するに足りる特段の事情のない限り」、純然たる大学の内部の問題として自主的に判断されるべきであり、司法審査の対象にならないというのが判例である(富山大学事件〔最判昭和52年3月15日〕)。前掲芦部336頁、前掲佐藤594−595頁。

よって正解は2)のア)、エ)である。