■公務員試験過去問解説(行政上の法律関係)

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■行政上の法律関係(国家公務員試験1種〔2010年〕)

行政上の法律関係に関する次の記述のうち、判例に照らし、妥当なのはどれか。

ア) 普通地方公共団体の長が当該普通地方公共団体を代表して行う契約締結行為においては、当該長が相手方を代表又は代理することがあり、この場合、私人間における双方代理行為等による契約と同様に、当該普通地方公共団体の利益が害されるおそれがあり、地方自治法等は議会の関与などさまざまな規定を置いていることから、このような弊害の除去については、もっぱら地方自治法等の規定が適用され、自己契約及び双方代理に関する民法第108条を適用・類推適用する余地はない。

イ) 国が公務員に対して負う安全配慮義務に違反したことに基づいて公務員が有する損害賠償請求権の消滅時効期間は、会計法第30条所定の5年と解すべきではなく、民法第167条1項所定の10年である。なぜなら、国が、公務員に対する安全配慮義務を懈怠し違法に公務員の生命、健康等を侵害して損害を受けた公務員に対し損害賠償の義務を負う事態は、その発生が偶発的であって多発するものとはいえないから、この義務につき、国の権利義務を早期に決済する必要などの行政上の便宜を考慮する必要はなく、また、国が義務者であっても、被害者に損害を賠償すべき関係は、公平の理念に基づき被害者に生じた損害の公正な填補を目的とする点において、私人相互間における損害賠償の関係とその目的性質を異にするものではないからである。

ウ) 地方公共団体が、道路を一般交通の用に供するために管理しており、社会通念上,当該道路が当該地方公共団体の事実的支配に属するものというべき客観的関係にあると認められる場合、自己のためにする意思をもって当該道路を所持するものということができるから、当該道路を構成する敷地について占有権を有する。しかし、道路に対する妨害行為を何度も行う者がいる場合に、その妨害を予防するため、この者を被告として占有保全の訴えを提起することはできない。なぜなら、この占有訴訟は、道路の適正な管理を目的として提起されており、実質的にみれば、行政権の主体として、法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであって法律上の争訟とは認められないからである

エ) 公営住宅の使用関係については、公営住宅法及びこれに基づく条例が特別法として民法及び借家法に優先して適用され、同法及び条例の規定によれば、公営住宅の使用関係には公の営造物の利用関係としての性格が認められており、事業主体は公営住宅の入居者を選択する自由を有さない。したがって事業主体には入居者を同法及び条例に基づかない形で退去させることはできず、いわゆる信頼関係の法理の適用もない。

1) イ)
2) エ)
3) ア)、ウ)
4) ア)、エ)
5) イ)、ウ)

■解説

ア) 誤り。市の事業として博覧会を開催するにあたり財団を設立したものの(代表=市長)、同財団の運営が赤字見込みとなったため、それを回避すべく市が財団から博覧会施設等を買い受ける契約が、双方契約を禁ずる民法108条に反するとして争われた事案である(最判平成16年7月13日)。これにつき最高裁は、当該契約に民法108条が類推適用され、更に市議会が市長の双方代理行為を追認した場合、民法116条の類推適用により当該契約の効果は市に帰属するとした。櫻井敬子−橋本博之『行政法』第5版(2016年、弘文堂)126−127頁。

イ) 正しい。最判昭和50年2月25日。塩野宏『行政法T』第5版(2009年、有斐閣)29頁、前掲櫻井他30頁。なお公立病院の診療から生じた債権の消滅時効期間は、民法170条1号により3年になるとされている(最判平成17年11月21日)。前掲塩野41頁、櫻井他29−30頁。

ウ) 誤り。最判平成18年2月21日。この場合地方公共団体が占有権を有するという説明は正しいが、この判例は後半部分の「しかし」以降については何も述べてはいない。前掲塩野226頁。

エ) 誤り。最判昭和59年12月13日。公営住宅法及び条例の規定によれば、事業主体は公営住宅の入居者を選択する自由を有さないが、事業主体と入居者の間の使用関係が確立された後は、両者間には信頼関係を基礎とする法律関係が生まれるので、入居者が法の定める明渡事由該当行為をしたとしても、信頼関係を破壊するとは認めがたい特段の事情のある場合、明渡を求めることができないとして、「信頼関係の法理」の適用を肯定したのが判例である。前掲櫻井他31頁。

正解は1)のイ)となろう。