■2017年行政書士試験・民法第7問(債権)

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■賃貸借契約その他(2017−33)【条文知識問題】

Aは自己所有の甲機械(以下「甲」という。)をBに賃貸し(以下、これを「本件賃貸借契約」という。)、その後、本件賃貸借契約の期間中にCがBから甲の修理を請け負い、Cによる修理が終了した。この事実を前提とする次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

1) Bは、本件賃貸借契約において、Aの負担に属するとされる甲の修理費用について直ちに償還請求することができる旨の特約がない限り、契約終了時でなければ、Aに対して償還を求めることはできない。

2) CがBに対して甲を返還しようとしたところ、Bから修理代金の提供がなかったため、Cは甲を保管することとした。Cが甲を留置している間は留置権の行使が認められるため、修理代金債権に関する消滅時効は進行しない。

3) CはBに対して甲を返還したが、Bが修理代金を支払わない場合、Cは、Bが占有する甲につき、動産保存の先取特権を行使することができる。

4) CはBに対して甲を返還したが、Bは修理代金を支払わないまま無資力となり、本件賃貸借契約が解除されたことにより甲はAに返還された。本件賃貸借契約において、甲の修理費用をBの負担とする旨の特約が存するとともに、これに相応して賃料が減額されていた場合、CはAに対して、事務管理に基づいて修理費用相当額の支払を求めることができる。

5) CはBに対して甲を返還したが、Bは修理代金を支払わないまま無資力となり、本件賃貸借契約が解除されたことにより甲はAに返還された。本件賃貸借契約において、甲の修理費用をBの負担とする旨の特約が存するとともに、これに相応して賃料が減額されていた場合、CはAに対して、不当利得に基づいて修理費用相当額の支払を求めることはできない。

■解説

【難易度】難しい。

1) 誤り。「賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる」(民法608条1項)。

2) 誤り。Cが甲につき留置権を行使できるという点は正しいが、「留置権の行使は、債権の消滅時効の進行を妨げない」(300条)。

3) 誤り。動産保存の先取特権(311条4号、320条)は、「債務者の特定の動産」(311条本文)が対象となるが、甲は債務者B所有の動産ではないので、Cは先取特権を行使できない。

4) 誤り。この肢はおそらく、「CはAに対して、不当利得に基づいて修理費用相当額の支払を求めることができる」か否かが争われた転用物訴権(最判昭和45年7月16日)の事例を応用したものと思われる。Cは、義務なく他人のために甲の修理をしているわけではないので(697条1項)、事務管理は問題にならない。前記判例につき藤岡−磯村−浦河−松本『民法W』第3版補訂(2009年、有斐閣)419−420頁。

5) 正しい。同じく転用物訴権についての最判平成7年9月19日である。前記昭和45年判決は本肢のような特約が場合にまで、Cによる請求を認める点が強く批判されていたが(「修理費用を」Bに「おいて負担する旨の特約が」BとA「との間に存したとしても」、CからAに対する「不当利得返還請求の妨げとなるものではない」との判決文内の括弧書に注意)、その批判を受け入れ修正したのが平成7年判決である。前掲藤岡他420頁。昭和45年判決と転用物訴権に対する批判については内田貴『民法U』初版(東大出版会、1997年)541頁以下参照。なお内田は「学説の多くは、転用物訴権を全面的に否定すべきだと主張している」(前掲内田543頁)とする。