■2017年行政書士試験・法令記述式第1問

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■行政法(2017−44)【判例問題】

A市は、市内へのパチンコ店の出店を規制するため、同市内のほぼ全域を出店禁止区域とする条例を制定した。しかし、事業者Yは、この条例は国の法令に抵触するなどと主張して、禁止区域内でのパチンコ店の建設に着手した。これに対して、A市は、同条例に基づき市長名で建設の中止命令を発したが、これをYが無視して建設を続行しているため、A市は、Yを被告として建設の中止を求める訴訟を提起した。最高裁判所の判例によれば、こうした訴訟は、どのような立場でA市が提起したものであるとされ、また、どのような理由で、どのような判決がなされるべきこととなるか。40字程度で記述しなさい。

■解説

【難易度】やや難しい。

「中止命令を発したが」「無視して建設を続行している」という「義務違反」に対して、どのようにして行政上の義務履行を確保すべきか。この手段としては「行政的執行」と「司法的執行」がある。行政的執行は、「裁判所の助力を必要とせずに、行政主体の側に自力救済を認める方法」(塩野宏『行政法T』第5版〔2009年、有斐閣〕222頁)であり、現状、@強制執行制度(代執行、直接強制等)、A公表といった新たな制度、B行政罰の3つがある(前掲塩野223頁)。

但し上の行政的執行には限界が指摘されている。何故なら、@代執行は「きわめて例外的な状況」でしか実施されず、直接強制は個別法律で特に定めた場合のみしか認められない、B行政刑罰は、刑罰であるが故適用に慎重になりすぎ、かえって義務の不履行が放置されるといった事態が生じるからである。櫻井敬子−橋本博之『行政法』第5版(2016年、弘文堂)166−167頁、前掲塩野249頁。なお条例に代執行、直接強制の根拠を設けることはできない(行政代執行法1条参照。なお同2条注意)。

一方司法的執行は、「行政上の義務の確保に当たりなんらかの形で裁判所を介入させるもの」(前掲塩野221頁)であるが、日本における「司法的執行の可否」についての判断を示したものが、本問の素材たる宝塚市パチンコ条例事件判決(最判平成14年7月9日)である。本問では、この事件での判決を要約して答えることになる。

解答としては以下のようになろうか。
専ら行政権の主体として提起したものであり、法律上の争訟に該当せず、却下判決が出される。(43文字)

なおこの判決については、司法的執行の可能性を「およそあり得ないものとして否定」し、司法権(憲法76条1項)の範囲を極端に狭めるもの(前掲櫻井他167−168頁)といった批判や、最高裁の「法律上の争訟」の定義(最判昭和56年4月7日)と本判決との整合性がないとの批判(塩野宏『行政法U』第4版〔2005年、有斐閣〕252頁以下)等がある。総じて学説は本判決に対して厳しい批判をしている(前掲櫻井他168頁)。