■2010年行政書士試験・行政法総論第3問

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■行政上の法律関係(2010−10)【判例問題】

行政上の法関係に対する民事法の適用についての次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、正しいものはどれか。

1) 自作農創設特別措置法に基づく農地買収処分は、大量の事務処理の便宜上、登記簿の記載に沿って買収計画を立てることが是認され、またこの場合、民法の対抗要件の規定が適用されるので、仮に当該買収処分の対象となる土地の登記簿上の農地所有者が真実の所有者でないとしても、真実の所有者は当該処分を受忍しなければならない。

2) 公営住宅の使用関係については、公営住宅法およびこれに基づく条例が特別法として民法および借家法(事件当時)に優先して適用されるが、公営住宅法および条例に特別の定めがない限り、原則として一般法である民法および借家法の適用があり、その契約関係を規律するについては、信頼関係の法理の適用がある。

3) 普通地方公共団体が当該地方公共団体の関連団体と契約を結ぶ場合、当該地方公共団体を代表するのは長であり、また相手方である団体の代表が当該地方公共団体の長であるとしても、そのような契約の締結は、いわば行政内部における機関相互間の行為と同視すべきものであるから、民法が定める双方代理の禁止の規定の適用または類推適用はない。

4) 租税滞納処分における国と相手方との関係は、一般統治権に基づく権力関係であるから、民法の対抗要件の規定は適用されず、したがって、仮に滞納処分の対象となる土地の登記簿上の所有者が真の所有者ではないことを、所轄税務署においてたまたま把握していたとしても、滞納処分を行うに何ら妨げとなるものではない。

5) 農地買収処分によって、国が対象となった土地の所有権を取得したのち、第三者が相続により当該土地を取得したとして移転登記を済ませたとしても、買収処分による所有権取得について民法の対抗要件の規定は適用されないから、当該第三者は、当該土地所有権の取得を国に対して対抗することはできない。

■解説

【難易度】易しい。有名な判例からの出題であり、正解しておきたい。

1) 誤り。民法177条は、通常の民事上の土地売買に適用されるものであり、これと異なる性格を有する自作農創設特別措置法の農地買収処分(公法関係)については、同条は適用されないというのが判例である(最大判昭和28年2月18日)。塩野宏『行政法T』第5版増補(2009年、有斐閣)30頁、櫻井敬子−橋本博之『行政法』第5版(2016年、弘文堂)28頁。

2) 正しい。最判昭和59年12月13日である。この判決によれば、公営住宅の利用関係は、私人間の家屋賃貸借契約と異なるところはなく、公営住宅法上の明渡請求事由が存在しても、信頼関係が破壊されていないという特段事情がある場合、明渡請求ができないということになる。芝池義一『行政法総論講義』第4版(2001年、有斐閣)33頁、櫻井他30頁。

3) 誤り。最判平成16年7月13日。普通地方公共団体の長が、当該普通地方公共団体を代表し締結する契約については、108条が類推適用される。

4) 誤り。最判昭和31年4月24日である。租税滞納処分における差押は、民事上の強制執行と類似性を有し、滞納処分における国の地位を民事上の強制執行における差押債権者の地位に対応させて考えると、滞納処分における差押には177条の適用がある、ということになる。前掲芝池30頁。

5) 誤り。最判昭和39年11月19日。この場合は177条の適用があるとするのが判例である。前掲芝池31頁。なお5)と1)の判例が矛盾するようにも思われるが、大雑把に言うと1)は「誰から農地買収をすべきか」が問題になっているのに対し、5)は「農地買収をした」が問題となっており、事案が異なるので結論も異なるのは当然とも言えよう。