■公務員試験過去問分析(国家賠償法1)

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■国家賠償法1条(国家公務員2種〔2000年〕)

国家賠償法1条が定めている責任の性質について、これを国自体の責任を認めたものとする説(A説)と公務員個人の負っている責任を国が代位したものとする説(B説)がある。次のア)−オ)の記述のうち、B説の根拠となっているものの組み合わせとして妥当なのはどれか。

ア) 国家賠償法1条1項は、加害公務員の故意・過失を問う要件はない。

イ) 国家賠償法1条1項は、「公務員に代わって」という文言がない。

ウ) 国家賠償法1条1項は、使用者の選任監督責任は問われない。

エ) 国家賠償法1条2項は、国の加害公務員に対する求償権を認めている。

オ) 国家賠償法1条1項は、「国又は公共団体が、これを賠償する責めに任ずる」と定めている。

1) ア)、イ)
2) イ)、ウ)
3) ウ)、エ)
4) エ)、オ)
5) ア)、オ)

■解説

国家賠償法1条の責任につき、自己責任説(A説)と代位責任説(B説。通説、判例)の対立がある。塩野宏『行政法U』第4版(2005年、有斐閣)269頁以下、櫻井敬子−橋本博之『行政法』第5版(2016年、弘文堂)363頁以下。

ア) 自己責任説の論拠である。代位責任説は、公務員の「故意、過失『責任』」の存在を前提とし、それを国が代位するという構成を取るが、自己責任説は公務員の主観的責任を前提としない。

イ) 自己責任説の論拠である。「公務員に代わって」という文言がないということは、代位責任説を否定するものといえる。

ウ) 代位責任説の論拠である。使用者(国、自治体)の責任を前提としないのが代位責任説である。

エ) 代位責任説の論拠である。公務員の責任が前提となっているからこそ、本来責任をとるべき公務員に対して求償できるという構成は、代位責任説になじむ。

オ) 自己責任説の論拠である。「国が…責めに任ずる」という文言どおり解釈すれば、国家賠償法は端的に国の自己責任を認めているということになる。

よって正解は3)となる。

■国家賠償法1条(国税専門官試験〔2006年〕)

国家賠償に関するア)−オ)の記述のうち、妥当なもののみをすべて挙げているものはどれか。

ア) 国家賠償責任を発生させる「公権力の行使」の「公権力」は、行政権に属する権力をさし、立法権及び司法権に属する権力は含まれない。

イ) 国家賠償責任を発生させる公務員の職務執行とは、行為の外形において職務執行と認めうべきものをいうのであるから、公務員が自己の利益を図る意図をもってする場合であっても、客観的に職務執行の外形を備える行為をして、それによって他人に損害を加えた場合には、国家賠償の対象となるとするのが判例である。

ウ) 行政処分が違法であることを理由として国家賠償の請求をするにあたっては、あらかじめ当該行政行為の取消または無効確認の判決を得なければならないものではないとするのが判例である。

エ) 公権力の行使により損害が発生し、国が賠償の責任を負う場合には、その損害を発生させた公務員個人も被害者に対して直接責任を負うとするのが判例である。

オ) 国家賠償法第1条第1項に基づいて国が賠償の責任を負うには、公権力の行使に当たる公務員が、職務を行うについて「故意又は過失」ではなく「故意又は重大な過失」によって違法に他人に損害を加えたことが必要である。

1) ア)、イ)
2) ア)、オ)
3) イ)、ウ)
4) ウ)、エ)
5) エ)、オ)

■解説

ア) 誤り。「公権力の行使」(1条1項)の「公権力」には、行政権ばかりでなく立法権(最判昭和60年11月21日)及び司法権も(最判昭和57年3月12日)も含まれる。前掲塩野285頁以下、櫻井他373頁以下。

