■2010年行政書士試験・法令科目多肢選択式第3問

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■裁量統制(2010−43)【判例問題】

次の文章は、ある最高裁判所判決の一節である。空欄(ア)−(エ)に当てはまる語句を、枠内の選択肢(1−20)から選びなさい。

原子炉施設の安全性に関する判断の適否が争われる原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理、判断は、原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の専門技術的な(ア)及び判断を基にしてされた被告行政庁の判断に(イ)があるか否かという観点から行われるべきであって、現在の科学技術水準に照らし、右(ア)において用いられた具体的(ウ)に(イ)があり、あるいは当該原子炉施設が右の具体的(ウ)に適合するとした原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の(ア)及び(エ)に看過し難い過誤、欠落があり、被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、被告行政庁の右判断に(イ)があるものとして、右判断に基づく原子炉設置許可処分は違法と解すべきである。

原子炉設置許可処分についての右取消訴訟においては、右処分が前記のような性質を有することにかんがみると、被告行政庁がした右判断に(イ)があることの主張、立証責任は、本来、原告が負うべきものと解されるが、当該原子炉施設の安全審査に関する資料をすべて被告行政庁の側が保持していることなどの点を考慮すると、被告行政庁の側において、まず、その依拠した前記の具体的(ウ)並びに(ア)及び(エ)等、被告行政庁の判断に(イ)のないことを相当の根拠、資料に基づき主張、立証する必要があり、被告行政庁が右主張、立証を尽くさない場合には、被告行政庁がした右判断に(イ)があることが事実上推認されるものというべきである。
(最一小判平成4年10月29日民集46巻7号1174頁以下)

1) 妥当性 2) 要綱 3) 重大な事実の誤認 4) 予見可能性 5) 合理性 6) 審査基準 7) 答申 8) 不合理な点 9) 重大かつ明白な瑕疵 10) 判断枠組み 11) 省令 12) 事業計画 13) 勧告  14) 判断の過程 15) 政令 16) 根拠事実 17) 調査審議 18) 裁量の余地 19) 法令違背 20) 知見

■解説

【難易度】難しい。

伊方原発訴訟(最判平成4年10月29日)からの出題である。問題文、判決文自体が難しくかなり分かりずらいかもしれない。

この事件は色々な論点を含んでいるが、判決文ではまず@裁量統制の方法、手続的裁量統制を問題としている。ここでは、大雑把に言うと「裁判所が行政行為の内容的当否を自らの判断で決定する」(原子炉設置許可処分の当否。実体判断の当否)のではなく、裁判所は、実体判断の前提である「行政庁の判断形成過程」の当否を審査することで、行政庁の裁量行使を統制していく、という点が問題となっている(参照、原田尚彦『行政法』第3次改訂版〔2001年、学陽書房〕84−85頁)。

以上を前提にすると以下の部分はある程度は埋められるだろうか。

原子炉施設の安全性に関する判断の適否が争われる原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理、判断は、原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の専門技術的な(ア調査審議)及び判断を基にしてされた被告行政庁の判断に(イ不合理な点)があるか否かという観点から行われるべきであって、現在の科学技術水準に照らし、右(ア調査審議)において用いられた具体的(ウ審査基準)に(イ不合理な点)があり、あるいは当該原子炉施設が右の具体的(ウ審査基準)に適合するとした原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の(ア調査審議)及び(エ判断過程)に看過し難い過誤、欠落があり、被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、被告行政庁の右判断に(イ不合理な点)があるものとして、右判断に基づく原子炉設置許可処分は違法と解すべきである。

判決文では、次にA立証責任に関して述べられている。

原子炉設置許可処分についての右取消訴訟においては、右処分が前記のような性質を有することにかんがみると、被告行政庁がした右判断に(イ不合理な点)があることの主張、立証責任は、本来、原告が負うべきものと解されるが、当該原子炉施設の安全審査に関する資料をすべて被告行政庁の側が保持していることなどの点を考慮すると、被告行政庁の側において、まず、その依拠した前記の具体的(ウ審査基準)並びに(ア調査審議)及び(エ判断過程)等、被告行政庁の判断に(イ不合理な点)のないことを相当の根拠、資料に基づき主張、立証する必要があり、被告行政庁が右主張、立証を尽くさない場合には、被告行政庁がした右判断に(イ不合理な点)があることが事実上推認されるものというべきである。

立証責任については、民事訴訟法では法律要件分類説が通説であるが、行政事件訴訟法では定説がない(塩野宏『行政法U』第6版〔2019年、有斐閣〕170頁以下参照)。この点につきこの判例は、立証責任を原則原告(国民)としつつ、原告の主張立証の軽減をはかった(前傾塩野175頁参照)、と解されている。