■2010年行政書士試験・民法第4問(物権)

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■抵当権の効力(2010−30)【判例知識、理論問題】

A銀行はBに3000万円を融資し、その貸金債権を担保するために、B所有の山林(樹木の生育する山の土地。本件樹木については立木法による登記等の対抗要件を具備していない)に抵当権の設定を受け、その旨の登記を備えたところ、Bは通常の利用の範囲を超えて山林の伐採を行った。この場合に、以下のア)−オ)の記述のうち、次の【考え方】に適合するものをすべて挙げた場合に、妥当なものの組合せはどれか。なお、対抗要件や即時取得については判例の見解に立つことを前提とする。

【考え方】:分離物が第三者に売却されても、抵当不動産と場所的一体性を保っている限り、抵当権の公示の衣に包まれているので、抵当権を第三者に対抗できるが、搬出されてしまうと、抵当権の効力自体は分離物に及ぶが、第三者に対する対抗力は喪失する。

ア) 抵当山林上に伐採木材がある段階で木材がBから第三者に売却された場合には、A銀行は第三者への木材の引渡しよりも先に抵当権の登記を備えているので、第三者の搬出行為の禁止を求めることができる。

イ) 抵当山林上に伐採木材がある段階で木材がBから第三者に売却され、占有改定による引渡しがなされたとしても、第三者のために即時取得は成立しない。

ウ) Bと取引関係にない第三者によって伐採木材が抵当山林から不当に別の場所に搬出された場合に、A銀行は第三者に対して元の場所へ戻すように請求できる。

エ) Bによって伐採木材が抵当山林から別の場所に搬出された後に、第三者がBから木材を買い引渡しを受けた場合において、当該木材が抵当山林から搬出されたものであることを第三者が知っているときは、当該第三者は木材の取得をA銀行に主張できない。

オ) 第三者がA銀行に対する個人的な嫌がらせ目的で、Bをして抵当山林から伐採木材を別の場所に搬出させた後に、Bから木材を買い引渡しを受けた場合において、A銀行は、適切な維持管理をBに期待できないなどの特別の事情のない限り、第三者に対して自己への引渡しを求めることができない。

1) ア)、イ)、ウ)、エ)
2) ア)、イ)、ウ)、オ)
3) ア)、イ)、エ)
4) ア)、ウ)、エ)
5) イ)、ウ)、オ)

■解説

【難易度】難しい。正直解説を書きにくい問題である。本問の解説については後の修正を留保した上でのものという点、お断りしておきたい。

ア) 適合する。伐採木材は、第三者に売却されてもそれが「抵当山林上」にある限り公示の衣に包まれるので、銀行は第三者に対抗し、搬出行為を阻止できる。内田貴『民法V』初版(1996年、東大出版会)399頁。

イ) 適合する。伐採木材が占有改定により引渡された場合、伐採木材は依然Bの元にあるが、外観上占有の変更を生じさせない−公示の衣に包まれたまま−占有改定による即時取得は認められないとするのが判例である(大判大正5年5月16日)。淡路他『民法U』第2版(2001年、有斐閣)93頁。

ウ) 適合する。第三者は当該木材について無権利者であり、178条の「第三者」に該当しないので、Aとの間で対抗関係を生じない。そして、Aは抵当権の効力としての物権的請求権に基づき、木材を元の場所に戻すよう請求し得る。

エ) 適合しない。Aと第三者(単純悪意者)は対抗関係に立つが、「考え方」によれば、伐採木材が別の場所にある以上、Aの抵当権は対抗力を失う結果、Aは第三者に対抗できない。内田貴『民法V』初版(1996年、東大出版会)399頁参照。

オ) 適合する。第三者は、「嫌がらせ目的」で木材を購入しているので背信的悪意者であり、178条の「第三者」に該当しないので、Aとの間で対抗関係を生じない。そしてAは抵当権に基づく物権的請求権として「元の場所に木材を戻す」ことを請求できるが、「自己」への引渡は原則としてできないというのが判例である(最判平成17年3月10日)。

よって正解は2)になろう。