■2020年行政書士試験・行政救済法第8問

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■国家賠償法(2020−21)【判例問題】

国家賠償法に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

1) 宅地建物取引業法は、宅地建物取引業者の不正な行為によって個々の取引関係者が被る具体的な損害の防止、救済を制度の直接の目的とするものであるから、不正な行為をした業者に対する行政庁の監督権限の不行使は、被害者との関係においても、直ちに国家賠償法1条 1項の適用上違法の評価を受ける。

2) 建築基準法に基づく指定を受けた民間の指定確認検査機関による建築確認は、それに関する事務が行政庁の監督下において行われているものではないため、国家賠償法1条1項の「公権力の行使」に当たらない。

3) 公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法、または同法を引き継いだ公害健康被害補償法*に基づいて水俣病患者の認定申請をした者が水俣病の認定処分を受けた場合でも、申請処理の遅延により相当の期間内に応答がなかったという事情があれば、当該遅延は、直ちに国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受ける。

4) 裁判官がおこなう争訟の裁判については、その裁判の内容に上訴等の訴訟法上の救済方法で是正されるべき瑕疵が存在し、当該裁判官が付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したと認め得るような事情がみられたとしても、国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けることはない。

5) 検察官が公訴を提起した裁判において、無罪の判決が確定したとしても、そのことから直ちに、起訴前の逮捕や勾留とその後の公訴の提起などが国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるということにはならない。

(注)*公害健康被害の補償等に関する法律

■解説

【難易度】易しい。いずれの肢も著名判例からの出題であり、かなり易しい問題である。

1) 誤り。「権限不行使」が国家賠償責任を生じさせるには、「法が付与した権限の趣旨・目的に照らし、権限の不行使が著しく不合理であると認められる」事が必要である(宅地建物取引法事件〔最判平成1年11月24日〕)。塩野宏『行政法U』第6版(2019年、有斐閣)327頁。

2) 誤り。ここでの指定確認検査機関は、建築確認に係る建築物につき確認する権限を有する建築主事が配置された地方公共団体に該当するというのが判例(最決平成17年6月24日)である。国家賠償法1条1項にいう公務員は、身分法上の公務員に限定されず、公権力の行使を委ねられている民間人をも含み得る。櫻井敬子−橋本博之『行政法』第5版(2016年、弘文堂)366ー367頁参照。

3) 誤り。「相当の期間内に応答がなかったという事情」つまり処分が遅延したことにより、申請者は心の静謐を害される。そして、行政庁はこの損害を回避する条理上の作為義務を負うが、当該処分に必要とされる期間に比べさらに長期間遅延が続きかつ、通常の努力でこの遅延を回避できたのに、回避すべく努力しなかった場合、条理上の作為義務違反を生じ違法の評価を受けるというのが判例である(最判平成3年4月26日)。前掲櫻井他379頁。

4) 誤り。ここでいう瑕疵があったとしても国家賠償法1条1項の違法があったとは言えないが、「裁判官が付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したと認め得るような事情」がある場合は、同法1条1項の違法が認められるというのが判例である(最判昭和57年3月12日)。前掲塩野335頁。

5) 正しい。昭和53年10月20日。検察官の行為は結果ではなく、公訴提起事に検察官に対し定められる行為規範を基準として評価されるべきと考えられている(職務行為基準説)。前掲塩野337−338頁。