■2020年行政書士試験・憲法第4問

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■衆議院の解散(2020−6)【理論問題】

衆議院の解散に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

1) 衆議院議員総選挙は、衆議院議員の任期が満了した場合と衆議院が解散された場合に行われるが、実際の運用では、任期満了による総選挙が過半数を占め、解散による総選挙は例外となっている。

2) 内閣による衆議院の解散は、高度の政治性を有する国家行為であるから、解散が憲法の明文規定に反して行われるなど、一見極めて明白に違憲無効と認められる場合を除き、司法審査は及ばないとするのが判例である。

3) 最高裁判所が衆議院議員選挙における投票価値の不均衡について憲法違反の状態にあると判断した場合にも、内閣の解散権は制約されないとするのが政府見解であるが、実際には、不均衡を是正しないまま衆議院が解散された例はない。

4) 衆議院が内閣不信任案を可決し、または信任案を否決したとき、内閣は衆議院を解散できるが、この場合には、内閣によりすでに解散が決定されているので、天皇は、内閣の助言と承認を経ず、国事行為として衆議院議員選挙の公示を行うことができると解される。

5) 天皇の国事行為は本来、厳密に形式的儀礼的性格のものにすぎない、と考えるならば、国事行為としての衆議院の解散の宣言について内閣が助言と承認の権能を有しているからといって、内閣が憲法上当然に解散権を有していると決めつけることはできない、という結論が導かれる。

■解説

【難易度】難しい。正解となる選択肢が、行政書士試験のテキストでは触れないであろう「解散権の所在」(解散権論争)に関するものであっただけに、難しかったと思われる。

1) 誤り。「解散による総選挙」の方が原則である。佐藤幸治『日本国憲法論』(2011年、日本評論社)479頁参照。

2) 誤り。判例は、衆議院の解散を「統治行為」とし司法審査の対象から除外していものの(苫米地事件。最大判昭和35年6月8日)、「一見極めて明白に違憲無効と認められる場合を除き、司法審査は及ばない」としていない。「一見極めて明白に違憲無効と認められる場合を除き、司法審査は及ばない」としたのは、安保条約の合憲性が問題となった砂川事件である(最大判昭和34年12月16日)。芦部信喜(高橋和之補訂)『憲法』第5版(2011年、有斐閣)333−334頁、70頁、前掲佐藤644頁。

3) 誤り。ここで述べられたような衆議院の解散も存在する。最大判昭和58年11月7日→昭和58年12月総選挙(この選挙について最大判昭和60年7月17日)。前掲芦部141−142頁参照。

4) 誤り。衆議院の解散と同じく(7条3号)、総選挙の公示(同条4号)も天皇の国事行為なので、内閣の助言と承認なくして当該公示を行うことはできない(7条柱書)。

5) 正しい。国事行為が「形式的儀礼的性格のもの」であるなら、国事行為に対する「助言と承認」自体も「形式的儀礼的性格のもの」(単に形式的な解散行為をせよというお墨付き〔形式的根拠〕)にすぎない。よって7条は、内閣による解散権の「実質的根拠」にはならないと解することになる(解散権の根拠についての69条説。69条説では、内閣不信任決議可決か信任決議が否決された場合のみ、内閣は衆議院を解散できるとする)。前掲芦部49−50頁、佐藤477−478頁。これとの関連で7条説にも注意。