■2009年行政書士試験・法令科目多肢選択式第3問

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■行政裁量(2009−43)【理論問題】

行政裁量に関する次の文章の空欄(ア)−(エ)に当てはまる語句を、枠内の選択肢(1−20)から選びなさい。

法律による行政の原理の下においても、法律が行政活動の内容を完全に規律しつくすことはできない。従って、法律が行政機関に自由な判断の余地を認めている場合があるが、これを裁量という。
例えば、国家公務員法82条1項3号は、職員に「国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合」、「懲戒処分として、免職、停職、減給又は戒告の処分をすることができる」と規定しているが、例えば、公務員が争議行為を行い、同号にいう「国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合」という(ア)に当たると判断される場合、処分の(イ)について裁量が認められるとするならば、当該公務員について免職処分を選択するか、あるいは停職その他の処分を選択するかについては、懲戒権者の判断に委ねられることになる。しかしながら、その場合にあっても、当該非行が極めて軽微なものにとどまるにもかかわらず、免職処分を選択した場合は、(ウ)に違反し、裁量権の濫用・踰越となる。
また、土地収用法20条3号は、土地収用を行うことのできる事業の認定にあたっては、当該事業が「土地の適正且つ合理的な利用に寄与するもの」でなければならないとしている。この場合、(ア)についての裁量が問題となるが、判例は、その場合の裁量判断について、「本来最も重視すべき諸要素、諸価値を不当、安易に軽視し、その結果当然尽くすべき考慮を尽くさず、また本来考慮に容れるべきでない事項を考慮に容れもしくは本来過大に評価すべきでない事項を過重に評価し」、これらのことにより判断が左右された場合には、裁量権の濫用・踰越にあたるとして、違法となるとしている。これは処分における(エ)について、司法審査を及ぼしたものといえる。

1) 訴訟要件 2) 目的 3) 信義則 4) 相当の期間の経過 5) 効果 6) 補充性要件 7) 理由の提示 8)判断過程 9) 過失 10) 行政便宜主義 11) 時の裁量 12) 手続規定 13) 紛争の成熟性 14) 違法性阻却事由 15) 保護義務 16) 要件 17) 行政規則 18) 比例原則 19) 手段 20) 行政の内部問題

■解説

【難易度】やや難しい。括弧の前後の日本語を考え穴埋すれば、ある程度は正解できる問題ではあるが、裁量論のやや難しいテーマを含む問題であるため、やや難とした。

行政裁量に関する問題であるが、この点は従前、要件裁量(説)、効果裁量(説)という点から論じられてきた。
要件裁量は、「行政行為の根拠となる要件の充足について行政庁が最終認定権をもつ場合」ここに裁量行為を見出す説であり、効果裁量は、「行政行為をするかしないか、するとしてどの処分をするか」という点に裁量の所在を認める説とされる(塩野宏『行政法T』第5版増補〔2009年、有斐閣〕126頁以下)。

最高裁は、効果裁量説を中心にしつつ、要件に裁量を認める判決も出しているが、この要件裁量説、効果裁量説の対立は、佐々木惣一、美濃部達吉らの時代の学説であり、これがそのまま現在維持できるわけではない。現在では、要件裁量と効果裁量と択一的に割り切るのではなく、裁量が働く段階を個別具体的(前掲塩野125頁のA−E参照)に、司法審査との関係もふまえ議論を進めていく立場が主流といえようか。

@ 国公法82条1項3号の「非行」という(ア要件)に該当する場合、処分の(イ効果)について裁量があるとするならば、1処分の有無、2処分するとしてどの処分をするかにつき裁量が認められることになる(参照、最判昭和52年12月20日)。効果裁量といっても、単純に割り切れるものではなく、2段階で裁量が働く場面があるということになる(前掲塩野125頁に言う「行為の選択」参照)。なお、裁量行為に対する司法的統制として、(ウ比例原則)や平等原則等をあげることができる(前掲塩野133−134頁)。

A 問題文後半に出てくる判例は、おそらく日光太郎杉事件(東京高判昭和48年7月13日)であろう。この事件は、裁量判断の方法ないし(エ判断過程)についてコントロールを及ぼした、手続的コントロールの事案と言えよう(前掲塩野134頁以下)。