■2014年行政書士試験・憲法1(人権)

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■幸福追求権他(2014−3)【理論問題】

憲法13条に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1) 幸福追求権について、学説は憲法に列挙されていない新しい人権の根拠となる一般的かつ包括的な権利であると解するが、判例は立法による具体化を必要とするプログラム規定だという立場をとる。

2) 幸福追求権の内容について、個人の人格的生存に必要不可欠な行為を行う自由を一般的に保障するものと解する見解があり、これを「一般的行為自由説」という。

3) プライバシーの権利について、個人の私的領域に他者を無断で立ち入らせないという消極的側面と並んで、積極的に自己に関する情報をコントロールする権利という側面も認める見解が有力である。

4) プライバシーの権利が、私法上、他者の侵害から私的領域を防御するという性格をもつのに対して、自己決定権は、公法上、国公立の学校や病院などにおける社会的な共同生活の中で生じる問題を取り扱う。

5) 憲法13条が幸福追求権を保障したことをうけ、人権規定の私人間効力が判例上確立された1970年代以降、生命・身体、名誉・プライバシー、氏名・肖像等に関する私法上の人格権が初めて認められるようになった。

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■解説

【難易度】普通。

1) 誤り。学説についての説明は正しいが、判例は幸福追求権の具体的権利性を承認している(京都府学連事件〔最大判昭和44年12月24日〕)。芦部信喜(高橋和之補訂)『憲法』第5版(2011年、岩波書店)119頁。

2) 誤り。これは人格的利益説の説明である。一般的行為自由説は、幸福追求権の内容を「あらゆる生活領域に関する自由」を保障したものとする説である。前掲芦部119−120頁、佐藤幸治『日本国憲法論』(成文堂、2011年)175−176頁。

3) 正しい。前掲芦部122頁、佐藤182頁。

4) 誤り。プライバシーの権利は、公権力による安易な前科の公開を制限する等公法上の関係でも問題になる(前科照会事件〔最判昭和56年4月14日〕)。また自己決定権は、私立学校における髪型規制等私法上の関係でも問題になる。(最判平成8年7月18日)。前掲芦部121、126頁、佐藤183、191頁。

5) 誤り。人格権は元々私法上で承認されていた権利である。その権利が「後に」憲法に基礎づけられた権利であると考えられるようになり、京都府学連事件や前科照会事件でもそれが承認されたのである。前掲芦部121頁。

■経済的自由権(2014−4)【判例問題】

行政書士をめざすA君は、いくつかの最高裁判所判決を読みながら、その重要な部分を書き取ったカードを作成し、判例の論理をたどろうとしていたところ、うっかりしてカードをばらまいてしまった。その際に、要約ミスのため捨てるはずだった失敗カードが1枚混ざってしまったため、全体としてつじつまがあわなくなった。以下の1)−5)のうち、捨てるはずだった失敗カードの上に書かれていた文章はどれか。

1) 一般に、国民生活上不可欠な役務の提供の中には、当該役務のもつ高度の公共性にかんがみ、その適正な提供の確保のために、法令によって、提供すべき役務の内容及び対価等を厳格に規制するとともに、更に役務の提供自体を提供者に義務づける等のつよい規制を施す反面、これとの均衡上、役務提供者に対してある種の独占的地位を与え、その経営の安定をはかる措置がとられる場合がある。

2) 憲法22条1項は、国民の基本的人権の一つとして、職業選択の自由を保障しており、そこで職業選択の自由を保障するというなかには、広く一般に、いわゆる営業の自由を保障する趣旨を包含しているものと解すべきであり、ひいては、憲法が、個人の自由な経済活動を基調とする経済体制を一応予定しているものということができる。

3) しかし、憲法は、個人の経済活動につき、その絶対かつ無制限の自由を保障する趣旨ではなく、各人は、「公共の福祉に反しない限り」において、その自由を享有することができるにとどまり、公共の福祉の要請に基づき、その自由に制限が加えられることのあることは、右条項自体の明示するところである。

4) のみならず、憲法の他の条項をあわせ考察すると、憲法は、全体として、福祉国家的理想のもとに、社会経済の均衡のとれた調和的発展を企図しており、その見地から、すべての国民にいわゆる生存権を保障し、その一環として、国民の勤労権を保障する等、経済的劣位に立つ者に対する適切な保護政策を要請していることは明らかである。

5) おもうに、右条項に基づく個人の経済活動に対する法的規制は、個人の自由な経済活動からもたらされる諸々の弊害が社会公共の安全と秩序の維持の見地から看過することができないような場合に、消極的に、かような弊害を除去ないし緩和するために必要かつ合理的な規制である限りにおいてのみ許されるべきである。

