■2017年行政書士試験・民法第8問(不法行為)

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■不法行為(2017−34)【判例問題】

不法行為に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

1) 景観の良否についての判断は個々人によって異なる主観的かつ多様性のあるものであることから、個々人が良好な景観の恵沢を享受する利益は、法律上保護される利益ではなく、当該利益を侵害しても、不法行為は成立しない。

2) 人がその品性、徳行、名声、信用などについて社会から受けるべき客観的な社会的評価が低下させられた場合だけではなく、人が自己自身に対して与えている主観的な名誉感情が侵害された場合にも、名誉毀損による不法行為が成立し、損害賠償の方法として原状回復も認められる。

3) 宗教上の理由から輸血拒否の意思表示を明確にしている患者に対して、輸血以外に救命手段がない場合には輸血することがある旨を医療機関が説明しないで手術を行い輸血をしてしまったときでも、患者が宗教上の信念に基づいて当該手術を受けるか否かを意思決定する権利はそもそも人格権の一内容として法的に保護に値するものではないので、不法行為は成立しない。

4) 医師の過失により医療水準に適かなった医療行為が行われず患者が死亡した場合において、医療行為と患者の死亡との間の因果関係が証明されなくても、医療水準に適った医療行為が行われていたならば患者がその死亡の時点においてなお生存していた相当程度の可能性の存在が証明されるときは、不法行為が成立する。

5) 交通事故の被害者が後遺症のために身体的機能の一部を喪失した場合には、その後遺症の程度が軽微であって被害者の現在または将来における収入の減少が認められないときでも、労働能力の一部喪失を理由とする財産上の損害が認められる。

■解説

【難易度】やや難しい。

1) 誤り。個々人が良好な景観の恵沢を享受する利益即ち景観利益は法律上保護される利益に含まれるとし、景観利益侵害が違法となるには、侵害行為が刑罰法規違反や公序良俗違反に該当するなど、侵害行為の態様程度の面において「社会的に容認された行為としての相当性を欠くことが求められる」とするのが判例である(最判平成18年3月30日)。藤岡−磯村−浦河−松本『民法W』第3版補訂(2009年、有斐閣)351頁。

2) 誤り。裁判所は、名誉棄損について「損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分」を命ずることができる(723条)が、同条に言う「名誉」は社会的名誉を指し、主観的な名誉感情は含まれないとするのが判例である(最判昭和45年12月18日)。

3) 誤り。患者が宗教上の信念に基づいて輸血を必要とする治療を拒む明確な意思を有している場合、そのような意思決定をする権利は「人格権の一内容として尊重されなければならない」とするのが判例である(最判平成12年2月29日)。前掲藤岡他289頁。

4) 正しい。最判平成12年9月22日である。

5) 誤り。被害者が従事する職業の性質から見て、後遺症の程度が軽微であって被害者の現在または将来における収入の減少が認められないときは、特段の事情がない限り、労働能力の一部喪失を理由とする財産上の損害を認める余地はないとするのが判例である(最判昭和56年12月22日)。この判例は、例えば小指の負傷という「事実を損害と捉え」その損害を金銭評価する際、「ピアニストと会社員」で違いが生じ得るとする損害事実説に「理解を示す判示」とされている。内田貴『民法U』初版(東大出版会、1997年)354頁。