■2020年行政書士試験・民法第8問(不法行為)

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■不法行為(2020−34)【判例問題】

医療契約に基づく医師の患者に対する義務に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

1) 過失の認定における医師の注意義務の基準は、診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準であるとされるが、この臨床医学の実践における医療水準は、医療機関の特性等によって異なるべきではなく、全国一律に絶対的な基準として考えられる。

2) 医療水準は、過失の認定における医師の注意義務の基準となるものであるから、平均的医師が現に行っている医療慣行とは必ずしも一致するものではなく、医師が医療慣行に従った医療行為を行ったからといって、医療水準に従った注意義務を尽くしたと直ちにいうことはできない。

3) 医師は、治療法について選択の機会を患者に与える必要があるとはいえ、医療水準として未確立の療法については、その実施状況や当該患者の状況にかかわらず、説明義務を負うものではない。

4) 医師は、医療水準にかなう検査および治療措置を自ら実施できない場合において、予後(今後の病状についての医学的な見通し)が一般に重篤で、予後の良否が早期治療に左右される何らかの重大で緊急性のある病気にかかっている可能性が高いことを認識できたときであっても、その病名を特定できない以上、患者を適切な医療機関に転送して適切な治療を受けさせるべき義務を負うものではない。

5) 精神科医は、向精神薬を治療に用いる場合において、その使用する薬の副作用については、その薬の最新の添付文書を確認しなくても、当該医師の置かれた状況の下で情報を収集すれば足りる。

■解説

【難易度】易しい。

1) 誤り。ここでの医療水準は、「全国一律に絶対的な基準として考えられるべきではなく、「医療機関の性格、その所在する地域の医療環境の特性等の諸般の事情を考慮すべき」とされている(最判平成7年6月9日)。藤岡−磯村−浦川−松本『民法W』第3版補訂(2009年、有斐閣)287頁。

2) 正しい。最判平成8年1月23日。前掲藤岡他287頁。

3) 誤り。医療水準として未確立の療法が問題となった事案である。当該療法について@実施医療機関が少なくないこと、A相当数の実施例、Bこれを実施した医師の間での積極的な評価、C患者に当該療法の適用可能性があること、C患者が当該療法に強い関心を抱いていること、これらを医師が知っているような場合、医師にはこの療法に付き説明する義務がある(最判平成13年11月27日)。

4) 誤り。「療水準にかなう検査および治療措置を自ら実施できない場合において、予後−中略−が一般に重篤で、予後の良否が早期治療に左右される何らかの重大で緊急性のある病気にかかっている可能性が高いことを認識できたとき」は、医師には高度な治療が可能な医療機関へ患者を転送し、適切な治療を受けさせる義務がある(最判平成15年11月11日)。相当程度の生存可能性それ自体保護法益と解することと、転送義務が問題となった事案であった。前掲藤岡他280頁。

5) 誤り。このような場合、精神科医は使用する薬の副作用について「常にこれを念頭において治療に当たるべきであり」、薬の「最新の添付文書を確認し、必要に応じて文献を参照するなど、当該医師の置かれた状況の下で可能な限りの最新情報を収集する義務がある」というのが判例である(最判平成14年11月8日)。 。