■公務員試験過去問解説(行政法、行政裁量2)

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■行政裁量(地方公務員試験上級〔2008年〕)

行政裁量に関する記述として、通説に照らして、妥当なのはどれか

1) 要件裁量説は、便宜裁量と法規裁量を区別する基準として、行政行為の効果に着目し、行政庁の裁量はもっぱら行政行為の決定ないし選択に存在するとする考えで、国民に権利を付与する行為の決定は、法規裁量であるとする。

2) 裁量権収縮論は、規制行政に関して行政権を発動するかどうかの判断は行政庁の裁量判断にゆだねられるべきものであり、行政行為の発動の時期については、いかなる場合であっても行政庁に自由な選択の余地があるとする理論である。

3) 行政事件訴訟法は、行政庁の裁量処分については、裁量権の範囲を超えまたは裁量権の濫用があった場合に限り、裁判所はその処分を取り消すことができると定めている。

4) 裁量行為は、法規裁量行為と便宜裁量行為とに分けられ、便宜裁量行為については裁判所の審査に服するが、法規裁量行為については裁判所の審査の対象とすることはない。

5) 行政庁に行政裁量を認める裁量条項の執行に関して、裁量行為の不作為ないし権限不行使があっても、それは当不当の問題となるにとどまり、違法となることは一切ない。

■解説

1) 誤り。「行政行為の効果に着目し、行政庁の裁量はもっぱら行政行為の決定ないし選択に存在するとする考え」は要件裁量説ではなく、効果裁量説の説明である。この説は、@国民の権利自由を制限する処分につき便宜裁量を否定し、A国民の権利自由とは関係のない処分やB国民に権利利益を与える処分は便宜裁量を肯定した(美濃部三原則)。櫻井敬子−橋本博之『行政法』第5版(2016年、弘文堂)106頁。

2) 誤り。裁量権収縮論は、「裁量権が一定の条件下では収縮し、それがゼロに達した場合には権限行使の義務が生ずる場合がありうる」(前掲櫻井他112頁)という理論である。稲葉−人見−村上−前田『行政法』第4版(2018年、有斐閣)326頁。

3) 正しい。行政事件訴訟法30条。

4) 誤り。「法規裁量行為については裁判所の審査に服するが、便宜裁量行為は服さない」が正しい。前掲櫻井他106−107頁、稲葉他112頁。

5) 誤り。裁量条項の執行に関して、裁量行為の不作為ないし権限不行使の場合も違法となり得る。最判平成1年11月24日等。前掲櫻井他376頁以下、稲葉他3241頁以下。