■2017年行政書士試験・行政救済法第7問

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■国家賠償法(2017−20)【判例問題】

国家賠償法1条に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

1) 通達は、本来、法規としての性質を有しない行政組織内部の命令にすぎず、その違法性を裁判所が独自に判断できるから、国の担当者が、法律の解釈を誤って通達を定め、この通達に従った取扱いを継続したことは、国家賠償法1条1項の適用上も当然に違法なものと評価される。

2) 検察官は合理的な嫌疑があれば公訴を提起することが許されるのであるから、検察官が起訴した裁判において最終的に無罪判決が確定したからといって、当該起訴が国家賠償法1条1項の適用上も当然に違法となるわけではない。

3) 裁判官のなす裁判も国家賠償法1条の定める「公権力の行使」に該当するが、裁判官が行う裁判においては自由心証主義が認められるから、裁判官の行う裁判が国家賠償法1条1項の適用上違法と判断されることはない。

4) 国会議員の立法行為(立法不作為を含む。)は、国家賠償法1条の定める「公権力の行使」に該当するものではなく、立法の内容が憲法の規定に違反する場合であっても、国会議員の当該立法の立法行為は、国家賠償法1条1項の適用上違法の 評価を受けることはない。

5) 政府が、ある政策目標を実現するためにとるべき具体的な措置についての判断を誤り、ないしはその措置に適切を欠いたため当該目標を達成できなかった場合には、国家賠償法1条1項の適用上当然に違法の評価を受ける。

■解説

【難易度】易しい。

1) 誤り。国の担当者が、法解釈を誤って違法な通達を定め発出し、それに従った取扱が継続されていたとしても、そのことから当該発出、取扱行為等が「国家賠償法1条1項にいう違法があったと評価されることにはならず」、「職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と上記行為をしたと認められるような事情がある場合に限り」国家賠償法1条1項の違法評価を受けるとするのが判例(最判平成19年11月1日。職務行為基準説)である。櫻井敬子−橋本博之『行政法』第5版(2016年、弘文堂)371頁。

2) 正しい。最判昭和53年10月20日。塩野宏『行政法U』第6版(2019年、有斐閣)337頁、前掲櫻井他374頁。

3) 誤り。裁判官の裁判にも国家賠償法の適用があるというのが判例だが、それは裁判官が違法又は不当な目的をもって裁判した等、裁判官が付与された権限をその趣旨に明らかに背いて行使したというような特殊事情がある場合に限られる、としている(最判昭和57年3月12日)。前掲塩野335頁、櫻井他374頁。

4) 誤り。判例は、国会議員の立法(不作為)行為も、立法内容や立法不作為が人権を違法に侵害することが「明白」な場合や、人権を行使する機会を確保するために所要の立法措置をとることが「必要不可欠」であってそれが明白であるにもかかわらず、国会が「正当の理由なく長期間これを怠る」ような場合、国家賠償法1条1項の違法評価を受けるとしている(在外国民選挙権訴訟判決〔最大判平成17年9月14日〕)。なお最判昭和60年11月21日も参照のこと。前掲塩野335−337頁、櫻井他374−375頁。

5) 誤り。このような場合「政府の政治的責任が問われることがあるのは格別、法律上の義務違反ないし違法行為として国家賠償法上の損害賠償責任の問題を生ずるものとすることはできない」というのが判例(最判昭和57年7月15日)である。