■公務員試験過去問解説(憲法、公共の福祉論)

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■公共の福祉論(国家公務員試験試験1種〔2001年〕)

憲法第12条、第13条等の規定する「公共の福祉」に関する考え方として、次の3説がある。

T) 基本的人権はすべて「公共の福祉」によって制約される。憲法第12条及び第13条の規定する「公共の福祉」は人権の外に在って、これを制約することのできる一般的な権利である。

U) 「公共の福祉」による制約が認められる人権は、その旨が明文で定められている経済的自由権及び国家の積極的施策によって実現される社会権に限られ、それ以外の自由権は、権利が社会的なものであることに内在する制約に服するに止まる。憲法第12条及び第13条は訓示的な規定であるにとどまり、同条の規定する「公共の福祉」は、人権制約の根拠とはなり得ない

V) 「公共の福祉」とは、人権相互の矛盾、衝突を調整するための実質的公平の原理であり、この意味での「公共の福祉」は、実際に憲法の条文に規定されているか否かにかかわらず、全ての人権に論理必然的に内在している。この意味での「公共の福祉」は、自由権を各人に公平に保障するための制約を根拠付ける場合には必要最小限度の規制のみを認め、社会権を実質的に保障するために自由権の制約を根拠付ける場合には必要な限度の制約を認めるものとして働く。

上記の各説に対しては、次のア)−エ)のような批判があるが、上記の各説とこれに対応する批判の組合わせとして、妥当なのはどれか。

ア) この説によれば、例えば「知る権利」がいかなる制約に服するか判別することが困難となるおそれがある。

イ) この説によれば、法律による人権制限が安易に肯定されるおそれがある。

ウ) この説によれば、例えば「肖像権」を憲法上の権利として位置付けることが困難となるおそれがある

エ) この説によれば、依然として、個々の人権を制約する立法の合憲性を判定する具体的基準が必ずしも明確にならないおそれがある。

T説 U説 V説
1) アイ エ ウ
2) ウ ア イエ
3) イ アウ エ
4) アエ イ ウ
5) エ アウ イ

■解説

上記の学説は、T−V説の順に「一元的外在制約説」、「内在・外在二元的制約説」、「一元的内在制約説」となっている。芦部信喜(高橋和之補訂)『憲法』第5版(2011年、岩波書店)99頁以下、佐藤幸治『日本国憲法論』(成文堂、2011年)132頁以下。

ア) U説への批判である。自由権と社会権の区別が相対化しつつあるのに、自由権を内在的制約、社会権を外在的制約と「画然と分ける」点が批判される。特に「知る権利」のような自由権と社会権両方の側面を有する権利の制約を考える際に問題となる。前掲芦部100頁。

イ) T説への批判である。T説は、公共の福祉を公益とか公共の安寧秩序といった「最高的な抽象概念」でとらえるため、旧憲法下の「法律の留保」のような法律による安易な人権制約につながるという批判がなされている。前掲芦部99頁、佐藤132頁。。

ウ) U説への批判である。U説は13条を訓示的、倫理的な規定とするが、それでは13条を「新しい人権」の根拠たる「包括的な人権条項」と解釈できなくなるという批判がある。前掲芦部100頁、佐藤133頁。

エ) V説への批判である。V説を前提としつつ「立法の合憲性を判定する具体的基準」を明らかにしようとしたのが「二重の基準論」である。前掲芦部101、103頁、

よって正解は3)となろう。