■公務員試験過去問解説(憲法、経済的自由権3)

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■財産権(国家公務員2種試験〔2008年〕)

財産権の保障に関するア)−オ)の記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみをすべて挙げているのはどれか。

ア) 憲法第29条第1項は、「財産権は、これを侵してはならない。」と規定し、私有財産制度を保障しているのみではなく、社会的経済的活動の基礎をなす国民の個々の財産権につき、これを基本的人権として保障している。

イ) 憲法第29条第2項は、「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」と規定しており、私有地に対する個人の権利の内容を法律によらず条例で規制することは同項に違反する。

ウ) 土地収用法上の収用における損失の補償については、収用の前後を通じて被収用者の財産価値を等しくならしめるような保障をなすべきであり、金銭をもって補償する場合には、被収用者が近傍において被収用地と同等の代替地等を取得することを得るに足りる金額の補償を要する。

エ) 財産権について、憲法は正当な補償に関して規定するのみで、補償の時期については規定していないが、補償が財産の供与と交換的に同時に履行されるべきことは、憲法の保障するところである。

オ) ある法令が財産権の制限を認める場合に、その法令に損失補償に関する規定がないからといって、その制限によって損失を被った者が、当該損失を具体的に主張立証して、直接、憲法第29条第3項を根拠にして保障を請求する余地が全くないとはいえない。

1) ア)、イ)
2) ア)、ウ)、オ)
3) ア)、オ)
4) イ)、ウ)、エ)
5) ウ)、エ)

■解説

ア) 正しい。財産権(29条1項)は、国民の個別財産権と制度的保障としての私有財産制との両者を保障する(森林法共有林分割制限事件〔最大判昭和62年4月22日〕)。芦部信喜(高橋和之補訂)『憲法』第5版(2011年、岩波書店)225頁、佐藤幸治『日本国憲法論』(成文堂、2011年)310−311頁。

イ) 誤り。条例による財産権の制限は認められる、という説が現在では定着している。前掲芦部229頁、佐藤565−566頁。

ウ) 正しい。最判昭和48年10月18日である。なお最大判昭和28年12月23日(農地改革事件)と比較せよ。前掲芦部232−233頁、佐藤319−320頁。

エ) 誤り。最大判昭和24年7月13日。

オ) 正しい。最大判昭和43年11月27日。直接請求権発生説。前掲芦部231頁、佐藤318頁、

よって正解は2)となろう。

■財産権(国家公務員1種試験〔2010年〕)

財産権の保障に関するア)−オ)の記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみをすべて挙げているのはどれか。

ア) 憲法第29条第2項は、財産権の内容は「法律でこれを定める」と規定しているから、地方公共団体が私有地に対する個人の権利の行使を法律によらずに条例のみで規制することは、同項の規定に違反する。

イ) 憲法第29条第3項にいう「公共のために用ひる」とは、直接公共の用に供するため私有財産を収用又は制限する場合のみならず、特定の個人が受益者となるが収用全体の目的が公共の利益のためである場合も含まれるのであり、国による土地の買収において、買収された土地が特定の個人に売り渡されるとしても、そのことのみをもって当該買収の公共性は否定されない。

ウ)  土地の形状の変更に制限を課す法令の規定に損失補償に関する定めがない場合、当該規定はあらゆる場合において一切の損失補償を否定していると解されるから、当該規定は、憲法第29条第3項の規定に反する。

エ) 法律でいったん定められた財産権の内容を事後の法律で変更しても、その変更が当該財産権に対する合理的な制約として容認されるべきものである限り、これをもって違憲の立法ということはできない。

オ) ある河川付近の土地に、河川管理上支障のある事態の発生を事前に防止することを目的とした規制が新たに課されたため、その土地の賃借料を支払い、労働者を雇い入れ、相当の資本を投入して砂利採取業を営んできた者が、以後これを営み得なくなり、それにより相当の損失を被ったとしても、当該規制は公共のために必要な制限であり、一般的に当然に受忍すべきものとされる制限の範囲を超えるものではないから、損失補償を請求することはできない。

1) ア)、ウ)
2) ア)、オ)
3) イ)、ウ)
4) イ)、エ)
5) エ)、オ)

■解説

ア) 誤り。憲法29条2項は、財産権の内容を「法律」で定めるとしているが、財産権を「条例」で制約することは認められるか。これについては、条例が地方公共団体の議会において民主的な手続により定められる法であることを理由として、肯定されている(奈良県ため池条例事件〔最大判昭和38年6月26日〕)。条例による財産権の規制は、「法律の範囲内」(94条)の下で多数行われており「憲法上の疑義は事実上解消している」(前掲芦部229頁)。前掲佐藤565−566頁。

イ) 正しい。前掲芦部230頁、佐藤316頁。

ウ) 誤り。法令上補償に関する規定を欠く場合であっても、直接憲法29条3項を根拠にして損失補償の請求ができると解されている(最大判昭和43年11月27日)。前掲芦部231頁、佐藤318頁。

エ) 正しい。法律で定められた財産権の内容を、事後の法律で変更しても、それが公共の福祉(29条2項)に適合するようにされたものである限り、違憲の立法ということができないというのが判例(最大判昭和53年7月12日)である。

オ) 誤り。判例は、ここでいう相当の損失につき、「特別の犠牲を課したものとみる余地が全くないわけではなく」、事業者が被った「現実の損失については、その補償を請求することができるものと解する余地がある」(最大判昭和43年11月27日)としている。

よって正解は4)となろう。