■2018年行政書士試験・憲法第3問

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■生存権(2018−5)【判例問題】

生存権に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

1) 憲法が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」を営む権利のうち、「最低限度の生活」はある程度明確に確定できるが、「健康で文化的な生活」は抽象度の高い概念であり、その具体化に当たっては立法府・行政府の広い裁量が認められる。

2) 行政府が、現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定する等、憲法および生活保護法の趣旨・目的に反し、法律によって与えられた裁量権の限界を越えた場合または裁量権を濫用した場合には、違法な行為として司法審査の対象となり得る。

3) 憲法25条2項は、社会的立法および社会的施設の創造拡充により個々の国民の生活権を充実すべき国の一般的責務を、同条1項は、国が個々の国民に対しそうした生活権を実現すべき具体的義務を負っていることを、それぞれ定めたものと解さ れる。

4) 現になされている生活保護の減額措置を行う場合には、生存権の自由権的側面の侵害が問題となるから、減額措置の妥当性や手続の適正さについて、裁判所は通常の自由権の制約と同様の厳格な審査を行うべきである。

5) 生活保護の支給額が、「最低限度の生活」を下回ることが明らかであるような場合には、特別な救済措置として、裁判所に対する直接的な金銭の給付の請求が許容される余地があると解するべきである。

■解説

【難易度】やや難しい。

1) 誤り。「『健康で文化的な最低限度の生活』なるものは」「きわめて抽象的・相対的な概念」であるから、「憲法25条の規定の趣旨にこたえて具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は、立法府の広い裁量にゆだねられているとするのが判例(最大判昭和57年7月7日〔堀木訴訟〕)である。芦部信喜(高橋和之補訂)『憲法』第5版(2011年、岩波書店)262頁、佐藤幸治『日本国憲法論』(成文堂、2011年)364−365頁。

2) 正しい。朝日訴訟(最大判昭和42年5月24日)である。前掲佐藤364頁。

3) 誤り。前述堀木訴訟である。堀木訴訟では、25条1項の「具体的義務性も否定されている

4) 誤り。生存権は生きる権利そのものであるから、その違憲審査基準を精神的自由の場合に準じて厳しいものにすべきという説もあるが(前掲芦部132頁)、判例は1)の解説にあるように立法裁量を幅広く認める基準(合理的根拠の基準)を採用している。芦部信喜『憲法学V』(1998年、有斐閣)88頁。「生活扶助における老齢加算の廃止」が争われた最判平成24年2月28日も前述堀木訴訟を引用している。

5) 誤り。このような判例はない。なお生存権の法的性格に関する具体的権利説は、「25条を直接の根拠にして裁判所の具体的な給付判決(たとえば、これこれの額を支払えという判決)を求めうる」説になるとも思われるが、この説は一般にそこまでの主張をしない、という指摘(前掲佐藤364頁)に注意しておきたい。前掲芦部260−261頁。