■2020年行政書士試験・法令記述式第3問

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■民法(2020−46)【判例問題】

以下の[設例]および[判例の解説]を読んで記述せよ。

[設例]
A所有の甲不動産をBが買い受けたが登記未了であったところ、その事実を知ったCが日頃Bに対して抱いていた怨恨(えんこん)の情を晴らすため、AをそそのかしてもっぱらBを害する目的で甲不動産を二重にCに売却させ、Cは、登記を了した後、これをDに転売して移転登記を完了した。Bは、Dに対して甲不動産の取得を主張することができるか。

[判例の解説]
上記[設例]におけるCはいわゆる背信的悪意者に該当するが、判例はかかる背信的悪意者からの転得者Dについて、無権利者からの譲受人ではなくD自身が背信的悪意者と評価されるのでない限り、甲不動産の取得をもってBに対抗しうるとしている。

上記の[設例]について、上記の[判例の解説]の説明は、どのような理由に基づくものか。「背信的悪意者は」に続けて、背信的悪意者の意義をふまえつつ、Dへの譲渡人Cが無権利者でない理由を、40字程度で記述しなさい。

■解説

【難易度】普通。

@ 民法177条の「第三者」概念。学説の主流は「背信的悪意者排除説」(なお不動産登記法5条参照)を採用する。一方判例は、当初第三者の概念に限定を加えてこなかったが、後に背信的悪意者排除説を採用するに至った(最判昭和31年4月24日等)。この説によれば、本問のBはCに対して登記なくして甲不動産の所有権を対抗し得る。

A では背信的悪意者Cからの転得者DとBの関係は如何。問題文にあるように、Dについては、DがBとの関係で背信的悪意者でなければ、177条の「第三者」に含まれるとされるが(最判平成8年10月29日)、上記のBとC、Dの違いはどう説明すべきか。

B この点については、Cが背信的悪意者のゆえに第三者にあたらないとされる場合でも、AC間の売買契約自体は有効であって(Cは所有権を取得する要件を具備している)、ただCは「信義則上Bの登記欠缺を主張し得ない」立場にある。そしてこれはCに属人的なものにすぎず、D自身がBとの関係で背信的悪意者と評価されない限り、Dは有効に所有権を取得でき、DB間は対抗関係に立つと解されている。本問の解答はこれをまとめることとなる。

正解は以下のようになろうか。
(背信的悪意者は)信義則上登記欠缺を主張する正当な利益がないというにすぎず、AC間の売買自体は有効だから。(44文字)

なおAC間の売買が公序良俗違反(90条)の場合、Dは所有権を取得し得ない。またCDの立場が逆の場合(CではなくDが背信的悪意者の場合)は争いがある。本問については、内田貴『民法T』第2版(1999年、東大出版会)433−436頁参照。