■解説

【難易度】難しい。奇をてらった問題のようだが、他の問題と同様普通に肢の正誤判断をすれば事足りる。

1) 正しい。薬局距離制限事件(最大判昭和50年4月30日)である。前掲芦部219頁、佐藤299頁。

2) 正しい。小売市場距離制限事件(最大判昭和47年11月22日)である。前掲芦部219頁、佐藤302頁。

3) 正しい。小売市場距離制限事件(最大判昭和47年11月22日)。

4) 正しい。小売市場距離制限事件(最大判昭和47年11月22日)。

5) 誤り。4)と5)の記述が矛盾している。4)では積極目的規制の必要性が説かれる一方、5)では消極目的規制のみが許されると説かれている。小売市場距離制限事件判決は、「おもうに、右条項に基づく個人の経済活動に対する法的規制は、個人の自由な経済活動からもたらされる諸々の弊害が社会公共の安全と秩序の維持の見地から看過することができないような場合に、消極的に、かような弊害を除去ないし緩和するために必要かつ合理的な規制である限りにおいて許される」ばかりでなく、「憲法は、全体として、福祉国家的理想のもとに、社会経済の均衡のとれた調和的発展を企図しており」、「経済的劣位に立つ者に対する適切な保護政策を要請している」としている(目的二分論)。前掲芦部217頁、佐藤302頁。

■選挙権(2014−5)【判例問題】

投票価値の平等に関する次の記述のうち、判例に照らし、妥当なものはどれか。

1) 議員定数配分規定は、その性質上不可分の一体をなすものと解すべきであり、憲法に違反する不平等を生ぜしめている部分のみならず、全体として違憲の瑕疵を帯びるものと解すべきである。

2) 投票価値の不平等が、国会の合理的裁量の範囲を超えると判断される場合には、選挙は違憲・違法となるが、不均衡の是正のために国会に認められる合理的是正期間を経過していなければ、事情判決の法理により選挙を有効とすることも許される。

3) 衆議院議員選挙については、的確に民意を反映する要請が強く働くので、議員1人当たりの人口が平等に保たれることが重視されるべきであり、国会がそれ以外の要素を考慮することは許されない。

4) 参議院議員選挙区選挙は、参議院に第二院としての独自性を発揮させることを期待して、参議院議員に都道府県代表としての地位を付与したものであるから、かかる仕組みのもとでは投票価値の平等の要求は譲歩・後退を免れない。

5) 地方公共団体の議会の議員の定数配分については、地方自治の本旨にもとづき各地方公共団体が地方の実情に応じ条例で定めることができるので、人口比例が基本的な基準として適用されるわけではない。

■解説

【難易度】難しい。

1) 正しい。最大判昭和51年4月14日である。前掲芦部141頁、佐藤406−407頁。

2) 誤り。投票価値の不平等が、@国会の合理的裁量の範囲を超え、選挙が「憲法の選挙権の平等の要求」に反する状態にあり、かつA合理的期間内において不均衡が是正されなかった場合、「議員定数配分規定は」、「憲法の選挙権の平等の要求に違反し、違憲と断ぜられるべき」である。しかしBそこから直ちに選挙の無効を導くのではなく、事情判決の法理により選挙を有効とするというのが判例の立場である(最大判昭和51年4月14日)。

3) 誤り。国会は、このような「議員1人当たりの人口の平等」以外の要素、例えば「市町村その他の行政区画、面積の大小、人口密度、住民構成、交通事情、地理的状況等諸般の要素」をも議員定数配分の決定にあたり考慮し得るというのが判例である(最大判昭和51年4月14日)。

4) 誤り。「参議院は衆議院とともに国権の最高機関として適切に民意を国政に反映する責務を負っていることは明らかであり、参議院議員の選挙であること自体から、直ちに投票価値の平等の要請が後退してよいと解すべき理由は見いだし難い」(最大判平成24年10月17日)というのが判例である。なお参議院選挙についての先例である最大判昭和58年4月27日も参照(平成24年判例は、基本的な判断枠組みとして昭和58年判例を「変更する必要は認められない」とする)。なお前掲芦部143頁。

5) 誤り。地方公共団体議会議員選挙についても、投票価値の平等は憲法上の要請であり、これを受けた公職選挙法は、「地方公共団体の議会の議員の定数配分につき、人口比例を最も重要かつ基本的な基準とし、各選挙人の投票価値が平等であるべきことを強く要求している」というのが判例である(最判昭和59年5月14日)。