■2018年行政書士試験・憲法第4問

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■選挙に関する基本原則(2018−6)【理論問題】

デモクラシーの刷新を綱領に掲げる政党Xは、衆議院議員選挙の際の選挙公約として、次のア)−エ)のような内容を含む公職選挙法改正を提案した。

ア) 有権者の投票を容易にするために、自宅からインターネットで投票できる仕組みを導入する。家族や友人とお茶の間で話し合いながら同じ端末から投票することもでき、身近な人々の間での政治的な議論が活性化することが期待される。

イ) 有権者の投票率を高めるため、選挙期間中はいつでも投票できるようにするとともに、それでも3回続けて棄権した有権者には罰則を科するようにする。

ウ) 過疎に苦しむ地方の利害をより強く国政に代表させるため、参議院が都道府県代表としての性格をもつことを明文で定める。

エ) 地方自治と国民主権を有機的に連動させるため、都道府県の知事や議会議長が自動的に参議院議員となり、国会で地方の立場を主張できるようにする。

この提案はいくつか憲法上論議となり得る点を含んでいる。以下の諸原則のうち、この提案による抵触が問題となり得ないものはどれか。

1) 普通選挙
2) 直接選挙
3) 自由選挙
4) 平等選挙
5) 秘密選挙

■解説

【難易度】普通。

ア) 「秘密選挙」が問題になる。秘密選挙とは「誰に投票したかを秘密にする制度」を言う(芦部信喜〔高橋和之補訂〕『憲法』第5版〔2011年、岩波書店〕256頁)。佐藤幸治『日本国憲法論』(成文堂、2011年)405頁。「お茶の間で話し合いながら同じ端末から投票する」と「誰に投票したか」が判明し得るため、この原則との関係で問題が生ずる。なお憲法15条4項参照。

イ) 「自由選挙」が問題になる。自由選挙とは「棄権しても罰金、公民権停止」等の「制裁を受けない制度」を言う(前掲芦部256頁)。「3回続けて棄権した有権者には罰則を科す」案はこの原則との関係で問題となる。前掲佐藤406頁。

ウ) 「平等選挙」が問題になる。平等選挙とは「選挙権の価値は平等、すなわち1人1票」(前掲芦部256頁)を原則とする制度を言う。前掲佐藤403頁。地方の利害の観点から「参議院が都道府県代表としての性格をもつことを明文で定める」と、地方の選挙区の定数が都市部と比べ多くなり得る、即ち議員定数不均衡が生じ得るのでこの原則との関係で問題となる。参議院選挙の議員定数不均衡問題は、参議院の地域代表的性格が根底にあることに注意(最大判昭和58年4月27日等)。前掲芦部143頁、佐藤409頁。

エ) 「直接選挙」が問題となる。直接選挙とは「選挙人が公務員を直接に選挙する制度」を言う(前掲芦部257頁)。前掲佐藤404頁。参議院議員を直接選挙せず「都道府県の知事や議会議長が自動的に参議院議員」となる制度はこの原則との関係で問題となる。
なおこの肢との関係で、選挙人が選挙委員を選びこの選挙委員が公務員を選挙する「間接選挙制」(米大統領選挙)や、選挙された公職者が公務員を選挙する制度である「複選制」(例、都道府県議会議員が国会議員を選挙する)の可否、これら両者の制度が43条の「選挙」に含まれるかどうか問題となる。この点、前者は43条の「選挙」含まれるが後者は含まれないとする説(芦部)、両者とも含まれないとする説(佐藤)がある。前掲芦部257頁、佐藤405頁。

よって正解は1)普通選挙となろう。普通選挙とは「狭い意味では、財力(財産または納税額)を選挙権の要件としない制度」を言う。前掲芦部254頁、佐藤402頁。