■2014年行政書士試験・民法1(総則、物権)

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■権利能力なき社団、他(2014−27)【判例問題】

A、B、CおよびDは、共同で事業を営む目的で「X会」という団体を設立した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、誤っているものはどれか。

1) X会が権利能力なき社団であり、Aがその代表者である場合、X会の資産として不動産があるときは、その不動産の公示方法として、Aは、A個人の名義で所有権の登記をすることができる。

2) X会が民法上の組合である場合、X会の取引上の債務については、X会の組合財産がその債務のための責任財産になるとともに、組合員であるA、B、CおよびDも、各自が損失分担の割合に応じて責任を負う。

3) X会が権利能力なき社団である場合、X会の取引上の債務については、その構成員全員に1個の債務として総有的に帰属し、X会の社団財産がその債務のための責任財産になるとともに、構成員であるA、B、CおよびDも各自が連帯して責任を負う。

4) X会が民法上の組合である場合、組合員であるA、B、CおよびDは、X会の組合財産につき持分権を有するが、X会が解散して清算が行われる前に組合財産の分割を求めることはできない。

5) X会が権利能力なき社団である場合、構成員であるA、B、CおよびDは、全員の同意をもって、総有の廃止その他X会の社団財産の処分に関する定めのなされない限り、X会の社団財産につき持分権を有さず、また、社団財産の分割を求めることができない。

■解説

【難易度】やや難しい。

1) 正しい。権利能力なき社団が不動産を所有している場合、その不動産は社団の代表者名義で登記をすることになる。判例は、権利能力なき社団の名前での登記を認めていない(最判昭和47年6月2日)。山田−河内−安永−松久『民法T』第3版補訂(2007年、有斐閣)94頁、内田貴『民法T』第2版(1999年、東大出版会)209−210頁。

2) 正しい。組合においては、取引上の債務については組合財産がその債務のための責任財産になるとともに、組合員自身もこのような責任を負う(674、675条)。

3) 誤り。よってこれが正解である。権利能力なき社団の代表者が社団の名でした取引の債務は、社団構成員全員に1個の債務として総有的に帰属し、社団の総有財産のみが責任財産となり、構成員は取引の相手方に対し直接責任を負わない、というのが判例である(最判昭和48年10月9日)。但しこの判決については、営利目的の権利能力なき社団には当てはまらないのではないか等の批判がある。前掲山田他96頁以下、内田212頁。

4) 正しい。676条。

5) 正しい。最判昭和32年11月14日。

■詐欺、強迫(2014−28)【判例、条文知識問題】

Aが自己所有の甲土地をBに売却する旨の契約(以下、「本件売買契約」という。)が締結された。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

1) AはBの強迫によって本件売買契約を締結したが、その後もBに対する畏怖の状態が続いたので取消しの意思表示をしないまま10年が経過した。このような場合であっても、AはBの強迫を理由として本件売買契約を取り消すことができる。

2) AがBの詐欺を理由として本件売買契約を取り消したが、甲土地はすでにCに転売されていた。この場合において、CがAに対して甲土地の所有権の取得を主張するためには、Cは、Bの詐欺につき知らず、かつ知らなかったことにつき過失がなく、また、対抗要件を備えていなければならない。

3) AがDの強迫によって本件売買契約を締結した場合、この事実をBが知らず、かつ知らなかったことにつき過失がなかったときは、AはDの強迫を理由として本件売買契約を取り消すことができない。

4) AがEの詐欺によって本件売買契約を締結した場合、この事実をBが知っていたとき、または知らなかったことにつき過失があったときは、AはEの詐欺を理由として本件売買契約を取り消すことができる。

5) Aは未成年者であったが、その旨をBに告げずに本件売買契約を締結した場合、制限行為能力者であることの黙秘は詐術にあたるため、Aは未成年者であることを理由として本件売買契約を取り消すことはできない。

■解説

【難易度】普通。

1) 正しい。取消権は、@追認をし得るときから5年間、A行為時より20年間経過すれば時効により消滅する。本肢の事例では、売買契約から10年経過しているもののその間畏怖状態が続いていたというのであるから、追認をし得る状態(取消の原因となっていた状況が消滅した状態〔124条1項〕)になかったということになる。だからAは、強迫を理由として本件売買契約を取消すことができる。前掲山田他151、153頁、内田273−275頁。

