■2017年行政書士試験・行政救済法第8問

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■国家賠償法(2017−21)【判例問題】

次の文章は、国家賠償法に関する最高裁判所判決の一節である。空欄(T)−(X)に当てはまる語句の組合せとして、妥当なものはどれか。

原判決は、本件火災は第一次出火の際の残り火が再燃して発生したものであるが、上告人の職員である消防署職員の消火活動について失火ノ責任ニ関スル法律(以下「失火責任法」という。)は適用されず、第一次出火の消火活動に出動した消防署職員に残り火の点検、再出火の危険回避を怠つた(T)がある以上、上告人は被上告人に対し国家賠償法1条1項により損害を賠償する義務があるとし、被上告人の請求のうち一部を認容した。

思うに、国又は公共団体の損害賠償の責任について、国家賠償法4条は、同法1条1項の規定が適用される場合においても、民法の規定が(U)ことを明らかにしているところ、失火責任法は、失火者の責任条件について民法709条の特則を規定したものであるから、国家賠償法4条の「民法」に(V)と解するのが相当である。

また、失火責任法の趣旨にかんがみても、公権力の行使にあたる公務員の失火による国又は公共団体の損害賠償責任についてのみ同法の(W)合理的理由も存しない。したがつて、公権力の行使にあたる公務員の失火による国又は公共団体の損害賠償責任については、国家賠償法4条により失火責任法が適用され、当該公務員に(X)のあることを必要とするものといわなければならない。
(最二小判昭和53年7月17日民集32巻5号1000頁)

ア イ
T) 重大な過失 過失
U) 補充的に適用される 優先的に適用される
V) 含まれる 含まれない
W) 適用を排除すべき 適用を認めるべき
X) 重大な過失 過失

T U V W X
1) ア ア ア イ イ
2) ア イ イ ア イ
3) イ ア ア ア ア
4) イ イ ア イ ア
5) イ イ イ ア ア

■解説

【難易度】易しい。

「第一次出火の消火活動に出動した消防署職員」が「残り火の点検、再出火の危険回避を怠つた」結果「残り火が再燃して発生した」という本件では、国家賠償法4条と失火責任法の関係、国家賠償法4条の「民法」には民法典だけでなく「民法の付属法規」即ち失火責任法も含まれるか、という点が問題となった。まず両方の条文は以下のようになっている。

国家賠償法4条 国又は公共団体の損害賠償の責任については、前三条の規定によるの外、民法の規定による
失火責任法 民法第709条ノ規定ハ失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス但シ失火者ニ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス

まず国家賠償法4条の「民法」について以下のような判断が示された。

@ 「思うに、国又は公共団体の損害賠償の責任について、国家賠償法4条は、同法1条1項の規定が適用される場合においても、民法の規定が(U ア補充的に適用される)ことを明らかにしているところ、失火責任法は、失火者の責任条件について民法709条の特則を規定したものであるから、国家賠償法4条の「民法」に(V ア含まれる)と解するのが相当である」。

つまり「民法の特則」即ち「民法の付属法規」は4条の「民法」に含まれ、結果「再出火の危険回避を怠つた」場合にも、失火責任法の適用があるという判断がなされている。更に上記の判断を受けて、失火責任法の適用について以下のように述べられている。

A 「また、失火責任法の趣旨にかんがみても、公権力の行使にあたる公務員の失火による国又は公共団体の損害賠償責任についてのみ同法の(W ア適用を排除すべき)合理的理由も存しない。したがつて、公権力の行使にあたる公務員の失火による国又は公共団体の損害賠償責任については、国家賠償法4条により失火責任法が適用され、当該公務員に(X ア重大な過失)のあることを必要とするものといわなければならない」。

この最高裁判決に対しては、そもそも消防職員は消防の専門家、であり国家賠償には被害者救済の趣旨もあることを考慮すべきとして、失火責任法の一律適用に批判的な見解も有力である。なおTには(イ 過失)が入る。よって正解は3)である。以上につき塩野宏『行政法U』第6版(2019年、有斐閣)315−316頁。櫻井敬子−橋本博之『行政法』第5版(2016年、弘文堂)390−391頁。