イ) 正しい。最判昭和31年11月30日。外形標準説である。前掲塩野294−295頁、櫻井他367頁。

ウ) 正しい。最判昭和36年4月21日。塩野宏『行政法T』第5版(2009年、有斐閣)147−148頁、前掲櫻井他87頁。

エ) 誤り。判例は、公務員個人に対して直接損害賠償請求をできないとしている(最判昭和30年4月19日)。国家賠償法は公務員の個人責任を求償権の問題のみに限定している。塩野宏『行政法U』第4版(2005年、有斐閣)298頁、前掲櫻井他366頁。

オ) 誤り。国家賠償法1条1項の賠償責任の発生には、公務員の故意過失要件が必要である。故意又は重過失というのは、国又は公共団体が公務員に求償する場合の要件である(1条2項)。

よって正解は3)となろう。 

■国家賠償法1条(国家公務員試験1種〔2010年〕)

国家賠償法第1条に関するア)−オ)の記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみをすべて挙げているものはどれか。

ア) 医薬品の副作用による被害が発生した場合、厚生大臣(当時)が当該医薬品の副作用による被害の発生を防止するために薬事法上の権限を行使しなかったことは、同法の目的および厚生大臣に付与された権限の性質等に照らしその権限の不行使が著しく合理性を欠くとまではいえない場合でも、国家賠償法第1条第1項の規定の適用上違法となる

イ) 立法の内容または立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合や、国民に憲法上保障されている権利行使の機会の確保するために所要の立法措置をとることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合は、国会議員の立法行為または立法不作為は、国家賠償法第1条1項の適用上違法となる。

ウ) 公務員が、主観的に権限行使の意図で行った場合に限らず自己の利益を図る意図で行った場合でも、客観的に職務執行の外形を備える行為をし、これによって他人に損害を加えたときは、国家賠償法第1条第1項にいう「その職務を行うについて」の要件を満たす。

エ) 国または地方公共団体の公務員による一連の職務行為がその過程において他人に被害を生じせしめた場合において、それが具体的にどの公務員のどのような違法行為によるものであるかを特定することができないときは、加害行為を特定することができないから、国または地方公共団体は国家賠償法第1条第1項の責任を負うことはない。

オ) 国家賠償法第1条第1項にいう「公権力の行使」とは、国または地方公共団体による優越的な意思の発動たる作用と解するのが正当であり、公立学校における教師の教育活動は、教師が児童または生徒に対して優越的な意思を発動する性質を有するものではないから、同項の「公権力の行使」には当たらない。

1) ウ)
2) オ)
3) ア)、エ)
4) ア)、オ)
5) イ)、ウ)

■解説

ア) 誤り。不作為の違法が問題となる。判例は、ここでいう「権限の不行使」を以てただちに違法とするのではなく、当時の医学薬学的見地の下、大臣に与えられた権限等の性質に照らして、権限の不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠く場合に違法になるという判断をした(最判平成7年6月23日)。前掲塩野278頁、櫻井他376−377頁。

イ) 正しい。在外国民選挙権訴訟判決(最大判平成17年9月14日)である。なお最判昭和60年11月21日。前掲塩野286頁、櫻井他375頁。

ウ) 正しい。最判昭和31年11月30日。外形標準説である。前掲塩野295頁、櫻井他367頁。

エ) 誤り。このような一連の職務行為から被害が発生した場合、「それが具体的にどの公務員のどのような違法行為に よるものであるかを特定することができなくても、右の一連の行為のうちのいずれかに行為者の故意又は過失による違法行為があつたのでなければ右の被害が生ずることはなかつたであろうと認められ、かつ、それがどの行為であるにせよこれによる被害につき行為者の属する国又は公共団体が法律上賠償の責任を負うべき関係が存在するときは、国又は公共団体は、加害行為不特定の故をもつて国家賠償法又は民法上の損害賠償責任を免れることができない」というのが判例である(最判昭和57年4月1日)。前掲塩野274−275頁、前掲櫻井他363−364頁。

オ) 誤り。国家賠償法1条1項の「公権力の行使」には、公立学校における教育活動も含まれる(広義説。最判昭和62年2月6日)。前掲塩野276頁、櫻井他365頁。

よって正解は5)となろう。