2) 誤り。詐欺「取消前」に法律関係に入った第三者についての問題である。この第三者CがAに対抗するには、善意であれば足り無過失要件は必要でないとされている。また登記の具備も要しないと解されている(最判昭和49年9月26日)。前掲山田他137−138頁。但し無過失要件の有無と、昭和49年判例の解釈については争いがある。この点前掲内田79頁(無過失必要説にたつ)、83頁(登記必要説にたつ)参照。

3) 誤り。第三者の詐欺による意思表示については、相手方がその事実につき悪意の場合に限り取消し得る旨の規定があるが(96条2項)、強迫についてはこのような規定はないので、第三者による強迫でもAは本件売買契約を取消し得る。前掲山田他139−140頁、内田86頁。

4) 誤り。3)で述べた通り、第三者詐欺の場合相手方が悪意であれば、本人は詐欺による意思表示を取消し得るが、相手方が有過失に過ぎない場合は取消し得ない(96条2項)。

5) 誤り。このような黙秘、沈黙は21条の「詐術」に該当するか。判例は、制限能力者であるということを黙秘しただけでは詐術にはあたらないが、黙秘が制限能力者の他の言動と相まって、相手方を誤信させ又は誤信を強めた場合には詐術にあたるとする(最判昭和44年2月13日)。前掲山田他50頁。よってこの場合、Aは本件契約を取消し得る。

■共有(2014−29)【判例、条文知識問題】

A、BおよびCは費用を出し合って、別荘地である甲土地および同地上に築造された乙建物を購入し、持分割合を均等として共有名義での所有権移転登記を行った。この場合に関する以下の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものの組合せはどれか。

ア) 甲土地および乙建物にかかる管理費用について、AおよびBはそれぞれの負担部分を支払ったが、資産状況が悪化したCはその負担に応じないため、AおよびBが折半してCの負担部分を支払った。この場合、Cが負担に応ずべき時から1年以内に負担に応じない場合には、AおよびBは、相当の償金を支払ってCの持分を取得することができる。

イ) Cが甲土地および乙建物にかかる自己の持分をDに譲渡し、その旨の登記がなされたが、CD間の譲渡契約は錯誤により無効であった。この場合、AおよびBは、自己の持分が害されているわけではないので、単独でDに対してCD間の移転登記の抹消を求めることはできない。

ウ) 甲土地に隣接する丙土地について、甲土地からの観望を損ねるような工作物を築造しないことを内容とする地役権が設定され、登記されていた。この場合、Aは、自己の持分については、単独で同地役権を消滅させることができるが、同地役権の全部を消滅させることはできない。

エ) Cには相続人となるべき者はなく、内縁の妻Eと共に生活していたところ、Cが死亡した。この場合、甲土地および乙建物にかかるCの持分は、特別縁故者に当たるEに分与されないことが確定した後でなければ、他の共有者であるAおよびBに帰属しない。

オ) Cの債務を担保するため、A、BおよびCが、各人の甲土地にかかる持分につき、Cの債権者Fのために共同抵当権を設定していたところ、抵当権が実行され、Gが全ての持分を競落した。この場合には、乙建物のために法定地上権が成立する。

1) ア)、イ)

2) ア)、エ)

3) ア)、オ)

4) イ)、ウ)

5) ウ)、エ)

■解説

【難易度】やや難しい。

ア) 正しい。共有物の管理費用は、各共有者が自己の持分に応じ負担するが(253条1項)、共有者が1年以内にこの義務を履行しない場合、「他の共有者は、相当の償金を支払ってその者の持分を取得することができる」(同条2項)。

イ) 誤り。この場合CD間の移転登記抹消請求は、252条但書の保存行為に該当するため、AまたはBはこれを単独でなし得るというのが判例(最判平成15年7月11日)である。なお淡路−鎌田−原田−生熊『民法U』第2版(1994年、有斐閣)162頁、内田貴『民法T』第2版(1999年、東大出版会)375頁参照。

ウ) 誤り。「土地の共有者の1人は、その持分につき、その土地のために又はその土地について存する地役権を消滅させることができない」(282条1項)。よってAは自己の持分についても、甲地についての地役権を消滅させることはできない。

