■2019年行政書士試験・民法第8問(不法行為)

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■不法行為(2019−34)【判例問題】

不法行為に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

1) 精神障害者と同居する配偶者は法定の監督義務者に該当しないが、責任無能力者との身分関係や日常生活における接触状況に照らし、第三者に対する加害行為の防止に向けてその者が当該責任無能力者の監督を現に行い、その態様が単なる事実上の監督を超えているなどその監督義務を引き受けたとみるべき特段の事情が認められる場合には、当該配偶者は法定の監督義務者に準ずべき者として責任無能力者の監督者責任を負う。

2) 兄が自己所有の自動車を弟に運転させて迎えに来させた上、弟に自動車の運転を継続させ、これに同乗して自宅に戻る途中に、弟の過失により追突事故が惹起された。その際、兄の同乗後は運転経験の長い兄が助手席に座って、運転経験の浅い弟の運転に気を配り、事故発生の直前にも弟に対して発進の指示をしていたときには、一時的にせよ兄と弟との間に使用関係が肯定され、兄は使用者責任を負う。

3) 宅地の崖地部分に設けられたコンクリートの擁壁の設置または保存による瑕疵が前所有者の所有していた際に生じていた場合に、現所有者が当該擁壁には瑕疵がないと過失なく信じて当該宅地を買い受けて占有していたとしても、現所有者は土地の工作物責任を負う。 

4) 犬の飼主がその雇人に犬の散歩をさせていたところ、当該犬が幼児に噛みついて負傷させた場合には、雇人が占有補助者であるときでも、当該雇人は、現実に犬の散歩を行っていた以上、動物占有者の責任を負う。

5) 交通事故によりそのまま放置すれば死亡に至る傷害を負った被害者が、搬入された病院において通常期待されるべき適切な治療が施されていれば、高度の蓋然性をもって救命されていたときには、当該交通事故と当該医療事故とのいずれもが、その者の死亡という不可分の一個の結果を招来し、この結果について相当因果関係がある。したがって、当該交通事故における運転行為と当該医療事故における医療行為とは共同不法行為に当たり、各不法行為者は共同不法行為の責任を負う。

■解説

【難易度】難しい。

1) 正しい。最判平成28年3月1日(JR東海事件)。潮見佳男『民法(全)』第2版(2019年、有斐閣)510頁。民法714条1項参照。

2) 正しい。715条の使用者責任が問題となる。同条の責任が成立するには、使用者と不法行為者との間に使用関係(雇用契約、労働契約等)があることを要するが、この使用関係は、必ずしも契約に基づくものでなくとも、実質的に使用者が被用者を指揮監督する関係があれば足りるとされている(実質的指揮監督関係。前掲潮見517頁)。そしてこの観点から兄弟間にもこの使用関係の成立を認めたのがこの判例(最判昭和56年11月27日)である。藤岡−磯村−浦川−松本『民法W債権各論』第3版補訂(2010年、有斐閣)309頁。

3) 正しい。最判昭和3年6月7日。なお、住宅建築会社からコンクリート擁壁に瑕疵がある住居を購入した者は、瑕疵がないと過失なく信じていた場合でも、当該擁壁から損害が発生した場合、責任を負わねばならないということも覚えておきたい(717条1項における所有者の責任は無過失責任である)。

4) 誤り。よってこれが正解である。占有補助者は、718条1項に言う「占有者」ではなく、占有補助者に過失があった場合は、占有者自身(飼主)が同条項の責任を追うべきものと解されている。前掲藤岡他331頁。

5) 正しい。最判平成13年3月13日。ここでは「共同の不法行為」(719条1項)、即ち不法行為関与者相互間に関連共同性があるか否かが問題になるが、これについては関与者相互の行為に客観的な関連共同の関係があれば足りる(「主観的」共同は不要)とされていることに注意。前掲藤岡他320−321頁。 【難易度】易しい。

ア) 正しい。婚姻届には「夫婦の称する氏」を記載しなければならないため(戸籍法74条1号)、これを欠く婚姻届は法令に反する届出として受理されないことになる(民法740条)。

イ) 誤り。夫婦が離婚した場合、婚姻により氏を改めたものが当然に復氏するのが原則だが(767条1項)、離婚の日より三ヶ月以内に戸籍法の定めに従い届けることにより、離婚の際に称していた氏を称することができる(767条2項)。

ウ) 正しい。751条1項。婚姻前の氏に復することが「できる」のである。

エ) 誤り。花子と太郎が離婚し、花子が復氏したため、子である一郎(嫡出子)は母と氏を異にする結果を生じている。この場合一郎は、家庭裁判所の許可を得て戸籍法の定めに従い届けることで、乙川性を称することができる(791条1項)。

オ) 誤り。養子は養親の姓を称するのが原則だが、婚姻により性を改めた者については、婚姻の際に定めた姓を称する(810条但書)。

よって正解は2)のアとウ)になろう。