■2019年行政書士試験・憲法第5問

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■司法権(2019−7)【判例問題】

動物愛護や自然保護に強い関心を持つ裁判官A氏は、毛皮の採取を目的とした野生動物の乱獲を批判するため、休日に仲間と語らって派手なボディペインティングをした風体でデモ行進を行い、その写真をソーシャルメディアに掲載したところ、賛否両論の社会的反響を呼ぶことになった。事態を重く見た裁判所は、A氏に対する懲戒手続を開始した。

このニュースに関心を持ったBさんは、事件の今後の成り行きを予測するため情報収集を試みたところ、裁判官の懲戒手続一般についてインターネット上で次の1)−5)の出所不明の情報を発見した。このうち、法令や最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

1) 裁判官の身分保障を手続的に確保するため、罷免については国会に設置された弾劾裁判所が、懲戒については独立の懲戒委員会が決定を行う。

2) 裁判官の懲戒の内容は、職務停止、減給、戒告または過料とされる。

3) 司法権を行使する裁判官に対する政治運動禁止の要請は、一般職の国家公務員に対する政治的行為禁止の要請よりも強い。

4) 政治運動を理由とした懲戒が憲法21条に違反するか否かは、当該政治運動の目的や効果、裁判官の関わり合いの程度の3点から判断されなければならない。

5) 表現の自由の重要性に鑑みれば、裁判官の品位を辱める行状があったと認定される事例は、著しく品位に反する場合のみに限定されなければならない。

■解説

【難易度】やや難しい。

1) 誤り。懲戒については裁判の形で裁判所がこれを行う。地方裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所の裁判官については、それらを管轄する高等裁判所が、最高裁判所、高等裁判所の裁判官については最高裁判所が行う(裁判官分限法3条)。弾劾については正しい(憲法64条、国会法125条)

2) 誤り。裁判官の懲戒の内容は、戒告又は1万円以下の過料とされる(裁判官分限法2条)。他の国家試験でも割とよく見られる肢である。

3) 正しい。裁判官は違憲審査権を有し、立法や行政の行為の適否を判断する権限を有しているため、特に政治的な勢力との間に一線を画す要請が強く、「裁判官に対する政治運動禁止の要請は、一般職の国家公務員に対する政治的行為禁止の要請より強いものというべき」というのが判例である(寺西判事補戒告事件〔最大決平成10年12月1日〕)。芦部信喜(高橋和之補訂)『憲法』第5版(2011年、有斐閣)273頁。 最大決平成10年12月1日4) 誤り。前記最高裁決定は、裁判官の政治活動の自由の制限(裁判所法52条1号)についての合憲性判定基準に付き、猿払事件(最大判昭和49年11月6日)で用いられた合理的関連性のテスト(「裁判官の積極的な政治運動」を禁止する「目的が正当であって、その目的と禁止との間に合理的関連性があり、禁止により得られる利益と失われる利益との均衡を失するものでない」なら憲法21条1項に違反しない)を用いて合憲としている。前掲芦部272−273頁。なお、この肢自体は目的効果基準をヒントに作ったものと思われる。

5) 誤り。「裁判官の品位を辱める行状」(裁判所法30条)は、本肢のように限定して解されるのではなく、公的私的を問わず「およそ裁判官に対する国民の信頼を損ね,又は裁判の公正を疑わせるような言動」と解するのが判例(最大決平成30年10月17日)である。