エ) 正しい。共有者の一人が死亡した場合、共有の弾力性について定める255条が優先するのか、それとも特別縁故者制度(958条の3)が優先するのかが問題となるが、判例は特別縁故者制度を優先適用した(最判平成1年11月24日)。前掲淡路他158頁、内田372−373頁。

オ) 正しい。388条。

よって正解は4)になろう。

■物上代位(2014−30)【判例問題】

物上代位に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、誤っているものはどれか。

1) 対抗要件を備えた抵当権者は、物上代位の目的債権が譲渡され、譲受人が第三者に対する対抗要件を備えた後であっても、第三債務者がその譲受人に対して弁済する前であれば、自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。

2) 対抗要件を備えた抵当権者が、物上代位権の行使として目的債権を差し押さえた場合、第三債務者が債務者に対して反対債権を有していたとしても、それが抵当権設定登記の後に取得したものであるときは、当該第三債務者は、その反対債権を自働債権とする目的債権との相殺をもって、抵当権者に対抗することはできない。

3) 動産売買の先取特権に基づく物上代位につき、動産の買主が第三取得者に対して有する転売代金債権が譲渡され、譲受人が第三者に対する対抗要件を備えた場合であっても、当該動産の元来の売主は、第三取得者がその譲受人に転売代金を弁済していない限り、当該転売代金債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。

4) 動産売買の先取特権に基づく物上代位につき、買主がその動産を用いて第三者のために請負工事を行った場合であっても、当該動産の請負代金全体に占める価格の割合や請負人(買主)の仕事内容に照らして、請負代金債権の全部または一部をもって転売代金債権と同視するに足りる特段の事情が認められるときは、動産の売主はその請負代金債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。

5) 抵当権者は、抵当不動産につき債務者が有する賃料債権に対して物上代位権を行使することができるが、同不動産が転貸された場合は、原則として、賃借人が転借人に対して取得した転貸賃料債権を物上代位の目的とすることはできない。

■解説

【難易度】やや難しい。

1) 正しい。372条が準用する304条1項但書が問題となる。この点抵当権者は、物上代位の目的債権が譲渡され第三者に対する対抗要件が備えられた後も、自ら目的債権を差押えて物上代位権を行使し得るというのが判例である(最判平成10年1月30日。第三債務者保護説)。前掲淡路他258頁。304条1項但書の「払渡又ハ引渡」には文言上債権譲渡は含まれないし、このように解しても第三債務者の弁済の利益を害さないというのがその理由である。

2) 正しい。最判平成13年3月13日。抵当権者が目的債権を差押える前の相殺は制限されないが、差押後は物上代位の効果が当該債権にも及ぶとしても、それは抵当権設定登記により公示されているからというのがその理由である。

3) 誤り。よってこれが正解である。動産売買の先取特権者は、物上代位の目的債権が譲渡され、第三者に対する対抗要件が備えられた後は、目的債権を差押えて物上代位権を行使することはできないというのが判例(最判平成17年2月22日)である。ここでも304条1項但書が問題となるが、動産売買の先取特権は抵当権と異なり公示手段がないため、同条項の解釈に「目的債権の譲受人等の第三者の利益を保護する趣旨」を取り込む必要があるためである

4) 正しい。動産の買主が目的物を「転売」した結果取得した債権(甲)については、動産売買の先取特権の対象になるが(304条)、目的物を用いて「請負」工事を行った結果取得した債権は、当該工事のための材料や労力に対する対価も含むため、甲債権と同じようには評価できず、先取特権の対象にならないのが原則である。しかし、請負代金全体に占める当該動産の価額の割合や請負契約における請負人の債務の内容等に照らし、請負代金債権の全部又は一部を動産の転売による代金債権と同視するに足りる特段の事情がある場合には、右部分の請負代金債権に対して物上代位権を行使することができるというのが判例である(最判平成10年12月18日)。

5) 正しい。賃料に対する物上代位は可能である(372、304条。なお最判平成1年10月27日参照。前掲淡路他255頁、内田貴『民法V』〔1996年、東大出版会〕372頁)。そして転貸借が仮装された場合等を除き、賃借人が転借人に対し取得した転貸賃料債権は、物上代位の対象にならないというのが判例である(最判平成12年4月14日)。