■2018年行政書士試験・法令科目多肢選択式第3問

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■行政法(2018−43)【判例問題】

次の文章は、地方公共団体の施策の変更に関する最高裁判所判決の一節である。空欄(ア)−(エ)に当てはまる語句を、枠内の選択肢(1−20)から選びなさい。

…(ア)の原則は地方公共団体の組織及び運営に関する基本原則であり、また、地方公共団体のような行政主体が一定内容の将来にわたって継続すべき施策を決定した場合でも、右施策が社会情勢の変動等に伴って変更されることがあることはもとより当然であって、地方公共団体は原則として右決定に拘束されるものではない。

しかし、右決定が、単に一定内容の継続的な施策を定めるにとどまらず、特定の者に対して右施策に適合する特定内容の活動をすることを促す個別的、具体的な勧告ないし勧誘を伴うものであり、かつ、その活動が相当長期にわたる当該施策の継続を前提としてはじめてこれに投入する資金又は労力に相応する効果を生じうる性質のものである場合には、右特定の者は、右施策が右活動の基盤として維持されるものと(イ)し、これを前提として右の活動ないしその準備活動に入るのが通常である。

このような状況のもとでは、たとえ右勧告ないし勧誘に基づいてその者と当該地方公共団体との間に右施策の維持を内容とする契約が締結されたものとは認められない場合であっても、右のように密接な交渉を持つに至った当事者間の関係を規律すべき(ウ)の原則に照らし、その施策の変更にあたってはかかる(イ)に対して法的保護が与えられなければならないものというべきである。

すなわち、右施策が変更されることにより、前記の勧告等に動機づけられて前記のような活動に入った者がその(イ)に反して所期の活動を妨げられ、社会観念上看過することのできない程度の積極的損害を被る場合に、地方公共団体において右損害を補償するなどの代償的措置を講ずることなく施策を変更することは、それがやむをえない客観的事情によるのでない限り、当事者間に形成された(イ)関係を不当に破壊するものとして違法性を帯び、地方公共団体の(エ)責任を生ぜしめるものといわなければならない。

そして、前記(ア)の原則も、地方公共団体が住民の意思に基づいて行動する場合にはその行動になんらの法的責任も伴わないということを意味するものではないから、地方公共団体の施策決定の基盤をなす政治情勢の変化をもってただちに前記のやむをえない客観的事情にあたるものとし、前記のような相手方の(イ)を保護しないことが許されるものと解すべきではない。
(最三小判昭和56年1月27日民集35巻1号35頁)

1) 信義公平 2) 私的自治 3) 公平 4) 信頼 5) 確約 6) 契約 7) 財産 8) 債務不履行 9) 不法行為 10) 団体自治 11) 平等 12) 刑事 13) 住民自治 14) 比例 15) 権利濫用禁止 16) 過失 17) 期待 18) 継続 19) 監督 20) 措置

■解説

【難易度】易しい。頻出判例である宜野座村工場誘致事件からの出題である。

ア) 13)「住民自治」。「地方公共団体が住民の意思に基づいて行動する場合」という箇所が手掛かりとなろう。憲法92条の「地方自治の本旨」には、住民自治(「地域住民がみずからの意思と責任によって行政活動を行うこと」)と団体自治(国から独立した地方公共団体がみずからの事務をみずからの責任で行うこと)の基本原理が含まれると解されている。櫻井敬子−橋本博之『行政法』第5版(2016年、弘文堂)47−48頁。

イ) 4)「信頼」。

ウ) 1)「信義公平」。民法1条2項の信義則は行政上の法律関係にも妥当するが、この信義則は、行政法の領域では「行政に対する私人の信頼を保護するという場面で問題となるため、『信頼保護原則』として議論されることが多い」(稲葉−人見−村上−前田『行政法』第4版〔2018年、有斐閣〕41頁)。前掲櫻井他24頁。

エ) 9)「不法行為」。判例は、「損害を補償するなどの代償的措置を講ずることなく施策を変更することは」、「違法性を帯び」、結果地方公共団体の「不法行為責任」を発生させるとしているが、本件は「『代償的措置』を講ずる義務自体に着目すると、一種の損失補償責任」の問題としても考えることができよう(前掲稲葉他43頁参照)。