■2010年行政書士試験・法令記述式第3問

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■民法・相殺(2010−48)【判例問題】

以下の【相談】に対して、〔 〕の中に適切な文章を40字程度で記述して補い、最高裁判所の判例を踏まえた【回答】を完成させなさい。

【相談】
私は、X氏から200万円を借りていますが、先日自宅でその返済に関してX氏と話し合いをしているうちに口論になり、激昂したX氏が投げた灰皿が、居間にあったシャンデリア(時価150万円相当)に当たり、シャンデリアが全損してしまいました。
X氏はこの件については謝罪し、きちんと弁償するとはいっていますが、貸したお金についてはいますぐにでも現金で返してくれないと困るといっています。私としては、損害賠償額を差し引いて50万円のみ払えばよいと思っているのですが、このようなことはできるでしょうか。

【回答】
民法509条は「債務が不法行為によって生じたときは、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。」としています。その趣旨は、判例によれば〔 〕ことにあるとされています。ですから今回の場合のように、不法行為の被害者であるあなた自身が自ら不法行為にもとづく損害賠償債権を自働債権として、不法行為による損害賠償債権以外の債権を受動債権として相殺をすることは、禁止されていません。

■解説

【難易度】やや難。

不法行為者を甲、その被害者を乙とする。
民法509条は、「甲が乙に対して有する債権を『自働債権』として、乙が甲に対する損害賠償請求権を『受働債権』として相殺することを禁止する」。よって【回答】にあるように、この反対解釈として、乙が「損害賠償請求権」を『自働債権』として、不法行為による損害賠償債権以外の債権を『受働債権』として相殺をする事は可能である。

何故以上のように解されるか。それは509条の趣旨が、@損害賠償の支払による被害者の現実的な救済、A不法行為の誘発回避(例:Aは貸金債権をBに有しているが、Bが返済しない。そこでAがBに加害し、Bが有することになったAへの損害賠償債権を受働債権として、前記貸金債権を相殺し満足を得るという事を回避する)、の2点にあるとされている(最判昭和42年11月30日)。

解答は以下のようになろう。

「その趣旨は、判例によれば〔損害賠償を支払わせ、不法行為の被害者を現実的に救済することと、不法行為の誘発回避という〕(43文字)ことにあるとされています」

なお双方の債権が、両方とも相手方の不法行為によるというものである場合の相殺は如何。この場合は相殺は許されないと解されている(最判昭和54年9月7日)。本問については、野村−栗田−池田−永田『民法V』第2版補訂(1999年、有斐閣)247−248頁参照。