■2017年行政書士試験・憲法第5問

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■憲法概念(2017−7)【理論問題】

憲法の概念に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

1) 通常の法律より改正手続が困難な憲法を硬性憲法、法律と同等の手続で改正できる憲法を軟性憲法という。ドイツやフランスの場合のように頻繁に改正される憲法は、法律より改正が困難であっても軟性憲法に分類される。

2) 憲法の定義をめぐっては、成文の憲法典という法形式だけでなく、国家統治の基本形態など規定内容に着目する場合があり、後者は実質的意味の憲法と呼ばれる。実質的意味の憲法は、成文の憲法典以外の形式をとって存在することもある。

3) 憲法は、公権力担当者を拘束する規範であると同時に、主権者が自らを拘束する規範でもある。日本国憲法においても、公務員のみならず国民もまた、憲法を尊重し擁護する義務を負うと明文で規定されている。

4) 憲法には最高法規として、国内の法秩序において最上位の強い効力が認められることも多い。日本国憲法も最高法規としての性格を備えるが、判例によれば、国際協調主義がとられているため、条約は国内法として憲法より強い効力を有する。

5) 憲法には通常前文が付されるが、その内容・性格は憲法によって様々に異なっている。日本国憲法の前文の場合は、政治的宣言にすぎず、法規範性を有しないと一般に解されている。

■解説

【難易度】やや難しい。

1) 誤り。硬性憲法、軟性憲法という分類は改正手続(形式面)に着目したものであって、改正の回数が多いという実体を以って「軟性憲法に分類される」ということはない。つまりこの分類は、「現実の憲法のあり方を実際に反映するものではない」。芦部信喜(高橋和之補訂)『憲法』第5版(2011年、岩波書店)8頁、佐藤幸治『日本国憲法論』(成文堂、2011年)22頁。

2) 正しい。憲法の概念につき、形式的意味の憲法と実質的意味の憲法という分類がある。前者は「成文の憲法典」を意味し、後者(成文、不文を問わない)は、固有の意味の憲法(国家統治の基本法)と立憲的意味の憲法(自由主義に基づいて定められた国家の基礎法)を意味するとされる。前掲芦部4−5頁、佐藤19−20頁。

3) 誤り。憲法は「国家権力を制限する基礎法」であって、主権者国民を拘束する法律ではない。前掲芦部10頁。また日本国憲法には国民の憲法尊重擁護義務は規定されていない(憲法99条参照)。前掲佐藤47−48頁。

4) 誤り。憲法と条約の効力関係如何。この点国際協調主義(前文3項、98条2項)を理由とする条約優位説もあるが、通説、判例(砂川事件〔最大判昭和34年12月16日〕)は憲法優位説をとる。条約が憲法に優位するとなると、違憲の疑いがある条約が締結された場合、法律よりも簡易な手続で成立する条約(61条)により憲法が改正されてしまい、国民主権や硬性憲法の建前に反することになるからである。前掲芦部373−374頁、佐藤89頁。憲法の最高法規性については98条1項。

5) 誤り。日本国憲法の前文は、政治的宣言ではなく法的規範性を有する(よって前文を変えるには憲法改正手続によらねばならない)と解するのが定説である。前掲芦部37頁、佐藤30頁。その他の説明は正しい。