■2018年行政書士試験・民法第3問(物権)

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■物権(2018−29)【判例問題】

Aが登記簿上の所有名義人である甲土地をBが買い受ける旨の契約(以下「本件売買契約」という。)をA・B間で締結した場合に関する次のア)−オ)の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア) 甲土地は実際にはCの所有に属していたが、CがAに無断で甲土地の所有名義人をAとしていた場合において、Aがその事情を知らないBとの間で本件売買契約を締結したときであっても、BはCに対して甲土地の引渡しを求めることができない。

イ) 甲土地はAの所有に属していたところ、Aの父であるDが、Aに無断でAの代理人と称して本件売買契約を締結し、その後Dが死亡してAがDを単独で相続したときは、Aは、Dの法律行為の追認を拒絶することができ、また、損害賠償の責任を免れる。

ウ) 甲土地が相続によりAおよびEの共有に属していたところ、AがEに無断でAの単独所有名義の登記をしてBとの間で本件売買契約を締結し、Bが所有権移転登記をした場合において、Bがその事情を知らず、かつ、過失がないときは、Bは甲土地の全部について所有権を取得する。

エ) 甲土地はAの所有に属していたところ、本件売買契約が締結され、B名義での所有権移転の仮登記がされた場合において、Aが甲土地をその事情を知らないFに売却し所有権移転登記をしたときは、Bは本登記をしない限りFに対して所有権の取得を対抗することができない。

オ) 甲土地はAの所有に属していたところ、GがAに無断で甲土地上に建物を築造し、その建物の所有権保存登記をした場合において、本件売買契約により甲土地の所有者となったBは、Gが当該建物の所有権を他に譲渡していたとしても、登記名 義がGにある限り、Gに対して当該建物の収去および土地の明渡しを求めることができる。

1) ア)、ウ)
2) ア)、オ)
3) イ)、ウ)
4) イ)、エ)
5) エ)、オ)

■解説

【難易度】やや難しい。

ア) 誤り。通謀がないため本来の虚偽表示の事案ではないが、民法94条2項の趣旨(権利外観法理)を考慮すると、C作出の虚偽の外観を信頼したBを保護するため同条項を類推適用できないかが問題となる。この肢の記述では微妙だが、Aに、A自身が虚偽の外観を作り出したに等しい落ち度があり、第三者Bが善意者であればCに対し土地所有権を対抗できるというのが判例である(最判昭和45年9月22日等)。山田−河内−安永−松久『民法T』第3版補訂(2007年、有斐閣)130頁。

イ) 誤り。「本人が無権代理人を相続した場合」の効果は如何。この場合、相続により無権代理は有効になるわけではなく、Aは、本人として無権代理の追認拒絶をできるが(最判昭和37年4月20日)、相続によりDの地位を相続している以上無権代理人としての責任(117条1項)を負うというのが判例である(最判昭和47年7月3日)。前掲山田他188頁。

ウ) 誤り。共同相続人の持分と登記の関係が問題となる。仮にAEの持分を均等とした場合、Eの「2分の1」の持分はBとの関係でどうなるか。この場合Eは、登記無くして自己の持分をBに対抗できるというのが判例である(最判昭和38年2月22日)。淡路−鎌田−原田−生熊『民法U』第2版(1994年、有斐閣)58頁。Bの登記はEの持分については無権利の登記だからである。

エ) 正しい。甲土地をめぐる@A→B、AA→Fという二重譲渡の事案である。例えば甲から乙が所有権移転請求権保全の仮登記を受けていた不動産を、さらに甲から丙が譲受け移転登記を受けた場合、乙の仮登記が本登記に改められると、乙の所有権取得が優先して丙に対抗し得るものになる。前掲淡路他77頁。つまりBは、仮登記のままで本登記に改めていない段階ではFに対抗できない。

オ) 正しい。「無権原で建てられた建物の実際の所有者と登記名義人が異なる場合」物権的返還請求権の相手方は誰になるか。この場合、判例は「建物の実際の所有者」に対し建物収去土地明渡請求をすべきとするが(最判昭和35年6月17日)、これではAが実際の所有者を探す負担を負うことになりかつGは所有権移転を口実に簡単に明渡義務を免れるという不都合を生ずる。そこで判例は、Gが「自ら所有権取得の登記をした場合」建物を譲渡してもその登記名義を保有する限り、Gは建物収去土地明渡義務を免れないとしている(最判平成6年2月8日)。前掲淡路他20−21頁。

よって正解はエ)、オ)の5)となろう。