■公務員試験過去問題分析(行政法、警察・身分法)

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■警察概念(国家公務員試験2種〔1989年〕)

講学上の警察に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

1) 公共の安全と秩序に対し障害を生じ、または生ずる恐れがある場合、警察権は、原則として、この状態の発生について責任を有する者に対してのみ発動することができる。

2) 行列行進又は公衆の集団示威行動は、公共の福祉に反するような不当な目的または方法によらない限り、本来国民の自由とするところであるから、集団示威運動の取締に関する警察法規においては、これらの行動につき届出制を定めることは、憲法の趣旨に反し許されないとするのが判例である。

3) 経済の安定的・調和的発展を図るために、法規が特に積極的に公共の福祉を増進する目的で権限を与えている場合には、その権限の発動は警察の作用とするのが通説である。

4) 警察権は、司法権の前審として、民事上の不法行為や債務不履行に対して決定を下すことができる。

5) 警察違反の事実に対して、警察権の取りうるいくつかの具体的措置が認められている場合、警察違反の程度にかかわらず、その選択は警察権の自由裁量に委ねられている。

■解説

1) 正しい。これを警察責任の原則という。田中二郎『行政法下』全訂第2版(1983年、弘文堂)56−57頁。

2) 誤り。届出制ならともかく、一般的な許可制による集団示威行動の規制は許されない、とするのが判例である(新潟県公安条例事件〔最大判昭和29年11月24日〕)。芦部信喜(高橋和之補訂)『憲法』第3版(2002年、岩波書店)196頁、佐藤幸治『日本国憲法論』(成文堂、2011年)289頁以下。

3) 誤り。警察権の行使は、「直接に公共の安全と秩序を維持し、これに対する障害を未然に防止し、既然に鎮圧し除去する」という消極目的のためになされねばならず、これを超えて積極的に社会公共の福祉を増進する目的で行使された場合、それは最早警察の作用ということはできない。前掲田中56頁。

4) 誤り。民事上の不法行為や債務不履行等に対する救済はもっぱら司法権のつかさどるところであり、警察権の関与すべきところではない(民事上の法律関係不干渉の原則)。前掲田中59頁。

5) 誤り。このような場合自由裁量に委ねられるのではない。具体的措置がいくつかある場合、警察権の行使は必要最小限度の措置でなければならない(警察比例の原則)。前掲田中59−60頁。

■身分法関係(地方公務員試験上級〔2001年〕)

公務員に関する次の記述のうち、判例に照らし、妥当なのはどれか。

1) 公務員の勤務関係は特別権力関係であり、公務員には憲法21条の保障が及ばないから公務員の政治的行為を禁止することは憲法違反の問題を生じさせるものではない。

2) 安全配慮義務は雇用契約関係の下で認められる義務であるから公務員の勤務関係において生ずることがなく、したがって安全配慮義務に基づく損害賠償は認められない。

3) 地方公務員にかかる採用内定通知は採用発令手続を支障なく行うための準備手続としてなられる事実上の行為にすぎず、地方公共団体は採用内定者を職員として採用する法律上の義務を負わない。

4) 公務員の懲戒処分について懲戒事由に該当する行為の存否に関する判断は懲戒権者の裁量に委ねられているが、懲戒事由がある場合に懲戒処分を行うかどうかの判断についてまで懲戒権者の裁量に任せれているわけではない。

5) 公務員の勤務関係においては、組織秩序が重視されているから、一旦適正になされた退職願は免職辞令の公布前でも特別の事情がない限り撤回することはできない。

■解説

1) 誤り。公務員の勤務関係を特別権力関係ととらえる学説は、過去の遺物となっているといってよい。塩野宏『行政法T』第5版(2009年、有斐閣)35頁以下参照。

2) 誤り。一方の主体が国である公務員の勤務関係においても、安全配慮義務違反を理由として損害賠償請求を肯定するのが判例である(最判昭和50年2月25日)。櫻井敬子−橋本博之『行政法』初版(2007年、弘文堂)30頁。

3) 正しい。最判昭和57年5月27日の通りである。塩野宏『行政法V』(2001年、有斐閣)222頁。

4) 誤り。懲戒処分をするかどうか、についても、懲戒権者の裁量が認められるとするのが判例である(最判昭和52年12月20日)。前掲櫻井他111頁。

5) 誤り。免職辞令の交付前で、信義に反する特段の事情がない限り、退職願を撤回することは可能である(最判昭和34年6月26日)。塩野宏『行政法T』第5版(2009年、有斐閣)374頁。